徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:住野よる著、『よるのばけもの』(双葉文庫)

2019年05月14日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『よるのばけもの』(2016、文庫は2019年4月発行)は中3の男の子を主人公とした青春ファンタジー小説。「あっちー」と呼ばれる「僕」はある時から深夜に化物に変身するようになり、睡眠を必要とせず、朝方人間の姿に戻るまで夜の街を徘徊したり、海を見に行ったりします。ある夜学校のロッカーに忘れてしまった宿題を取りに学校に行くと、教室にはクラスメートの女の子「矢野さん」がいて、あろうことか正体がばれてしまいます。それ以来毎夜学校に行って彼女と会い、校内を探検したり、たわいもないことを話したりしながら少しずつクラスでいじめられている彼女のことを知るようになります。そして昼間、クラスの仲間意識や向いている方向からずれないように細心の注意を払いながら行動を決めている自分にだんだん疑問を持ちだし、最初は矢野さんがクラスメートの女子の大事にしていた本を突然取り上げて雨の降る中窓から外へ投げ捨てたこと対する制裁として始まったクラスのいじめを正当化することが難しくなってきます。いままでは当然の報いと考えて積極的にいじめはしないものの無視をする態度を貫いてきたのに、それすら心苦しくなり、自分の矢野さんに対する昼と夜の態度の違いに、どっちが本当の自分なのか悩みます。主人公の繊細な心の動きを丁寧に描写した小説ですが、まあ、若い子向けですね。

化物になった原因とかは全く究明されていません。不思議は不思議のままで良しとされています。

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