徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:石田リンネ著、『女王オフィーリアよ、王弟の死の謎を解け』(富士見L文庫)

2022年06月18日 | 書評ー小説:作者ア行

『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』に続く第二弾『女王オフィーリアよ、王弟の死の謎を解け』が発売されたので、早速買って読みました。

前回は、オフィーリア女王が殺され、死の間際、薄れゆく意識の中で 「私は、私を殺した犯人を知りたい」 と強く願ったため、王冠の持ち主にだけ与えられる“古の約束”により、妖精王リアによって10日間だけ生き返り、その間に犯人探ししてついに「呪い」を発動させることに成功し、彼女の代わりに彼女を殺そうとした犯人たちが妖精王リアに殺されてしまいましたが、今回はオフィーリアの弟ジョンが何者かによってブロンズ像で後頭部を殴られて殺されてしまいます。
ところがジョンは二日後の葬儀の際に息を吹き返すのです。
そこでオフィーリア女王は妖精王リアにとっての「王冠の所有者」の定義について考えるのですが、もしかしたら「王冠を最後に直接触れた人」なのかもしれない、そしてジョンがそれに当てはまることに思い至ります。

ジョンは頭を強く打ったせいで死ぬ間際に何を強く願ったのか覚えておらず、オフィーリアも妖精王の話を出すわけにはいかないので深く追求はしないのですが、ジョンは妖精王リアによって生き返ったという前提のもとに犯人探しとジョンが願いそうなことを探り、できる限りその願いを10日以内に叶えて例の「呪い」が発動するように動きます。

前回、野心家で浮気者のろくでなしとして登場していたオフィーリアの夫デイヴィットは、今回は離婚されて王配としての地位まで失ってしまわないように懸命にオフィーリアに協力し、犯人探しやその他諸々を手伝います。しかし、ややもすると不謹慎に状況を楽しむそぶりを見せるので、いくら有能でもオフィーリアが彼にほだされることはなく、王の義務として子をつくるなら、そのための愛人を探そうと動き出したりして、「王弟の死の謎を解く」だけに始終しないところが面白いです。

しかし、今回の「呪い」の発動はいささか後味が悪いですね。
精霊王リアは王家を守護すると言われているとはいえ、実際には人外の感覚で面白がっているだけなので、祝福ではなく「呪い」をかけています。だから王冠所有者が生き残れても、全体的にいい結果にはならないのです。

オフィーリア女王とデイヴィットの仲の行方が気になりますが、精霊王リアの呪いが物語のコアのままならば、王家の人間は2人だけなので続編はなさそうですね。



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

茉莉花官吏伝

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 2~ 百年、玉霞を俟つ 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 3 月下賢人、堂に垂せず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 4 良禽、茘枝を択んで棲む』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 5 天花恢恢疎にして漏らさず』 (ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 6 水は方円の器を満たす 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 7 恋と嫉妬は虎よりも猛し 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 8 三司の奴は詩をうたう 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 9 虎穴に入らずんば同盟を得ず』(ビーズログ文庫) 

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 10 中原の鹿を逐わず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 十一 其の才、花と共に発くを争うことなかれ』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 十二 歳歳年年、志同じからず』(ビーズログ文庫)


十三歳の誕生日、皇后になりました。

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 2』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。3』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。4』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。5』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。6』(ビーズログ文庫)


おこぼれ姫と円卓の騎士

書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)



書評:石田リンネ著、『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』(富士見L文庫)