徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:横溝正史著、『金田一耕助ファイル1 八つ墓村』(角川文庫)

2018年10月13日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

横溝正史の『八つ墓村』は数多くあるタイトルだけ知っている小説のひとつでしたが、文春の「東西ミステリーベスト100(2012)」の少なくともベスト10は制覇しようなどと思い立ち、そこに複数作品ランクインしている横溝正史の作品を読むことにし、最初の一作として『八つ墓村』を読んだ次第です。

まずは「八つ墓村」という物騒な名前の由来から始まります。戦国の頃、三千両の黄金を携えた八人の武者がこの村に落ちのびたが、欲に目の眩んだ村人たちは八人を惨殺。その後、不祥の怪異があい次ぎ、以来この村は“八つ墓村”と呼ばれるようになったという――。大正×年、落人襲撃の首謀者田治見庄左衛門の子孫、要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となりますが、この時要蔵の妾・鶴子とその息子・辰弥は神戸に逃げていたために難を逃れます。そして二十数年、太平洋戦争が終わって数年の頃、辰弥が田治見家の後継ぎとして八つ墓村に呼び戻され、それと同時に謎の連続殺人事件が再びこの村を襲います。動機が全く分からず、本当に次々に毒殺、時に絞殺されて行くので、かなり怖いです。

語り手は辰弥なので、探偵・金田一耕助は完全に脇役で、重要な役割を果たすものの、「探偵小説」的な色合いはかなり薄いです。それよりも辰弥の味わった恐怖、村人から憎しみを一心に浴び、謂れのない殺人の犯人に仕立て上げられ、追い詰められていく恐怖が前面に出ているので、ホラーですね。

だけど結末が意外にハッピーエンドなのが救いがあると言えます。