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徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ:ニーダーザクセン州議会選挙結果(2017年10月15日)

2017年10月16日 | 社会

10月15日日曜日はニーダーザクセン州の州議会選挙でした。連邦議会選挙後初の地方選挙ということで、中央政権の連立交渉に参考になる所見が得られるかどうかと注目されていました。

ニーダーザクセン州はVWの本拠地であり、大株主でもあるため、ディーゼル排ガス不正や事件州首相とVWの癒着の有無などで揺れていました。政権はドイツ社会民主党(SPD)と緑の党の連立でした。そういうタイミングで緑の党の議員の一人が党を去り、キリスト教民主同盟(CDU)に移籍したことで連立政権の過半数が崩れたために解散選挙となった次第です。「なにそれ?」と呆れるくらいのドタバタ劇ですが、そういう変なことがドイツでも起こり得るということです。

同日に行われたオーストリアの国民議会選挙と違って、ニーダーザクセン州議会選挙はすでに正式な結果が出ています。オーストリア国民議会選挙の正式結果は木曜日に出るそうですので、その後にこのブログでもそれについて書こうかと思いますが、まずはドイツ・ニーダーザクセン州の選挙結果です。

2013年の各政党の得票率は以下の通りです。

CDUが最大勢力であったにもかかわらず、政権与党は第二・第三会派のSPDと緑の党で形成されていました。連邦議会選挙で大躍進したドイツのための選択肢(AfD)は前回選挙ではまだ投票先として存在していませんでした。左翼政党(Linke)は5%の得票率を得られず、議会入りを果たせませんでした。

今回の選挙での各党の得票率は以下の通りです。

今年あった州議会選挙で負け続け、連邦議会選挙でも史上最低の得票率だったSPDがニーダーザクセン州では19年ぶりに最大勢力に返り咲きました。国レベルでSPDが下野する方針を取ったことがどれほど追い風になったのかどうかは不明ですが、ヴァーレン研究グループのアンケート結果では「州政治が投票先決定においてより重要」と回答した人が61%で、「連邦政治の方が重要」と回答した人(34%)を大きく上回っていました。

逆にCDUは史上最低の得票率となり、これから連邦レベルで連立交渉を始めようとしているメルケル首相はかなり厳しい立場に追い込まれています。もしかするとメルケル退場劇があるかもしれないと各メディアで報じられています。

緑の党は第三会派の地位は維持したとはいえ得票率の喪失の幅はかなり大きく、人事的な変更があるかもしれません。

AfDは州議会入りを果たしたものの、得票率は6.2%にとどまりました。そもそも西側の比較的経済状態の良いニーダーザクセン州ではAfDがそれほどお呼びではないということもあるかもしれませんが、連邦議会選挙後のAfD党首フラウケ・ペトリの突然の離党および新党「青の党」結成などで勢いがそがれた可能性もあります。

左翼政党は得票率は延ばしたもののやはり5%の壁を超えられず、今回も州議会入りは果たせませんでした。

前回比の各党の得票率の動きは以下の通りです。

結局得票率を延ばしたのはSPDとAfDだけですが、その伸びが有権者全体の中でどのくらいの意味を持つのか投票棄権者数と比較してみるとよく分かります。下のグラフで左端の紫色の縦棒が投票棄権者の割合(36.9%)を示しています。つまりSPDに投票した人たちよりも13.5%多いことになります。

今回の投票率は63.1%で、2013年の選挙の時の投票率59.4%よりは改善されていますが、「政治失望派が最大勢力」と言われています。投票しないイコール無関心ではないことは世論調査などで確認されています。

 

第18回ニーダーザクセン州議会の議席配分は以下の通りです。

 

SPDが勝ったとはいえ、これまで連立パートナーだった緑の党が大敗しているので、同じ連立では過半数に足りません。残された連立の可能性は「大きな連立(Große Koalition)」と呼ばれるCDUとの連立か、各党のトレードカラーを取って「信号機連立(Ampelkoalition)」と呼ばれる自由民主党を交えた3党連立となります。

また敗北したとはいえ第2勢力であるCDUがFDPと緑の党の「ジャマイカ連立(Jamaikakoalition)」と呼ばれる3党連立を形成することも理論的には可能です。

ただそこでネックとなるFDPが選挙前からSPDと緑の党と連立することを拒絶しています。このため政権に参加したい緑の党は「FDPが民主主義的責任を果たしていない」などと批判しています。FDPがこれからSPDと緑の党との連立交渉に応じるかどうかは不明ですが、確率的には低そうです。

結果的には連邦レベルではSPDの党の性格をうやむやにするという理由で「大きな連立」のための交渉には応じないとした党方針を州レベルでは覆して「大きな連立」の州政権が誕生する可能性もあります。

ヴァーレン研究グループのアンケート結果では「大きな連立」が可能な連立の中では一番支持されていますが、それでも「いいと思わない」という回答(43%)が「いいと思う」(40%)を上回っているところが難しい状況ですね。

 

選挙の争点として最も重要と見なされていたのは、学校・教育が44%で断トツのトップでした。次点が難民・統合で24%。

 

参照記事:

Bundestagswahl 2017, "Landtags­wahl 2017 in Niedersachsen: Ergebnis, Sitzverteilung, Koalitionen", 最終更新2017年10月16日 、15:20

ZDF heute, "Landtagswahl in Niedersachsen: Liveblog: Reaktionen und Analysen(ニーダーザクセン州議会選挙:ライブブログ、反応および分析)", 16. Oktober 2017

ZDF heute, "Nach der Niedersachsen-Wahl: Es wird eng für die Kanzlerin(ニーダーザクセン州選挙後、首相の立場が危うい)", 16. Oktober 2017

ZDF heute, "Niedersachsen nach der Wahl: Rot-Grün abgewählt - Appell an FDP(選挙後のニーダーザクセン州:赤緑連立は敗北。FDPへのアピール)", 16. Oktober 2017


ドイツ:2017年連邦議会選挙結果

ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

ドイツ:シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙(2017)

ドイツ:3州同時選挙。右翼政党「ドイツのための選択肢」大躍進


ドイツ統一記念日~シュタインマイヤー大統領のスピーチ~「歴史に対する責任が啓蒙的愛国精神」

2017年10月04日 | 社会

ドイツ統一記念式典におけるシュタインマイヤー独大統領のスピーチがその立場としては珍しく具体的な政治的内容に立ち入ったものであったと話題になっています。

私は特にドイツ人であるとはどういうことかを説明するくだりに感銘を受けました。ドイツの歴史認識を受け入れることがドイツ人であることに含まれているというのです。

「後の世代にとっては個人的な罪ではないにせよ、変わらぬ責任を意味する歴史に対する認識です。二つの世界大戦の教訓、ホロコーストの教訓、いかなる民族的思想や人種差別または反ユダヤ主義の拒絶、イスラエルの安全に対する責任、これらすべてがドイツ人であることに含まれているのです。」

また、この「歴史に対する責任に終止符が打たれることはないと彼は断言しています。

日本の歴史的責任をろくに認めないまま、終止符を勝手に打とうとしている安倍首相以下同じ穴の狢的政治家たちのスタンスとは真逆ですね。

また彼は「変わらない歴史に対する責任を共有することが啓蒙的愛国精神に含まれている」とも言っています。

日本の暗い過去をただ言及するだけで「反日」と揶揄するようなネトウヨ的脊髄反応とは真逆です。国の良い所だけではなく、深い影の部分も含めての愛国心こそ真の愛国心だと言うことでしょう。

 

シュタインマイヤー独大統領のスピーチ全文は大統領府のホームページから閲覧できます。ビデオはこちら

少し長いですが、全文日本語訳してみました。

ドイツ統一記念式典におけるシュタインマイヤー独大統領のスピーチ~マインツ、2017年10月3日

「昔を懐かしむ気持ちはない
昔の心配事を

ドイツよ、ドイツはまた一つになり
自分だけがまだ千々に乱れてる」

私たちは毎年のようにドイツ統一記念日を祝います。そしてそれを、このドイツの東と西が再び一つになった10月3日を祝うのは正しいことです。

それでも今年は少し意味合いが違っています。冒頭に引用したヴォルフ・ビアマンばかりでなく、他の多くの人が疑念や心配や不安な気持ちでわが国の内側の統一を見ています。これが今日という日の一側面です。今年はそれがはっきりと感じられます。

しかしながらまた別の側面もあるのです。それを私は今このホールに集まっている若い人たち、16州の生徒たちに見ています。あなたたちを特に心より歓迎いたします。

「ドイツ統一の日?」とあなたたちは疑問に思うかもしれません。「そもそもなんで年1回なのか?ドイツ統一は毎日のことではないか。」と。27年前から年365日ずっと。違う状況など全くの知ることがなかったでしょう。再統一されたドイツで生まれ育った非常に若く生き生きとした世代がすでにあるのです。

親愛なる青少年少女の皆さん、あなたたちにこの国の未来が託されているのです!そして私たち父母・祖父母の世代は、27年前に獲得されたもの、すなわち自由で平和なドイツをあなたたちに引き渡す義務があります。今日の気持ちが喜びであれ複雑な心境であれ失望あるいはまた希望であれ、どんな気持であるかにかかわらず、統一ドイツ、自由で民主的なドイツ、心配ではなく希望を持って未来を見ることができるドイツ、このようなドイツを私たちは子どもたちに渡す義務があるのです。

親愛なる青少年少女の皆さん、そうです、ドイツ統一は毎日のことです。それはすなわち、私たちは今日、日常的なものを祝うということです。でもそれは自明のことではないのです。統一後生まれで以前がどうだったか知り得ない人たちに助言します。それを体験した人たちに質問してください。

東欧から来た来賓の方々に質問してください。自由と民主主義を求める意思が東欧ブロックを揺るがせ、ベルリンの壁に最初のひびを入れたポーランドやハンガリー出身の人たちに今こそ質問してください。

この壁をさらに崩壊させた東ドイツの人たちに質問してください。彼らはその時憎しみや暴力等なしに、平和的な抵抗と大いなる勇気でそれを成し遂げたのです。

政治家たちに直接聞くのは非現実的なので、グーグルで西と東の、統一ドイツが平和なドイツであると私たちを信じてくれた政治家たちを検索してみてください。

そして特に今年は、ここラインラント・プファルツ州出身のドイツのヨーロッパ人であり、歴史的な機会を掴んで統一の偉業を政治的に成し遂げた政治家、3か月前に亡くなったヘルムート・コールについて調べてみてください。

これがあなたが生まれてきたドイツです。それは。ヨーロッパに戦争と荒廃をもたらした暴走したナショナリズムから冷戦中の分断された国家を経てヨーロッパの中心の民主的で強い国となるまでの長い道のりを歩んできたドイツです。

皆さん、私たちの道はヨーロッパの隣国との平和と友情の中の道であり続けなければなりません。そして二度とナショナリズムに戻る道に行かないように!

ドイツ統一は毎日のことです。けれど、それを私たちは毎日感じているでしょうか?日常生活の中で一体いつ私たちが8000万人の共同体の一部であることを自覚するでしょうか?

多くの人にとっては9日前の9月24日だったでしょう。自由で平等な選挙権が私たちを結びつけているのです。それを隣人と共に投票箱の前に並んでいる時に毎回感じるのです。9月24日

は前回およびその前の連邦議会選挙の時よりもずっと多くの人がこの誇らしい権利を行使しました。それ自体はいい知らせです。

それでもその日の夜に支配的だったのは統一の安心感ではなく、むしろ見逃すことのできない大小のひびが入った国を見る気持ちでした。

私は陰鬱な衰退シナリオなどにはなんの価値も見出しませんが、それでも、たとえ祭日であっても、何事もなかったかのように「チェックをして、はい次!」みたいな振る舞いはしてはいけないと思っています。特に選挙結果を政党や議員団又は連立交渉に丸投げしてはいけないのです。確かに彼らは今大きな責任を担っています。しかし、その選挙結果のメッセージは私たち全員に向けられたもので、私たちが、私たちドイツ人が答えを見つけなければならないのです。

それは次の質問から始まります。そもそもいったい誰が – 「私たちドイツ人」なのか。本日10月3日に私たちは確認します。確かにドイツ統一は政治的日常となりました。我が国を分断する大きな壁はなくなりました。しかし9月24日に明らかになったのは、別の、より見えにくい、有刺鉄線やデッドゾーンのない壁、

でも私たち共通の 「私たち」という感覚を阻害する壁があるということです。

 

私たちの生活の世界の間にある壁、都市と田舎、オンラインとオフライン、貧困と豊かさ、老いと若さなど、一方が他方のことをほとんど知り得ないような壁のことを私は言っています。

インターネットのエコー室を囲む壁-そこでは音がどんどん大きく派手になっていくのに、私たちがもう同じニュースを聞いたり、新聞を読んだり、放送を見たりすることがほとんどないために絶句するしかないのです。

また疎外感や失望あるいは怒りといった感情が一部の人たちの間で深く刻まれ、議論が不可能になるような壁もあります。こうした壁の背後で民主主義とその代弁者、いわゆる「エスタブリッシュメント」に対する深い不信感が焚きつけられています。その「エスタブリッシュメント」には自称反エスタブリッシュメント戦闘員以外の全ての人が含まれることもあります。

どうか誤解しないでください。背を向ける人が全て民主主義の敵だと言っているのではありません。しかし彼ら全員が民主主義に欠けているのです。だからこそ10月3日に9月24日のことを黙っていてはいけないのです。

もちろんそれは議論を呼びます。意見の相違は私たちの一部です。私たちは多様な国です。重要なのは、意見の相違から敵対関係にならないことです。違いが相容れないものとならないように。

それが政治的な現実でないことはこの時代の政治の課題であり、そのために議会ほど重要な場所はありません。今年の10月3日は過渡期にあたります。旧連邦議会は開会されなくなり、新しい議会はまだありません。しかし確かなのは、9日前に選ばれたドイツ連邦議会が違うものになるということです。より鋭い対立、また社会にある不満も反映されることになります。議論はより荒れたものとなり、政治文化が変わることでしょう。

しかしながら、今日こちらにいらっしゃっている議員の皆様、あなた方は今民主主義に大きく貢献することができます。民主主義者が、民主主義を誹謗する人たちよりも良い解決策を持っていることを示すことができます。怒りが最終的に責任を取ることの代用にならないことを証明することができます。タブー破りが次のトークショーの出番をもたらすことはあっても、問題が一つも解決されないということを証明することができます。私は確信しています。正論が憤りのパロールよりも遠くへ響き渡ることをあなた方は証明するでしょう。

憤りの代わりに正論が必要なのは、まさにこの2年間にこれ以上ないくらいに我が国を揺るがせた問題、難民と移民の問題においてもです。これほど意見が相容れずに対立している問題はありません。家族内でも、夜の食卓でも。一方にとっては定言的「人道的命法」 であることが、他方からはいわゆる「自国民に対する裏切り と非難されます。この問題が両極の間の倫理的戦闘領域である限り、世界の現実とわが国に可能なことを融合させるという本来の課題にあたることができません。

人の危機に私たちは決して無関心であってはいけません。わが国の基本法は、忘れてはならないドイツの正当かつ歴史的な理由から政治的弾圧からの保護を保証しています。しかしながら政治的弾圧を受けている人たちを将来もきちんと保護できるようにするには、誰が政治的に弾圧され、誰が貧困から逃げて来たのかという区別を取り戻す必要があります。

私たちは二つの意味で正直にならないといけません。まず、両方の避難理由の裏には人々の運命が隠されているにせよ、同じでものではなく、同様の無制限の請求権を正当化するものではないということです。次に私たちがどのような移民をどのくらい希望し、場合によっては必要としているかという問題においても正直になる必要があります。私見では、それには移民を単に受け付けないということではなく、亡命権やヨーロッパの努力の範囲を超えて法に則ったドイツへの入国を定義し、移民を私たちの基準で制御しコントロールすることが含まれると思います。この二つの問題で私たちが正直になった場合のみ、議論の二極分化を克服できるでしょう。政治がこの課題にあたる時、我が国にできてしまった相容れない敵対の壁を崩すチャンスがあると私は確信しています。

避難と移民に関する議論はドイツを搔き乱しました。しかしそれは搔き乱された世界の結果であり投影でもあるのです。社会の変動や多くの国際的な危機・紛争を見て、私は多くの市民からここ数年次の言葉を聞きました。「もう世界が理解できない」– 正直に申しますと、私もこの言葉がよく分かります。

今年、私の新たな大統領の立場ではまた違う言葉も耳にしました。「もう自分の国が理解できない。」この言葉はもっと悩ましいことです。

G20サミット反対運動の後にハンブルクの城砦区域の店主たちが「全く普通の通行人が野次馬や強盗に変身するのを見てる以外なかった」と口々に言うのを聞きました。

ビッターフェルトの女性は、「本当は選挙演説を聞きに来たのに、同じ市民が、お隣さんが憎しみのこもった顔をしていて、本当に怖かったんですよ」と話してくださいました。

シュトゥットガルトでは自動車産業で働くトルコ労働移民の息子が「俺は何年もずっとドイツを代表する産業で働いていることを誇りに思っていた。でも今はみんなが、俺も一緒になって騙していたのかと聞くんだ。」と語ってました。

そして東ドイツで一度ならず聞いた言葉は、「うちの会社は倒産、村は空っぽ。あんたらがヨーロッパのことやるのはいいけど、でも誰が俺らの心配してくれるんだい?」ということでした。

そんなことは祭日には聞きたくないものですが、もし誰かが「自分の国で疎外感を感じる」と言ったら、誰も「まあね、時代が変わったのさ」などと答えてはいけないと思います。もし誰かが「もう自分の国が理解できない。」と言ったら、それはドイツでは経済成長率や頭頚のいい数字以上にやるべき課題があるということです。

なぜなら、理解し理解されることは誰もが望むことで、誰もが自分の人生を自信をもって送るために必要とすることだからです。理解し理解されること。それが故郷です。

故郷に憧れを抱く人は過去の人ではないと私は確信しています。むしろその反対です。世界が目まぐるしく変わるほど、故郷への憧憬は大きくなるものです。自分が良く知るところ、見当がつけられるところ、自分の判断に自信を持てるところ。それが変化の流れの中で多くの人にとって難しくなってきているのです。

こうした故郷への憧憬を私たちは、「我々対その他」的感情あるいはまた血と土地等のバカげたことや存在したことのないような美しきドイツの過去を呼び起こすことによって故郷を定義する人たちに独占させてはいけません。故郷、安全、ペースダウン、結束そして承認への憧憬。これらものをナショナリストたちに独占させておいてはいけません。

故郷は過去にではなく未来に向かっていると私は思います。故郷とは私たちが社会として創造する場所のことです。故郷とは「私たち」が意味を得る場所です。私たちの生活世界の壁を超えて私たちを結びつける場所。そのような場所を民主的な公共体は必要としており、またドイツもそれを必要としています。

ドイツ国内を巡回するする過程で私は素晴らしい体験をしました。どこが故郷なのかということに関しては語ることがたくさんあります。ゼンケ・ヴォルトマンの新しい映画「夏祭り」はルール地方のふるさと映画で、その中で生粋のボッフム人が「なあ、ストーリーは道端のあちこちに落ちてるぜ。そいつらを拾うだけでいいんだ。」と言うところがあります。

私はそれが始まりだと思います。お互いに無視し合うのではなく、私たちの物語を読み上げましょう。9月24日の後に誰もが自分の社会的立ち位置から呆れて首を左右に振り、お互いに他方について話し、あるいはまた無視しているところで、私たちは再びお互いに相手の話を聞くことを学ぶべきです。私たちがどこから来て、どこに行こうとして、そして何が重要なのか。

東ドイツの人がDDR(ドイツ民主主義共和国)の故郷が統一後にどのように根本的に変わったか、 新しい自由が憧憬の対象であるばかりでなく、理不尽な要求でもあったこと、変革の中で維持したいと思っていた多くのものが失われたことなどを語る時、それらも我が国の歴史の一部なのです。統一の達成は巨大事業でした。もちろん1990年以降間違ったこともされました。それについて沈黙する理由はありません。東ドイツの人たちは再統一後に西側の私たちの世代が聞いたこともないような断絶を体験しました。にもかかわらずこの東ドイツの歴史は、西側のそれのようには「私たち」の欠かせない一部とはなっていません。それを今正す時だと私は思います。

勇敢な弁護士で作家であるセイラン・アテシュが最近私に言いました。「イスタンブールでボスポラス海峡を見ると、胸が躍ります。そしてベルリンに戻ってくる途中であのテレビ塔を見ると、やはり胸が躍ります。」彼女の物語にはシンプルでかつ重要なことが含まれています。それは故郷が複数でもあるということです。一人の人間が一つ以上の故郷を持ち、また新しい故郷を見つけることもできるのです。そのことをすでに何百万人の人がドイツで証明しました。この人たちみんなが「私たち」の一部となったのです。移民の全世代が今日誇らしげに「ドイツは私の故郷だ」と言います。そのことが私たちを豊かにしたのです。

それは私たちが直面している大きな統合の課題に希望を与えることでしょう。私たちはこうも言います。「故郷は開かれているけれど、無制限ではない」と。

来たばかりの人にとってそれはまず私たちの言葉・ドイツ語を習うことを意味します。それがなければ、理解し理解されることもありません。しかしそれはそれ以上のことも意味しています。ドイツに故郷を求める人は、ドイツ基本法の秩序と共通の信念に貫かれた共同体の中に入ることになります。それは法治国家、憲法順守、男女平等という信念です。これらは全て法文であるばかりでなく、ドイツにおける共存の成功に不可欠のものです。

また、あらゆる議論やあらゆる違いがあっても、このドイツの民主主義において交渉不可であることが一つあります。それは我が国の歴史に対する認識です。後の世代にとっては個人的な罪ではないにせよ、変わらぬ責任を意味する歴史に対する認識です。二つの世界大戦の教訓、ホロコーストの教訓、いかなる民族的思想や人種差別または反ユダヤ主義の拒絶、イスラエルの安全に対する責任、これらすべてがドイツ人であることに含まれているのです。

また、ドイツ人になることには、我が国の歴史を認めて受容することも含まれます。このことを私は東欧やアフリカあるいは中東のイスラム圏から我が国に来た人たちにも言います。ドイツに故郷を求める人は、「それはあなたたちの歴史で、私のではない」と言い逃れすることはできないのです。

しかしながら、もしそれが我が国の民主主義において反論の余地のないものであり続けないのなら、どうしてこうした認識を移民に要求することができるでしょうか?我が国の歴史に対する責任には終止符が打たれることがありません。ましてやドイツ連邦議会の議員たちにとってはそれこそあり得ないことであると私は付け加えたいと思います(訳注:一部 AfD 党員の歴史責任否定やホロコースト否定論に対する批判・釘刺しです)。

この国に属しているということは、その大きな長所もまたその類稀な歴史的責任も共有するということを意味しています。私にとってはこれこそがドイツの啓蒙的愛国精神に含まれていると思っています。もしドイツで私たちを表彰するものがあるなら、それは長く続く、難しく、痛みの伴う我が国の歴史の再評価であり、たくさんの明るい側面と同様にドイツの一部である深い影に特別に目を向けることです。私たちはそのことを誇りに思っていいと思います。

連邦議会選挙の後にあまりにも頻繁に「多くの人がドイツに、民主主義とその執行機関に失望している」というようなことを読みました。連邦共和国に失望したという人は、かつてそれに何かを期待したということなのです。

私は固く信じています。この国には多くのことを期待できます。いくつかの危機を脱した国。未解決の問題をなきが如く扱うのではなく、未来に向けた政治で。こうしてドイツ人の大多数が望むドイツを、つまり民主的な国、

世界に開かれたヨーロッパの国、結束する国を作っていくことができるのです。この国はそうであり続けるでしょう!

 

もし知ったかぶりや不平屋あるいは永遠に憤然としている人たちや、全てのことや全ての人に対する怒りを日々抱えている人たち、そういう人たちが我が国を形成するのでなければ、この国の理念は変わらないでしょう。

行動を起こし、我が国における成功と公共心のために日々努力している何百万人もの人たちがいることに私は希望を持っています。

義務で話に病気になった隣人の様子を見たり、老人ホームで朗読したり、難民の人たちを到着の際に助けたりする、そういう人たちです。またシングルマザーに午後の自由をプレゼントする人たち、数えきれない協会で我が国の文化的豊かさを提供し、村での生活を生きる価値のあるものにしている人たち、仕事の後に町内会で図書館やプールの世話をする人たち、死にゆく人たちの人生の最後の時間を共に過ごす人たち。自分だけではなく、他の人たちの世話をするすべての人たち。

皆さん、こういう人たちこそがあらゆる知ったかぶり屋が言っていることとは違って我が国を結束させているのです。彼らが毎日新たに統一に貢献しているのです。


ドイツ統一27周年

ドイツ:2017年連邦議会選挙結果


ドイツ統一27周年

2017年10月03日 | 社会

10月3日はドイツ民主主義共和国(旧東独、DDR)がドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland、BRD)に正式に加盟したことを記念する国祭日です。ベルリンの壁が崩壊したのは1989年11月9日。それからわずか1年足らずの間に東西両国の統一交渉および戦勝国であるアメリカ・フランス・イギリス・ソ連とのいわゆる4+2条約の交渉がなされ、1990年10月3日に正式に統一が果たされました。

毎年10月3日のドイツ統一記念日(Tag der deutschen Einheit)には各地で様々な催し物が開催されますが、公式祝典はその時の連邦参議院の議長についている州で開催されます。今年はラインラント・プファルツ州で、祝典は州首都マインツで行われます。

今年はドイツ統一27周年。東西ドイツが分断されていたのは1961年8月13日のベルリンの壁建設から1989年11月9日の壁崩壊までの28年間でしたので、来年は分断の年月と統一の年月が同じ長さとなります。

果たしてこの27年間で分断の歴史は克服されたのでしょうか?

毎年この時期になると東西ドイツが融合発展したかどうかを問う世論調査が行われます。以下は forsa という世論調査会社の2017年9月13日~9月21日までの調査結果をドイツの統計サイト Statista.de でグラフ化されたものです。

 

全体では「東西ドイツは一つの国民になった」と思う人が50%いますが、東西や年代でその感じ方は大分違うようです。西側では52%の人が「一つの国民になった」と考えている一方で、東側ではそれが43%に過ぎません。

年代別に見ると14歳から44歳まではいずれも60%以上であるのに対して、45歳~59歳では46%、60歳以上では40%となっています。

 

あくまでも主観的な感覚を反映したものに過ぎませんが、世代間の感情の違いは個人的な体験あるいはトラウマに由来していると私は考えています。45歳というと、27年前は18歳で、旧東独のシステムの中で教育を受け、その後の進学なり就職なりの予定が全て白紙になったという体験をしている人が多いでしょうし、当時18歳以上で、すでに職を持っていた人たちの中には統一後に突然失業した人が相当数いたはずです。また中には西側で就職活動をして、「東出身」であることで差別を受けたり、期限付きの仕事しか見つからずに、家族を東に残したままの出稼ぎ状態が続いている人もかなりいるでしょう。この「出稼ぎ状態」は金曜日の昼過ぎからの西から東への高速道路の渋滞プラス日曜日の夕方からの東から西への渋滞にも現れています。私の元同僚にもこれを10数年続けてついにギブアップした人がいます。西側で安定した職に就けないまま心を病んでリタイヤしてしまった人も私の知り合いにはいます。このような個人的な苦々しい体験がドイツ統一を肯定的に見られない、つまり「一つの国民になった」と感じたくない原因になっているのではないでしょうか。

連帯税(Solidalitätszuschlag)が導入され、新5州と呼ばれる旧東独のインフラ整備のために投入されて来ましたが、東西の経済及び構造格差はいまだになくなったとは言い難いです。東から西への人口流出のトレンドはここ2・3年で止まったようですが、失業率や貧困危険率などの統計を見ると東側5州はやはり目立って悪い状況にあると言えます。もちろん西側にも産業構造の変化に取り残されて落ちぶれてしまったブレーメンやルール工業地帯の一部など失業率も貧困危険率も高い所があります。だから連帯税をそういう弱体化した西側の地域の復興に充ててもいいのではないかという議論も出ているくらいですが、今のところ議論だけで終わっているようです。


ドイツ:最新貧困統計(2016年度)

 


ドイツ:2017年連邦議会選挙結果

2017年09月25日 | 社会

9月24日投開票だったドイツ連邦議会選挙の結果が出ました。

最初の予想が出た時点で、右翼ポピュリズム政党である AfD(ドイツのための選択肢)の躍進(得票率13%)が明確になっていたため、「右傾化」「不満分子によるアンチ・メルケル投票」「二大国民政党、歴史的敗北」などなど大騒ぎでした。

投票率は76.2%で、前回(2013年)よりも4.7ポイント改善されました。投票率には東西で差があり、西側が78%(+5.6)、東側が74%(+6.4)となっていました。

各政党の得票率

CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟) 33%

SPD(ドイツ社会民主党) 20.5%

Linke(左翼政党) 9.2%

Grüne(緑の党) 8.9%

FDP(自由民主党) 10.7%ー>連邦議会復活

AfD(ドイツのための選択肢) 12.6%ー>初連邦議会入り

Andere(その他) 5.0%

 

2013年度の得票率との比較

CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟) ー8.6

SPD(ドイツ社会民主党) -5.2

Linke(左翼政党) +0.6

Grüne(緑の党) +0.5

FDP(自由民主党) +6.0

AfD(ドイツのための選択肢) +7.9

Andere(その他) -1.2

 

以上の結果を見てわかるように、これまでの政権与党であった CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)および SPD(ドイツ社会民主党)が大きく票を失ったため、政府に対する不満が爆発したと見られています。三政党全てにとって史上最悪の結果となりました。それは下の1949年以降の連邦議会選挙結果の推移を表すグラフを見ても一目瞭然です。

これまでポピュラーだった「国民政党」から小さな政党へ大きく票が流れましたが、中でも目を見張る躍進を遂げたのが今回初めて国政政党として連邦議会入りすることになった AfD(7.9ポイント上昇)および連邦議会カムバックを果たした FDP(6ポイント上昇)です。

左翼政党の9.2%は史上最高の結果とは言え、二桁の数字を目標に掲げていたので、目標未達に終わりました。緑の党も期待ほどの結果が出せなかった点では同じです。

議席配分

比例票の配分を議席に反映するための超過議席や調整議席のために今期は総数709議席の史上最大の議会となります。過半数は355議席。

過半数を得るための連立には計算上二つしか選択肢がありません。

可能な連立

しかしながら、マルチン・シュルツ SPD 党首が最初の選挙結果予想が出てすぐに連立与党となることを断固拒否したため、実質的にはいわゆる「ジャマイカ連立(CDU/CSU、FDP、緑の党の連立)」しか選択肢が残されていません。三勢力連立は国政レベルでは初めての試みとなります。

SPD が連立与党となることを拒否したのは、政権参加によって党本来のプロフィールが失われたと考えられていることから、野党で党の再建を図るという意図と同時に極右傾向の強い AfD が野党第一党となることを阻止する目的もあるとのことです。

 

選挙の争点

毎日新聞の9月22日の記事では「好景気が続くドイツでは経済・社会保障政策について国政政党間で大きな対立点がなく、15年以降135万人が入国した難民問題が主要争点だ」などと報道されていましたが、そんなことはありません。好景気の恩恵に預かれない人たちはたくさんいますし、将来の年金の心配も切実なもので、各党のそれに対する政策プログラムもかなり大きな相違点があります。また「15年以降135万人が入国した難民問題」は問題を限定し過ぎており、実際のドイツ国民の問題意識とかなりずれがあります。「135万人の難民」はあくまでも問題のほんの一部に過ぎず、高度経済成長期から継続的に増加している移民および難民認定を受ける可能性がゼロの犯罪化しやすい北アフリカ系不法滞在者、およびイスラム過激派によるテロなどの脅威を含めた漠然とした「外国人問題」が多く人々(44%)の心配の種となっているのです。

連邦議会選挙における最重要問題:


難民/外国人 44%
年金 24%
社会的公正 16%
教育/学校 13%
犯罪/治安 9%
労働 8%

 

 

AfD(ドイツのための選択肢)

さて、一躍第三会派となった AfD(ドイツのための選択肢)ですが、一体どんな人たちが投票したのでしょうか?
それを表すのが次のグラフです。今回 AfD に投票した人が2013年にはどこに投票していたかを示しています。

2013年連邦議会選挙の時は AfD は得票率5%を超えられなかったので、議会入りを果たせませんでしたが、今回 AfD に投票した人のうちの24%は前回も同党に投票したコアな支持者のようです。CDU/CSU から21%、SPD から10%、左翼政党から6%票が AfD に流れたようですが、35%と一番大きかったのはやはり前回投票しなかった人(または他の小政党に投票した人)たちを動員できたことでしょう。

特に東ドイツでの得票率の伸びはすさまじく、なんと16.6ポイント増で、CDUに次ぐ第二の勢力となりました。西ドイツでは6.6ポイント増加しただけでした。6.6ポイント増加もすごいのですけど、それが小さく見えてしまうのだから不思議です。

AfD の東ドイツでの人気は、Tagesspiegel の記事にあるように「30年の東西統一政策の崩壊宣言(Bankrotterklärung für 30 Jahre Wiedervereinigungspolitik)」と解釈できます。難民問題はきっかけに過ぎず、そもそもの東ドイツの構造的な経済問題が底にあり、好景気の恩恵を受けられずに取り残されている不満が「保護され、支援される難民」を妬み、敵視する土壌を形成しているといえます。

小さな政党の候補者が小選挙区で勝利して議会入りするのは稀なことなのですが、AfD はザクセン州の選挙区3か所(ゲルリッツ、バウツェン1区、シュヴァイツ・オステルゲビルゲ)で勝利を収めました。比例票もザクセン州では30%以上が AfD に入っており、最大勢力を形成しています。その意味では AfD は「東独(ザクセン)の声」と見ることもできます。かねてより難民・イスラム教徒排斥運動「ペギーダ PEGIDA = Patriotische Europäer gegen die Islamisierung des Abendlandes(ヨーロッパのイスラム化に反対する愛国的なヨーロッパ人)」が盛んなザクセン州とその首都ドレスデンにおける極右傾向が懸念されてきましたが、今回の選挙でそれが改めて確認されたといえます。

しかしながら、AfD の評判は非常に悪いです。FDP の連邦議会入りを歓迎しない人が16%しかいないのに対して、AfD の連邦議会入りを歓迎しないとする人は69%もいます。

歓迎されない理由は同党内の極右勢力にあります。ホロコースト否定論者や歴史修正主義者的な発言で問題視され、「扇動罪」で操作されている党員や州議会議員もおり、追放処分となった議員も出ています。

連邦議会では94議席を獲得した AfD ですが、4年後に何人が扇動罪などでリタイヤしているかある意味見ものです。

AfD 投票者の社会学的分析(数字は全てZDFの記事より)

AfD 投票者を年齢別に見ると、働き盛りの30~59歳の年齢層が多いことが分かります。必ずしも若い人たちに希望を与えている政党ではないということですね。

年齢別 CDU/CSU SPD 左翼政党 緑の党 FDP AfD
<30 25% 19% 10% 11% 13% 11%
30-44 30% 17% 9% 11% 11% 16%
45-59 31% 21% 9% 11% 10% 15%
>60 41% 25% 9% 5% 10% 10%

職業別ではいわゆるブルーカラーが多くなっています。

職業別 CDU/CSU SPD 左翼政党 緑の党 FDP AfD
労働者 29% 24% 10% 5% 7% 19%
会社員 33% 22% 9% 10% 11% 11%
公務員 36% 22% 6% 13% 12% 10%
自営業 34% 12% 8% 12% 17% 12%

学歴別では低学歴の投票者が目立っています。それに対して大卒の AfD 投票者はかなり少ないですね。

学歴別 CDU/CSU SPD 左翼政党 緑の党 FDP AfD
基幹学校終了 36% 29% 6% 4% 7% 14%
中等教育終了 34% 20% 9% 6% 9% 17%
大学入学資格 31% 18% 10% 11% 13% 11%
大卒 30% 16% 11% 18% 14% 7%

総合すると働き盛りの低学歴ブルーカラーたちが自らの不満を表明するために AfD に一票を投じた、ということのようです。

 

世論調査研究所 Dimap の調査によると AfD 投票者たちの投票理由は、テロ対策が69%、犯罪対策が61%、難民流入が60%でした。

彼らの投票決断は、政党に納得しているからという人が31%、他政党に失望したからという人が60%で、AfD 投票者が必ずしも AfD 支持者ではないことが窺えます。

他政党の投票者においては数字が逆転しており、正当に納得して投票したという人が63%、他政党に失望したという人が30%でした。

 

参照記事:

ZDF heute, 25.09.2017, "Nach der Bundestagswahl: Live: Zahlen, Analysen, Reaktionen(連邦議会選挙後:ライブ:数字・分析・反応)"

Spiegel Online, 25.09.2017, "Bundestagswahl 2017: Alle Ergebnisse(2017年連邦議会選挙:全結果)"

ZDF heute, 25.09.2017, "AfD stärkste Partei in Sachsen: Suche nach Gründen(AfD はザクセン州で最大政党。その理由とは)"

Statista, 25.09.2017, "Bundestagswahl 2017: Warum die AfD drittstärkste Kraft wurde(2017年連邦議会選挙:なぜ AfD が第3会派となったか)"

Tagesspiegel, 25.09.2017, ”Die AfD boomt im Osten(AfD は東でブームに)


ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

ドイツ:シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙(2017)

ドイツ:3州同時選挙。右翼政党「ドイツのための選択肢」大躍進

ドイツ:世論調査(2017年9月21日)~どの連立が可能か?

ドイツ:世論調査(2017年9月1日)~2030年からの内燃エンジン禁止反対多数

ドイツ:メルケル&シュルツTV対決

ドイツ連邦議会選挙直前世論調査(2017年9月15日)~CDUは支持率低下


ドイツ:世論調査(2017年9月21日)~どの連立が可能か?

2017年09月22日 | 社会

ドイツ連邦議会選挙があと2日に迫りました。昨日発表された最新世論調査ポリートバロメーターでの結果は、微妙な変化とはいえ右翼ポピュリズム政党AfD(ドイツのための選択肢)が伸びています。

もし今が連邦議会選挙ならどの政党に投票しますか?:

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 36%(変化なし)
SPD(ドイツ社会民主党) 21.5% (-1.5)
Linke(左翼政党) 8.5%(-0.5)
Grüne(緑の党) 8%(変化なし)
FDP (自由民主党) 10%(+1)
AfD(ドイツのための選択肢) 11%(+1) 
その他 5% (+1)

この投影値には統計的に不可避の誤差範囲があることを考慮しなければなりませんが、ひとまずこの票配分で行くと、議会で過半数以上を得られる連立は「大きな連立(CDU/CSUとSPD)と「ジャマイカ連立(CDU/CSU、緑の党、FDP)」のみとなります。CDU/CSUとFDPの連立となると過半数には足りず、少数政権となります。

この結果はあくまでも9月20・21日に電話インタビューを受けた1725人の回答を元に統計処理したものなので、日曜日の結果予想とはなりませんが。

「投票先は確定していますか?」という質問には63%の人が「はい」と回答し、先週より2%増えています。それでもいまだに37%の人は迷いがあるようです。

 

「どちらを首相に望みますか?」という質問には56%の人が安定的にメルケルと答えています。

これは、何か特別なことが起こらない限りひっくり返ることはないでしょう。

 

参照記事:

ZDF Politbarometer, 21.09.2017, "Unklare Mehrheitsverhältnisse – klare Kanzlerpräferenz(議席配分不明。望む首相ははっきり)"


ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

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ドイツ:世論調査(2017年5月19日)~メルケルがシュルツを大きくリード

ドイツ:世論調査(2017年9月1日)~2030年からの内燃エンジン禁止反対多数

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ドイツ連邦議会選挙直前世論調査(2017年9月15日)~CDUは支持率低下

 


ドイツ連邦議会選挙直前世論調査(2017年9月15日)~CDUは支持率低下

2017年09月16日 | 社会

いよいよ来週の日曜日(9月24日)はドイツ連邦議会選挙です。メルケル首相が次期も首相を務めることになるのはもうほぼ決定してますが、どの政党と連立して政権を作るかは未定です。どの世論調査でも投票先の配分にそれほど差は出ませんが、それでも選挙結果を予想するのが困難なのは、投票先を決めてない人の割合が大きいこととAfD(「ドイツのための選択肢」という右翼ポピュリズム政党)の支持者が世論調査で正直にカミングアウトしない傾向が強いことが挙げられる、ということをZDFの報道番組で聞きました。どの番組だったかちょっと定かではないのですが。

いろいろ問題がある世論調査ですが、それでもここに最新のZDFのポリートバロメーターを紹介します。解説は私見も交えているため、必ずしも元記事の説明と一致しないことを予めご了承ください。元記事はあくまでも「参照記事」です。

連邦議会選挙・投票先

以前の連邦議会選挙でもそうだったように、直前でCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)は支持率を失いつつあります。その他の政党は多少支持率を伸ばしていますが、それでも大多数(83%)の有権者はメルケルおよび彼女の政党CDUが勝つと予想しており、対抗馬のシュルツ(SPD)が勝つと予想しているのはたったの5%にすぎません。その他の政党も5%。「分からない」と答えた人は7%でした。

少し質問の仕方が変わると回答も違ってきます。「誰が連邦議会選挙に勝つか今日既に明らかですか」という質問に「はい」と答えたのは57%、「いいえ」と答えたのは41%、「分からない」は2%でした。


誰を首相に望みますか?

全体:

メルケル 56%
シュルツ 32%

CDU/CSU支持者:

メルケル 96%
シュルツ 4%

SPD支持者:

メルケル 18%
シュルツ 74%

まだメルケルの方が優勢です。また党内支持率もメルケルの方が圧倒的に高いですね。

 

誰を首相に望みますか?(2017年1月27日以降の動向):


もし次の日曜日が連邦議会選挙ならどの政党に投票しますか?:

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 36%(-2)
SPD(ドイツ社会民主党) 23% (+1)
Linke(左翼政党) 9%(変化なし)
Grüne(緑の党) 8%(変化なし)
FDP (自由民主党) 10%(+1)
AfD(ドイツのための選択肢) 10%(+1) 
その他 4% (-1)

変化があったとはいえ、殆ど誤差の範囲ではないかと思える程度ですね。もちろんこれが選挙結果を正確に予想するものでないことは次の質問の回答に現れています。

 

投票先は確定していますか?


はい 61%
いいえ 39%

つまり4割近くの人が寸前で考えを変える可能性があるわけです。私事で恐縮ですが、私のダンナもまだどうしようか迷っています。テレビの街頭インタビューでも「投票所に行ってその場で決める」と答えてた人もいました。

理由は様々ですが、最も大きな原因としては、政党間の差異があまり明確ではないことが挙げられます。特に「国民政党」と呼ばれるCDU/CSUとSPDは過去4年間連立与党として活動してきたために合意している部分が多く、中でもSPDは社会主義的なカラーが薄くなって、本来の支持層である労働者層や労働組合から不信の目を向けられつつあるようです。

 

ドイツの選挙でも直接候補を選ぶ小選挙区の票と政党を選ぶ比例代表の票があり、この2票でそれぞれ違う政党に投票する場合があります。

投票先として考えられるのは?

一つの政党だけ 29%
複数政党 71%

どちらの票も同じ政党に投票するのは実は少数派なのですね。。。これは、どの政党も単独では過半数を獲得できず、他政党と連立せざるを得ないことに起因します。俗に「戦略的投票(strategisches Wählen)」と呼ばれる投票行動で、どの連立政権を希望するかによって投票先を決めるのですが、第三の地位を争う政党が増えたことから、昔よりも複雑になっています。以前でしたら、例えばSPDと緑の党の連立が良ければ、小選挙区票はSPDの候補に入れ、比例票は緑の党に入れたりしたのですが、政党数が増えたことによって、どこにどの票を入れれば望む連立政権に繋がるのか予測しづらくなっています。

 

連立モデルの評価:

CDU/CSUとSPD(大きな連立):いい 40%、悪い 42%
CDU/CSUとFDP:いい 39%、悪い 40%
CDU/CSUと緑の党:いい 30%、悪い 44%

CDU/CSU、緑の党、FDP(ジャマイカ連立):いい 25%、悪い 52%
SPD、緑の党、FDP(信号機連立):いい 22%、悪い 53%
SPD、左翼政党、緑の党(左派連立):いい 24%、悪い 63%

どの連立モデルも過半数を超える支持は得られていません。その中でも一番人気があるのが現在の「大きな連立」です。

 

投票に行かない:

投票先が分からない人の中にはもちろんそもそも投票に行かないという人も含まれていますが、データを見る限り「無投票」に決めてる人は3%しかいないようです。「(投票に行くかどうか)分からない」が21%

これを見る限りでは、高い投票率が予想されます。

 

1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先回答推移:

 

 政権満足度(スケールは+5から-5まで):+1.2

 

政治家評価

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):

  1. アンゲラ・メルケル(首相)、1.9(↓)
  2. ヴォルフガング・ショイブレ(財相)、1.7(→)
  3. ジーグマー・ガブリエル(新外相)、1.5(→)
  4. マルチン・シュルツ(SPD党首・前欧州議会議長)、1.1(→)
  5. チェム・エツデミール(緑の党党首)、1.1(↑)
  6. トーマス・ドメジエール(内相)、1.1(↑)
  7. クリスティアン・リンドナー(FDP党首)、0.9(→)
  8. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・バイエルン州首相)、0.4(↓)
  9. ウルズラ・フォン・デア・ライエン(防衛相)、0.3(↓)
  10. サラ・ヴァーゲンクネヒト(左翼政党党首)、-0.1(↓)

 

AfDと極右思想

ドイツで今勢力を持つ右翼ポピュリズム政党と言えばAfD(=Alternative für Deutschland、ドイツのための選択肢)ですが、かなりダークな極右勢力と強いつながりを持つ人も相当数党内に存在しているらしく、たびたびナチス的な問題発言をする議員がメディアの見出しを賑わせています。

極右思想はAfD党内に浸透していると思いますか?

かなり広く 45%
広く 34%
それほどでもない 14%
全然そんなことはない 2%
分からない 5%

回答はまあ予想通りの結果です。8割近く(78%)が極右思想がAfD党内に「(かなり)広く浸透している」と見做しています。「それほどでもない」と答えたのは14%、「全然そんなことはない」は2%。単なる推測ですが、「それほどでもない」、「全然そんなことない」と答えた人の中にかなりのAfD支持者が居るのではないかと思います。尤も中には極右だと分かっていてAfDを支持している人もいるでしょうけど。

 

トルコ関係

ドイツとトルコの関係がいつになく悪化しています。トルコ系とはいえドイツ国籍を持つジャーナリストや作家、はたまた人権保護活動家までが既に何人もトルコで逮捕・勾留されています。逮捕されて数日で釈放された人もいますが、釈放後も出国が許されていない場合がほとんどです。1年以上前のクーデター未遂以来エルドアン大統領支配下のトルコは反政府勢力を抹消しようと躍起になっており、どんどんおかしな方向へ向かってます。メルケル首相を始めとするドイツ政治家によるトルコの逮捕・拘留に対する批判は正当としか思えないのですが、トルコ側は全然そう受け止めてはおらず、「ドイツでは人権が無視され、トルコ系住民が差別されている」等と逆ギレ(?)し、ドイツ向けの旅行警告まで出しました。

多少の差別がドイツにあるのは否めませんが、一応基本的人権も報道の自由も保障されており、ジャーナリストや作家などがトルコのように逮捕されることなどあり得ません。アムネスティのような人権擁護団体に属する活動家まで「武装化テロ組織を支援している」などという言いがかりで逮捕するなど、ドイツでは全く考えられないことです。そうしたことが起こっているのはトルコ。つまり人権侵害をしているのは明らかにトルコの方なのに、「ドイツではトルコ人に対する差別がある」と旅行警告を外務省から正式に出してしまうなんて、本当に理解不能です。ちなみにドイツ外務省はトルコ旅行に関して「注意」を促してはいますが、旅行警告を出すには至っていません。

こうしたことを背景に、「トルコにおける動向は、ドイツにおけるトルコ人とドイツ人の共存を難しくしているか」という質問に対して、65%が「はい(とても)」と答えています。「いいえ(それほどでもない)」と答えたのは31%。

今後どう発展していくのか、確かに不安ではあります。

 

参照記事:

ZDF Politbarometer, 15.09.2017, "Union verliert weiter an Zustimmung(キリスト教民主同盟は更に支持率を失う)"

nTV, 30.08.2017, "Parteien, Bündnisse, Strategien: Wie wählen - und vor allem wen?(政党・連立・戦略:どのように選ぶか。特に誰を?)"

ARD Tagesschau, 18.07.2017, "Festnahmen in der Türkei: "Verhaftung absolut ungerechtfertigt"(トルコでの逮捕:「逮捕は全く根拠がない」)"

Focus Online, 28.07.2017, "Wuppertaler Türke im Heimaturlaub verhaftet – wegen eines Facebook-Posts(ヴッパータール在住のトルコ人が故郷での休暇中に逮捕。理由はフェースブックの投稿)"

Welt Online, 01.09.2017, "Verhaftungen in der Türkei: Merkel kündigt entschiedene Reaktion Deutschlands an(トルコでの逮捕:メルケルはドイツのきっぱりとした反応を予告)"


ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

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ドイツ:3州同時選挙。右翼政党「ドイツのための選択肢」大躍進

ドイツ:世論調査(2017年4月7日)~首相候補。メルケル再びシュルツをリード

ドイツ:世論調査(2017年5月19日)~メルケルがシュルツを大きくリード

ドイツ:世論調査(2017年9月1日)~2030年からの内燃エンジン禁止反対多数

ドイツ:メルケル&シュルツTV対決


ドイツ:メルケル&シュルツTV対決

2017年09月04日 | 社会

昨夜はドイツ首相候補のTV対決を見ていました。ビデオはこちら

個人的には「引き分け」だったように思うのですが、TV対決終了後に行われた世論調査研究所 Infratest Dimap の調査によると、メルケルの方が優位だったようです。どちらが説得力があったかという質問に対して、メルケルと答えたのは55%、シュルツと答えたのは35%でした。まだ投票先を決めていない人たちの中では48%がメルケルの方に説得力があると答え、シュルツと答えたのは36%でした。

ツァイトオンラインの記事でも指摘されていますが、司会が外交や難民政策の議題にかなり時間を割いたので、現職のメルケル首相が12年の経験を踏まえてしっかりとバランスよく政策をプレゼンできたのに対して、シュルツは大まかな路線でメルケルに賛同するしかなく、唯一トルコについてだけ独自路線を打ち出すことができただけなので、不利な印象を残したようです。

 

個々のポイントでの評価は以下の通りです。

攻撃的: メルケル 5%、シュルツ 87%

弁論: メルケル 44%、シュルツ 38%

能力: メルケル 64%、シュルツ 20%

信頼性: メルケル 49%、シュルツ 29%

好感度: メルケル 49%、シュルツ 31%

市民視点: メルケル 24%、シュルツ 55%

 

シュルツは、CDU議員や連立パートナーとなると目されているFDPが70歳からの年金給付開始を提唱していることに言及し、メルケルを窮地に追いやることができました。メルケルは「私が首相でいる間は70歳からの年金給付開始はあり得ない」と強調しましたが、すぐさま、彼女が以前同じように「自動車高速道路料金はあり得ない」と言っていたにもかかわらず、結局EUの承認を得て実現したことを指摘されて、少したじたじとなっていました。

他のメルケルのウイークポイントは、ディーゼルスキャンダルに関してのディーゼル車購入者に対する補償問題と外交問題ではトルコと難民問題ですが、シュルツはこれらの点を逃さずにうまく切り込んでいました。

ただ残念ながら、ここぞという時にシュルツはどもったり、口ごもったりして、自信がないような印象を与えてしまっていました。それに対してメルケルは窮地に立たされても冷静に対応し、安定した弁論を展開していたので、やはりどちらかと言えばメルケルに軍配が上がったと言えるでしょう。

参照記事:

Statista, 04.09.2017, "Merkel entscheidet TV-Duell für sich"

Zeit Online, 04.09.2017, "Merkel gegen Schulz: er stockt, sie verteidigt sich"


ドイツ:世論調査(2017年9月1日)~2030年からの内燃エンジン禁止反対多数


ドイツ:世論調査(2017年9月1日)~2030年からの内燃エンジン禁止反対多数

2017年09月03日 | 社会

連邦議会選挙を3週間後に控えたドイツですが、世論調査による投票先政党のシェアにほとんど動きはなく、安定のメルケル首相に対して、攻撃のしどころを考えあぐねているシュルツという図式の膠着状態が続いているような印象を受けます。

では、以下に最新の世論調査ポリートバロメーターの結果をご紹介します。まずは内燃エンジンから。

内燃エンジン

化石燃料による内燃エンジン搭載車の新規認可を2030年から停止すると提案しているのは緑の党です。ドイツでは自動車産業の発言力が大きいこともあり、長らく「クリーンなディーゼル」という夢を追い、電気モーターの分野で他国に後れを取っています。昨年からフォルクスワーゲンや今年になってダイムラーもディーゼルの排気量計測ソフトウエアを操作するなどでスキャンダルになっており、ディーゼルに対する風向きが強まってきています。このトレンドを背景に緑の党は電気自動車の推進と、内燃エンジン車の新規認可を2030年で停止することを決議したのですが、バーデン・ヴュルッテンベルク州首相を務めるヴィンフリート・クレッチュマン(緑の党)はこれを公式に批判し、党内に波紋を広げています。

さて、これに関する世論は?

2030年からの内燃エンジン車新規認可停止?

賛成 31%
反対 59%
分からない 10%

支持政党別賛成者割合:

CDU/CSU 23%
SPD 30%
左翼政党 47%
緑の党 63%
FDP 22%
AfD 16%

以上のように、緑の党支持者を除外すると反対が圧倒的多数を占めています。

さて次は連邦議会選挙についてです。

選挙戦

選挙戦に興味ありますか?

はい(とても) 44% (2013年、37%)
いいえ(全く) 55% (2013年、62%)

前回(2013年)の連邦議会選挙前に比べると選挙戦に対して興味を示す人が多くなっていると言えますが、依然として「興味なし」の人が55%もいます。

現在選挙戦は退屈だと思いますか?

はい 56%
いいえ 34%
分からない 10%

選挙戦を退屈ではないと思っている人の割合はたったの34%で、興味を示している人の割合よりもさらに少なくなっています。「分からない」という10%の人たちは退屈かどうかを判断できるほど選挙戦を見ていない・知らないということなのでしょう。全然投票をしない人たちなのかもしれません。

投票先

次の日曜日が連邦議会選挙なら、どの政党に投票しますか?

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 39%(変化なし)
SPD(ドイツ社会民主党) 22% (変化なし)
Linke(左翼政党) 9%(変化なし)
Grüne(緑の党) 8%(変化なし)
FDP (自由民主党) 10%(+1)
AfD(ドイツのための選択肢) 8%(-1) 
その他 4% (変化なし)

CDU/CSU、SPDに次ぐ第三勢力の座を4政党がほぼ横並びで争っている状況が続いていますが、一時期右翼ポピュリズムの台頭として騒がれたAfDの支持率は下火になってきています。トランプ大統領やイギリスのEU離脱など、ポピュリズムの行き着く先を見せつけられて、熱が冷め始めているのかも知れません。

1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先回答推移:

 

政権満足度(スケールは+5から-5まで):+1.3


投票意思なし:

投票しない 6%
分からない 22%


誰が連邦選挙で勝つか今日既に明らかですか?

はい 45%
いいえ 53%
分からない 2%

まだ勝負が決まってないと見る人が53%に上るとは少し意外です。世論調査の投票先政党のシェアが膠着状態にあるだけに、どこらへんに不確定要素があるのか興味深い所ですね。

今日から見ると、誰が連邦議会選挙に勝利すると思いますか?

CDU/CSU 78%
SPD 6%
その他 4%
分からない 12%

投票先は確定していますか?

はい 55%
いいえ 45%

 

投票先が確定していない人が45%というのは確かに不確定要素ですね。この人たちが選挙当日に実際にどこに投票するかによって結果が左右されることになります。

首相候補

どちらが首相として好ましいですか?

メルケル 57%
シュルツ 28%

なんか気の毒なくらい差がついてしまっていますね。

メルケル対シュルツ 評価

信用できる 

メルケル 38%
シュルツ 11%
どちらとも変わらない 44%

好感度

メルケル 42%
シュルツ 19%
どちらも変わらない 34%

専門知識

メルケル 49%
シュルツ 7%
どちらも変わらない 33%

シュルツの方が専門知識があると考えている人がたったの7%なんて、なんか気の毒になるくらいですが、実際にヨーロッパ最古参の現職首相の落ち着きを見せるメルケルと比べると、シュルツはなぜか頭が悪そうに見えてしまうという印象を持っていたのは私だけではなかったということでしょうか。

社会的公正の実現

メルケル 22%
シュルツ 33%
どちらも変わらない 36%

国を不安定な時代の中で導いていく

メルケル 60%
シュルツ 8%
どちらも変わらない 24%

「社会的公正」は、シュルツが唯一メルケルをリードするポイントです。そこはやはり社会民主党の候補者ならではと言えます。この点に関して、メルケルは往々にして冷淡に映ります。

しかしながら、世界各地の紛争、危機、トルコとの緊張関係、アメリカとNATOの行方など不透明な時代の指導者としてはやはり首相経験12年のメルケルに軍配が上がるようです。彼女の極端な「待ち」の姿勢は、強い指導力の欠落を表していると多くの有識者が批判するところではありますが、下手に個々の事象に「反応」して慌ただしく何か行動を起こすよりは害が少なさそうな気がするのは私だけではないでしょう。

連邦首相としての任務をアンゲラ・メルケルはどうこなしていると思いますか?

よくやっている 76%
不充分 19%

マルチン・シュルツなら?

もっとよくやれる 16%
さらに悪くなる 29%
変わりない 38%
分からない 17%


TV対決ではどちらが優位になると思いますか?

メルケル 33%
シュルツ 10%
引き分け 46%

  

政治家評価

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):

  1. アンゲラ・メルケル(首相)、2.1(↑)
  2. ヴォルフガング・ショイブレ(財相)、1.9(↑)
  3. ジーグマー・ガブリエル(新外相)、1.4(→)
  4. トーマス・ドメジエール(内相)、0.9(↓)
  5. クリスティアン・リンドナー(FDP党首)、0.9(→)
  6. チェム・エツデミール(緑の党党首)、0.8(↑)
  7. マルチン・シュルツ(SPD党首・前欧州議会議長)、0.7(→)
  8. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・バイエルン州首相)、0.6(↑)
  9. ウルズラ・フォン・デア・ライエン(防衛相)、0.3(→)
  10. サラ・ヴァーゲンクネヒト(左翼政党党首)、-0.3(→)

 

イギリスのEU離脱

イギリスのEU離脱交渉が本格的に開始されましたが、イギリス側の条件には不透明な部分が多く、実のところイギリスはどうしたいのか分からないのではないかという不安が弱体化したメイ政権にはあります。そうしたことを背景に、交渉においてEUはイギリスに大きく譲歩すべきかどうかについてのドイツ世論は冷淡で、譲歩すべきと答えたのがわずか11%だったのに対して、譲歩すべきではないと答えたのが84%にも上りました。

 

長期的に見たイギリスのEU離脱の評価:

EUにとって

いい 20%
悪い 66%
分からない 14%

イギリスにとって

いい 9%
悪い 82%
分からない 9%

イギリスのEU離脱は双方にとって悪い結果が予想されていますが、相対的にイギリスの方がより大きな痛手を被るだろうと予想されているようです。

アフリカで難民申請?

8月28日にパリで開催された難民サミットで、EUはアフリカからヨーロッパへ渡航しようとして地中海を渡る危険を冒す難民が後を絶たない状況を受けて、既にアフリカでヨーロッパにおける難民認定される可能性があるかどうかを審査すべきだという見解を出しました。この制度を導入した場合に、地中海を渡る難民数が減少するかどうかという質問に対して、67%が「減少しない」と答えました。「減少する」と答えたのは29%だけでした。

 

 

参照記事:

ZDF Politbarometer, 01.09.2017, "Mehrheit gegen Aus für Verbrennungsmotoren ab 2030"

n-tv, 24.06.2017, "Das Ende des Verbrennungsmotors: So ist 2030 machbar"

Zeit Online, 28.08.2017, "Flüchtlingsgipfel: EU-Länder für Alternativen zur Flucht über das Mittelmeer"


ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

ドイツ:シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙(2017)

ドイツ:3州同時選挙。右翼政党「ドイツのための選択肢」大躍進

ドイツ:世論調査(2017年4月7日)~首相候補。メルケル再びシュルツをリード

ドイツ:世論調査(2017年5月19日)~メルケルがシュルツを大きくリード


ドイツ:最新貧困統計(2016年度)

2017年08月30日 | 社会

ドイツにおいて、全世帯所得平均の60%以下の収入しかない世帯は〈貧困リスク〉に晒されていると見なされます。その貧困リスク率が最も高いのはブレーメン州で、22.6%に上ります。それに対して南ドイツのバーデン・ヴュルッテンベルク州は貧困リスク率が11.9%、バイエルン州は12.1%と、両州とも全国平均を下回っています。

東西格差も歴然としており、旧西ドイツ(ベルリンを除く)の貧困リスク率が15%なのに対して、旧東ドイツでは18.4% となっています。

貧困リスクが特に高いのは失業者で、旧西ドイツでは失業者の52.9%、旧東ドイツでは失業者の66.9%が平均所得の60%以下で生活しています。中でもザクセン・アンハルト州の失業者の貧困リスク率は群を抜いており、75.6%に上っています。

また一人親世帯とその子どもたちも平均以上に貧困リスクに晒されており、旧西ドイツで42.4%、旧東ドイツで46.9%の一人親世帯が貧困リスクラインを下回っています。

一人親世帯の貧困リスク率が意外に低いと感じる方も居るかもしれませんが、これは「一人親世帯」に両親が婚姻していないが同居している世帯も含まれていることが原因かと思われます。

合計  内訳
失業者   一人親世帯とその子ども(18歳以下)たち
%
 
バーデン・ヴュルッテンベルク 11,9 43,4 38,7
バイエルン 12,1 48,1 36,7
ベルリン(旧東) 19,4 63,8 34,5
ブランデンブルク(旧東) 15,6 63,8 46,8
ブレーメン 22,6 60,7 59,1
ハンブルク 14,9 45,6 41,0
ヘッセン 15,1 50,1 42,2
メクレンブルク・フォアポンメルン(旧東) 20,4 68,5 56,5
ニーダーザクセン 16,7 55,9 46,4
ノルトライン・ヴェストファーレン 17,8 59,0 45,2
ラインラント・プファルツ 15,5 55,5 46,0
ザールラント 17,2 49,5 42,1
ザクセン(旧東) 17,7 68,8 47,4
ザクセン・アンハルト(旧東) 21,4 75,6 60,0
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン 15,1 53,6 39,2
チューリンゲン(旧東) 17,2 61,2 49,6
追記:
旧西ドイツ(ベルリンを除く) 15,0 52,9 42,4
旧東ドイツ(ベルリン込み) 18,4 66,9 46,9

参照記事:

Statistisches Bundesamt, Pressemitteilung vom 29.08.2017: "Armutsgefährdung in den Bundes­ländern weiter unterschiedlich"

Statista.de, "Armutgefährdung in Deutschland", 29.08.2017

 


2016年度のドイツの労働形態統計

2017年08月20日 | 社会

2016年度のドイツの労働形態統計 Statista、2017.08.16より。

全労働者3710万人:
うち
フルタイム労働者 2200万人 
非典型的な労働形態 770万人
自営業 370万人
週20時間以上のパートタイム 360万人

非典型的な労働形態は5人に1人:
うち
週20時間以下のパートタイム 480万人
短期契約 270万人
軽微就業 220万人
派遣労働 70万人

短期契約及び派遣労働が前年に比べて増加しましたが、20時間以下のパートタイム労働は減少しました。

 

データベース(ドイツ連邦統計局)は15歳から64歳までの就労者で、学校教育、職業訓練またはボランティア活動などに従事していない人です。