徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ連邦議会選挙直前世論調査(2017年9月15日)~CDUは支持率低下

2017年09月16日 | 社会

いよいよ来週の日曜日(9月24日)はドイツ連邦議会選挙です。メルケル首相が次期も首相を務めることになるのはもうほぼ決定してますが、どの政党と連立して政権を作るかは未定です。どの世論調査でも投票先の配分にそれほど差は出ませんが、それでも選挙結果を予想するのが困難なのは、投票先を決めてない人の割合が大きいこととAfD(「ドイツのための選択肢」という右翼ポピュリズム政党)の支持者が世論調査で正直にカミングアウトしない傾向が強いことが挙げられる、ということをZDFの報道番組で聞きました。どの番組だったかちょっと定かではないのですが。

いろいろ問題がある世論調査ですが、それでもここに最新のZDFのポリートバロメーターを紹介します。解説は私見も交えているため、必ずしも元記事の説明と一致しないことを予めご了承ください。元記事はあくまでも「参照記事」です。

連邦議会選挙・投票先

以前の連邦議会選挙でもそうだったように、直前でCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)は支持率を失いつつあります。その他の政党は多少支持率を伸ばしていますが、それでも大多数(83%)の有権者はメルケルおよび彼女の政党CDUが勝つと予想しており、対抗馬のシュルツ(SPD)が勝つと予想しているのはたったの5%にすぎません。その他の政党も5%。「分からない」と答えた人は7%でした。

少し質問の仕方が変わると回答も違ってきます。「誰が連邦議会選挙に勝つか今日既に明らかですか」という質問に「はい」と答えたのは57%、「いいえ」と答えたのは41%、「分からない」は2%でした。


誰を首相に望みますか?

全体:

メルケル 56%
シュルツ 32%

CDU/CSU支持者:

メルケル 96%
シュルツ 4%

SPD支持者:

メルケル 18%
シュルツ 74%

まだメルケルの方が優勢です。また党内支持率もメルケルの方が圧倒的に高いですね。

 

誰を首相に望みますか?(2017年1月27日以降の動向):


もし次の日曜日が連邦議会選挙ならどの政党に投票しますか?:

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 36%(-2)
SPD(ドイツ社会民主党) 23% (+1)
Linke(左翼政党) 9%(変化なし)
Grüne(緑の党) 8%(変化なし)
FDP (自由民主党) 10%(+1)
AfD(ドイツのための選択肢) 10%(+1) 
その他 4% (-1)

変化があったとはいえ、殆ど誤差の範囲ではないかと思える程度ですね。もちろんこれが選挙結果を正確に予想するものでないことは次の質問の回答に現れています。

 

投票先は確定していますか?


はい 61%
いいえ 39%

つまり4割近くの人が寸前で考えを変える可能性があるわけです。私事で恐縮ですが、私のダンナもまだどうしようか迷っています。テレビの街頭インタビューでも「投票所に行ってその場で決める」と答えてた人もいました。

理由は様々ですが、最も大きな原因としては、政党間の差異があまり明確ではないことが挙げられます。特に「国民政党」と呼ばれるCDU/CSUとSPDは過去4年間連立与党として活動してきたために合意している部分が多く、中でもSPDは社会主義的なカラーが薄くなって、本来の支持層である労働者層や労働組合から不信の目を向けられつつあるようです。

 

ドイツの選挙でも直接候補を選ぶ小選挙区の票と政党を選ぶ比例代表の票があり、この2票でそれぞれ違う政党に投票する場合があります。

投票先として考えられるのは?

一つの政党だけ 29%
複数政党 71%

どちらの票も同じ政党に投票するのは実は少数派なのですね。。。これは、どの政党も単独では過半数を獲得できず、他政党と連立せざるを得ないことに起因します。俗に「戦略的投票(strategisches Wählen)」と呼ばれる投票行動で、どの連立政権を希望するかによって投票先を決めるのですが、第三の地位を争う政党が増えたことから、昔よりも複雑になっています。以前でしたら、例えばSPDと緑の党の連立が良ければ、小選挙区票はSPDの候補に入れ、比例票は緑の党に入れたりしたのですが、政党数が増えたことによって、どこにどの票を入れれば望む連立政権に繋がるのか予測しづらくなっています。

 

連立モデルの評価:

CDU/CSUとSPD(大きな連立):いい 40%、悪い 42%
CDU/CSUとFDP:いい 39%、悪い 40%
CDU/CSUと緑の党:いい 30%、悪い 44%

CDU/CSU、緑の党、FDP(ジャマイカ連立):いい 25%、悪い 52%
SPD、緑の党、FDP(信号機連立):いい 22%、悪い 53%
SPD、左翼政党、緑の党(左派連立):いい 24%、悪い 63%

どの連立モデルも過半数を超える支持は得られていません。その中でも一番人気があるのが現在の「大きな連立」です。

 

投票に行かない:

投票先が分からない人の中にはもちろんそもそも投票に行かないという人も含まれていますが、データを見る限り「無投票」に決めてる人は3%しかいないようです。「(投票に行くかどうか)分からない」が21%

これを見る限りでは、高い投票率が予想されます。

 

1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先回答推移:

 

 政権満足度(スケールは+5から-5まで):+1.2

 

政治家評価

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):

  1. アンゲラ・メルケル(首相)、1.9(↓)
  2. ヴォルフガング・ショイブレ(財相)、1.7(→)
  3. ジーグマー・ガブリエル(新外相)、1.5(→)
  4. マルチン・シュルツ(SPD党首・前欧州議会議長)、1.1(→)
  5. チェム・エツデミール(緑の党党首)、1.1(↑)
  6. トーマス・ドメジエール(内相)、1.1(↑)
  7. クリスティアン・リンドナー(FDP党首)、0.9(→)
  8. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・バイエルン州首相)、0.4(↓)
  9. ウルズラ・フォン・デア・ライエン(防衛相)、0.3(↓)
  10. サラ・ヴァーゲンクネヒト(左翼政党党首)、-0.1(↓)

 

AfDと極右思想

ドイツで今勢力を持つ右翼ポピュリズム政党と言えばAfD(=Alternative für Deutschland、ドイツのための選択肢)ですが、かなりダークな極右勢力と強いつながりを持つ人も相当数党内に存在しているらしく、たびたびナチス的な問題発言をする議員がメディアの見出しを賑わせています。

極右思想はAfD党内に浸透していると思いますか?

かなり広く 45%
広く 34%
それほどでもない 14%
全然そんなことはない 2%
分からない 5%

回答はまあ予想通りの結果です。8割近く(78%)が極右思想がAfD党内に「(かなり)広く浸透している」と見做しています。「それほどでもない」と答えたのは14%、「全然そんなことはない」は2%。単なる推測ですが、「それほどでもない」、「全然そんなことない」と答えた人の中にかなりのAfD支持者が居るのではないかと思います。尤も中には極右だと分かっていてAfDを支持している人もいるでしょうけど。

 

トルコ関係

ドイツとトルコの関係がいつになく悪化しています。トルコ系とはいえドイツ国籍を持つジャーナリストや作家、はたまた人権保護活動家までが既に何人もトルコで逮捕・勾留されています。逮捕されて数日で釈放された人もいますが、釈放後も出国が許されていない場合がほとんどです。1年以上前のクーデター未遂以来エルドアン大統領支配下のトルコは反政府勢力を抹消しようと躍起になっており、どんどんおかしな方向へ向かってます。メルケル首相を始めとするドイツ政治家によるトルコの逮捕・拘留に対する批判は正当としか思えないのですが、トルコ側は全然そう受け止めてはおらず、「ドイツでは人権が無視され、トルコ系住民が差別されている」等と逆ギレ(?)し、ドイツ向けの旅行警告まで出しました。

多少の差別がドイツにあるのは否めませんが、一応基本的人権も報道の自由も保障されており、ジャーナリストや作家などがトルコのように逮捕されることなどあり得ません。アムネスティのような人権擁護団体に属する活動家まで「武装化テロ組織を支援している」などという言いがかりで逮捕するなど、ドイツでは全く考えられないことです。そうしたことが起こっているのはトルコ。つまり人権侵害をしているのは明らかにトルコの方なのに、「ドイツではトルコ人に対する差別がある」と旅行警告を外務省から正式に出してしまうなんて、本当に理解不能です。ちなみにドイツ外務省はトルコ旅行に関して「注意」を促してはいますが、旅行警告を出すには至っていません。

こうしたことを背景に、「トルコにおける動向は、ドイツにおけるトルコ人とドイツ人の共存を難しくしているか」という質問に対して、65%が「はい(とても)」と答えています。「いいえ(それほどでもない)」と答えたのは31%。

今後どう発展していくのか、確かに不安ではあります。

 

参照記事:

ZDF Politbarometer, 15.09.2017, "Union verliert weiter an Zustimmung(キリスト教民主同盟は更に支持率を失う)"

nTV, 30.08.2017, "Parteien, Bündnisse, Strategien: Wie wählen - und vor allem wen?(政党・連立・戦略:どのように選ぶか。特に誰を?)"

ARD Tagesschau, 18.07.2017, "Festnahmen in der Türkei: "Verhaftung absolut ungerechtfertigt"(トルコでの逮捕:「逮捕は全く根拠がない」)"

Focus Online, 28.07.2017, "Wuppertaler Türke im Heimaturlaub verhaftet – wegen eines Facebook-Posts(ヴッパータール在住のトルコ人が故郷での休暇中に逮捕。理由はフェースブックの投稿)"

Welt Online, 01.09.2017, "Verhaftungen in der Türkei: Merkel kündigt entschiedene Reaktion Deutschlands an(トルコでの逮捕:メルケルはドイツのきっぱりとした反応を予告)"


ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

ドイツ:シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙(2017)

ドイツ:3州同時選挙。右翼政党「ドイツのための選択肢」大躍進

ドイツ:世論調査(2017年4月7日)~首相候補。メルケル再びシュルツをリード

ドイツ:世論調査(2017年5月19日)~メルケルがシュルツを大きくリード

ドイツ:世論調査(2017年9月1日)~2030年からの内燃エンジン禁止反対多数

ドイツ:メルケル&シュルツTV対決