徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙(2017)

2017年05月15日 | 社会&世論調査

昨日、5月14日は、ドイツで最も人口の多いノルトライン・ヴェストファーレン州の州議会選挙でした。ドイツ有権者の5人に1人(1310万人)がこの州に住んでいることになるため、「小さな連邦議会選挙」とも言われ、その注目度は先週のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の比ではなりません。ここでの結果が実際にどれだけ9月に控えた連邦議会選挙に反映されるかについては意見が分かれるところです。政治家たちはどちらかと言うと「州政治」と「連邦政治」は分けて考えるべき、と言う人が多いようですが、メディアは分けて考えない方に傾いているようです。

投票結果

SPD(ドイツ社会民主党、現政権)31.2%(-7.9)
CDU(キリスト教民主同盟) 33%(+6.7)
緑の党(現政権) 6.4%(-4.9)
FDP(自由民主党) 12.6%(+4.0)
海賊党 1.0%(-6.8)
左翼政党 4.9%(+2.4)
AfD(ドイツのための選択肢) 7.4%(+7.4)
その他 3.7%(-0.9)

直前の世論調査ではSPDとCDUがほぼ同点でしたが、予想外にはっきりとSPDが負けました。現職州首相ハンネローレ・クラフトはこの大敗の責任をとって、全ての党内職を辞任しました。引き際は潔いですね。
ノルトライン・ヴェストファーレン州は歴史的にSPDの牙城と言われている州で、そこで史上最悪の得票率を出したことで、SPDはこれから連邦議会選挙に向けて苦しい戦いを強いられることになる模様です。特にSPDの連邦首相候補マルティン・シュルツは、彼が1月に党首に就任してから、ザールラント州、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州に続いて3度目の敗北を喫したことになるので、かなりインパクトのある選挙プログラムを打ち立てて、9月の連邦議会選挙で成果を出さないことには相当苦しい立場に追い込まれることになるでしょう。彼の就任当初「シュルツ効果」とか「シュルツ・ハイプ」とか言われた支持率の増加はあっという間にしぼんでしまいましたね。

 

ノルトライン・ヴェストファーレン州議会の議席は199議席あり、その割り当ては以下のようになります。

勝者であるCDUがこれから連立相手候補と交渉に入ることになりますが、CDUとFDP(黒・黄連立)が連立する場合、100議席でかなり危うい過半数となるため、2党連立ではなく、3党連立になる可能性もあります。今のところ誰もが「色んなオプションを検討し、話し合う」という回答に始終して、明言を避けています。新州首相ラシェットは「とりあえず左翼政党やAfDとの連立は論外」としています。左翼政党は得票を伸ばしたとはいえ、5%に達しなかったため、州議会入りは果たせず、どちらにせよ対象外です。

 

投票動機

投票先の決断に最も重要だったテーマはTagesschauの調査によると:

学校の状態 29%
きな臭い世界情勢 22%
警察による治安活動 15%
州首相候補 13%
連邦首相候補 11%

このうち州議会の管轄またはそれに関連するのは学校と警察と州首相のみです。

投票先別にみると投票動機にかなりの違いがみられます。

CDU投票者では、52%が治安問題、47%が学校の状態、40%が連邦首相候補を自分の投票決断に重要だったと言っています。CDUの連邦首相候補は現職首相のアンゲラ・メルケルです。彼女は州政治とは関係ありませんが、連邦レベルの政党の在り方が州議会選挙の投票行動に影響を与えたことになり、「メルケル・ボーナス」と言えるでしょう。

それに対してSPD投票者では37%が州首相候補、35%が学校の状態、35%がきな臭い世界情勢を自分の投票決断に重要だったと言っています。SPDの州首相候補は現職のハンネローレ・クラフトでしたので、彼女の「現職ボーナス」がものを言ったことになりますが、それだけでは選挙に勝つことはできなかったということですね。「きな臭い世界情勢」がなぜSPDに投票する理由になるのか、その辺の関連性は私には意味不明です。もしかしたらCDUに比べると平和志向が強いと思われているのかも知れませんが、ドイツ連邦軍のアフガニスタン派遣を決定したのはSPDのシュレーダー政権下のことでしたので、説得力のあるイメージではありません。

学校・教育政策に関して言えば、争点となったのは「Inklusion(包括)」のスローガンで実施された障害のある子どもたちの普通学校への統合措置です。これは国連条例をドイツで実施したものですが、教師や生徒の親たちの多くがこの措置で最終的にみんなが苦しくなってると見ているようです。理想はともかく、現実問題として普通学校に障がい児を受け入れる態勢が整備されておらず、養護教諭不足で、普通の教師たちは障がい児の扱いに困り、障がい児自身も必要なサポートが学校で得られずに困る結果となったらしいです。この措置を推し進めたのは教育相シルヴィア・レアマン(緑の党)でした。きちんとした受け皿を作らずに無理に障がい児受け入れを進めたのは失策以外の何物でもありません。その不満が下に述べる州政府の業績評価にも顕著に表れています。

現州政府の業績評価:

「不満」の割合:

道路の補修 77%(満足:20%)
学校・教育政策 70%(満足:24%)
子供の貧困対策 67%(満足:24%)
犯罪対策 63% (満足:34%)
NRWの経済促進 44%(満足:52%)


下のグラフが示すように、NRWでは州政府に対する満足度が群を抜いて低かったので、連立政権を成す両政党SPDと緑の党がそれぞれ7.9及び4.9ポイント得票率を失ったのは当然の帰結と言えます。

ノルトライン・ヴェストファーレン州(2017) 45%
バーデン・ヴュルッテンベルク州(2016) 70%
ザールラント州(2017) 69%
ラインラント・プファルツ州(2016) 61%
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州(2017) 56%

治安の悪化、失業率・貧困率の増加、依然として改善されない道路の渋滞、無理な学校政策などによる現政権への不満が前回投票しなかった人たちをも投票に向かわせたようで、投票率は2012年の59.6%から65.2%に上昇しました。


年齢別統計

有権者の投票先を年齢別に見た統計も興味深いです。若い人がSPDに投票し、年寄りがCDUに投票するという老若間の断然もあるようです。

下のグラフは今回初めて有権者となった人たちの投票先を示しています。SPDが26%で、22%のCDUをリードしています。

18-24歳の有権者の投票先を見ても、やはりSPDが26%で、23%のCDUをリードしています。

しかし、70歳以上の有権者の投票先を見ると、CDUが46%も占め、34%のSPDに大きく差をつけています。つまり今回の選挙はジジババの投票行動が勝敗を分けた、と言えますね。

60歳未満と60歳以上の投票行動を比較したのが以下のグラフです。60歳未満ではCDUとSPDの得票率が同じです。差がついているのは60歳以上。高齢化社会では高齢者の考え方の傾向が政治により大きく影響する典型的な例と言えるのではないでしょうか。

「社会的公正」を公約に掲げながら貧困率・失業率を増加させてしまったSPDと緑の党に対する不満の受け皿になったCDUですが、彼らの掲げる「NRWをナンバーワンに」という公約も到底守られそうにありません。人口約1790万人を擁するNRWは、炭鉱を中心に繁栄したルール工業地帯を抱え、経済成長期の1970代に多くの移民労働者を受け入れてきた歴史があり、産業構造の変化の真っ最中で、ドイツの中でも特殊な位置を占めています。人口が多いこと、外国人の割合が多いこと、旧産業関係者の既得権益など一筋縄ではいかない状況があるため、政権交代して、CDUが政治をするからと言って、そう簡単に色々変えられるわけがないのです。予算も限られていますから、治安の改善一つとってもどこまでできるものなのか疑問です。

参照記事:

ARD Tagesschau, Landtagwahl Nordrhein-Westfalen 2017, 15.05.2017
Zeit Online, Schulz hofft auf den Kraft-Effekt, 14.05.2017
Zeite Online, NRWeg, 15.05.2017

ジャンル:
海外
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