5月7日はフランス大統領選が国際メディアを賑わわせていました。結果はご存知の通り無所属のエマニュエル・マクロンが約65%を得票し、35%得票した極右政党フロン・ナシオナルのマリーン・ルペンに勝利しました。西側諸国のリベラル派はさぞ結果に安堵したことでしょうが、忘れてはならないのは、35%の得票率がフロン・ナシオナル創立以来の快挙だという事実と、既存政党が党派を問わず極右勢力を抑制するためだけにマクロンに投票するように有権者に呼びかけたにもかかわらず投票率が例年より低めにとどまったことです。これの示すことは、フランス国民の大半がどちらの候補者も支持できず、投票に行った人たちの多くがルペンを勝たせないためだけにマクロンに票を入れたということでしょう。マクロンがすぐにでもしなければならないことは新党を結成し、6月に控えた国民議会選挙で議会における支持基盤を確保することです。そこである程度の勢力が形成されれば、彼の掲げた改革を実施する可能性も出てきますが、そうでなければフランスの状況は何も変わらず、政治に対する失望が広まり、次はフロン・ナシオナルを抑えることができなくなるだろうと予想されています。その意味でマクロンの今後はフランスだけではなくEUの将来にとっても重大事項です。ルペンが反ドイツ・反EUを打ち出したのに対して、マクロンはEU支持、ドイツとの緊密な協力を打ち出しています。彼のドイツ側のパートナーとなるのはメルケル現首相かマルティン・シュルツ元EU議会議長か決定するのは4か月後です。そのドイツ連邦議会選挙の傾向が読み取れると言われるのが、フランス大統領選と同日に行われたシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙及び来週の日曜日、5月14日に行われるノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙です。
前置きが長くなりましたが、以下が昨日のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙の結果です。
CDU(キリスト教民主同盟) 32%(+1.2)
SPD(ドイツ社会民主党) 27.2%(-3.2)
Grüne(緑の党) 12.9%(-0.3)
FDP(自由民主党) 11.5%(+3.3)
Piraten(海賊党)1.2%(-7.0)
SSW(南シュレスヴィヒ有権者連合)3.3%(-1.3)
Linke(左翼政党) 3.8%(+1.5)
AfD(ドイツのための選択肢) 5.9%(+5.9)
その他 2.3%(-0.1)
AfDの州議会入りは回避されませんでしたが、全国平均の支持率よりずっと低い得票率(5.9%)に終わったことは注目に値します。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の有権者はローカルな問題の方を重要視する傾向が強いのかも知れません。その場合反EU、反イスラム、反難民を掲げるAfDには州政治に重要な政策にかけるため、得票が難しくなります。
投票率は64.2%で前回の2012年の時よりも4ポイント改善されました。
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会は73議席から成り、投票結果により以下のように割り当てられることになります。
通常、政党が州議会入りするためには最低5%の得票が必要条件ですが、SSWはデンマーク系やフリース系の少数民族のための政党であるため、5%に達しなくても議会に議席を得られることになっています。
現行のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州政府はSPD、緑の党、SSWの3党による「海岸連立政権(Küsten-Koalition)」と呼ばれる連立政権ですが、その主要政党である3党が軒並み得票率を減らしているため、選挙結果は現行政府の否定と解釈されています。
現州首相であるトルステン・アルビヒ(SPD)は現職メリットを生かして得票率35%を目指していましたが、30%を超えることがなく、SPDの新党首マルティン・シュルツの人気による「シュルツ効果」も全く現れず、むしろこれまでほとんど無名だった若い新州首相候補ダニエル・ギュンター(CDU)の州政治のテーマを重点的に扱った選挙運動とメルケル首相の安定性によって大きく差をつけられることになったため、明確な敗北を認めざるを得ない状況です。
さて、来週はノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙です。一応私も有権者ですが、まだ投票先は決まっていません。
参照記事:
Tagesschau, 2017 Schleswig-Holstein: Vorl. amtl. Ergebnis, 2017.05.07
ZDF heute, Landtagwahl in Schleswig-Holstein: Hochrechnung: Küsten-Koalition geht baden, 2017.05.07