WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『姫神』(著者:安部 龍太郎)

2016-09-25 16:48:57 | 本と雑誌

時は飛鳥、聖徳太子の遣隋使計画を実現させた九州の豪族と巫女の活躍を描く、安部龍太郎さんの新作。その前に日経朝刊に連載されていた「等伯」も、絵師の一芸に賭ける執念のすさまじさに打たれた。ちなみに日経の連載は、さすがに天下の大新聞で、質量ともに脂ののった大御所ばかり起用して毎回絶対にハズレがない。今はちょうど、伊集院静氏が「やってみなはれ」で有名なサントリー創業者の生涯を書いている。体力が落ちているせいか、読むと昔の人はえらいもんだとため息しきり。

3年前の冬、風邪のひき始めに薬が嫌いで飲まず、タイミング悪く仕事もプライベートも立て込んで帰宅の遅い日が続いて、咳が止まらなくなり最悪な気管支炎を併発。治るまで数ヶ月にもわたり抗生物質漬けになったため、もう絶対に、二度と嫌であると、今回は熱が出たとたんに体を休め、初動からちゃんと薬を飲み始めた。

ところがこれだけケアしているのに、症状が治りかけるとまたぶり返しが続き、2週間たっても治らないのはほんとに納得がいかない。まさか3年前より体力が落ちたのか?それとも治りにくい夏風邪かつ、夏の終わりにいろんな人の器官を巡って薬に耐性のついた細菌だから?薬のせいでとろとろと眠い割に、湿気が多い夜は寝苦しい。ウイルスよ、もう早く私の体から出ていって。


『総理』(著者:山口 敬之)

2016-09-19 17:30:33 | 本と雑誌

初めての新潟に出張の機会があり、せっかくなので土日ステイして日本酒と海の幸を楽しもうと計画していたのに、風邪は治りかけが大事と諭され、無理しないで帰京することにした。東京は秋雨前線が停滞してねずみ色の空。細かい雨が糸を引きながら落ちてくるのを見ながら、食欲が復活し、眠りが深くなり、秋だなぁと感慨しきり。季節が変わるのって早い。

うちは代々、野球は巨人、自動車はトヨタ、選挙は自民という根っから保守党の家系。選挙のときはよっぽどのことがない限り自民党に入れるが、親戚中、とくに政治好きでなくとも安部さんの人気はとても高い。TPPとか普天間基地とかいう単語を知らないおばさんでも、「消費税の増税をストップして、さすが安部さんがんばってるわねえ」と目を細める。思うに一度、徹底的に惨敗して、もう再起不能で政治家生命は終わりと誰もが思ったところからの大活躍が、判官びいきの日本人の心情をぐっと刺激するのではないか。

2007年の突然の辞任のさい、報道で今にも倒れそうな弱々しい姿をみて、「踏ん張りどころなのにこれだから二世政治家は・・・」と残念に思った日本国民も多かったはず。それからわずか5年で、鮮やかに自民党総裁に返り咲いたまさかの復活劇。トップを奪い返すと、まさに生まれ変わった別人のような積極的な快進撃。今や安部さんに伍する政治家は永田町広しといえども見当たらず、総裁の任期延長という声も出始め、信頼性が高く安定した長期政権を運営した名総理として歴史に残るのは確実だろう。

そんな安部さんと、総理大臣を全力で支える麻生副総裁、菅義偉官房長官のタッグを、官邸に近くそれぞれとも長い親交がある政治ジャーナリスト、山口敬之氏が描く。なまなましい政局の緊迫した舞台裏、政治家の人間くさい素顔、文章がうまくてつい引き込まれる。読後、それまで通り一遍に読み流していた新聞の政治面ががぜんおもしろくなった。


『コスメティック』(著者:林 真理子)

2016-09-11 18:27:21 | 本と雑誌

今日は半年ぶりに高尾山にハイキングに行く予定が、熱がひかず扁桃腺が痛くて、終日ベッドでうとうと。寝ても寝ても眠くて、いくらでも眠れる。体温を上げて一生懸命にウイルスと戦っている体が健気で、私もきちんと薬を服用し、食事をし、ひたすら休む。前は風邪をひいても余程のことにならない限りは夜遅くまで仕事したり遊びに行ったりしていたが、気管支炎が長期に渡り治らずというバッドな経験をしてからは、たいがいの予定を遠慮なくキャンセルする。前は何だってあんなに無理してたんだろう。今は大人になったということか。

本好きの友人知人にkindle賛歌を続けているが、これは力の抜けた腕で寝ながら読むには本当に嬉しい軽さである。20代の頃にいちど読んだこの小説、ハードカバーで買っても本棚に残らないけど、電子書籍なら読み直すにも便利。周囲で評価が分かれる林真理子さんの作品は、私は結構好き。野心家でギラギラドロドロしているんじゃなくて、実はとってもピュアなのだ。よくある、人と違うオリジナリティを出すために文体をこねくり回して複雑にしてしまう作家より、よっぽど才能のあるこの人は天啓のようにスーッと頭に降りてきたまま、ストレートに紙に書き付けていくのではないか。

ところでこれを読んでいたらむしょうにおいしいパスタが食べたくなってきた。盲腸になると食欲がなく絶食いかんにかかわらず食べられないというのに、入院中、「吐き気は大丈夫ですか」と気遣ってくれる看護婦さんに「この点滴を外してご飯が食べたいです」と訴えて苦笑されていた私。おとなしく寝ているうちに体力が戻ってきたのかしら。早く普通の体調に戻りたい。


『幸せは白いTシャツ』(著者:片岡 義男)

2016-09-10 16:38:08 | 本と雑誌

夏のあいだずっと体調は飛ばし気味に良かったのに、8月後半から台風続きで蒸し暑い天候のせいか、久しぶりに扁桃腺が腫れてダウン。今まで仕事がたてこんで全く行けてなかった美容院にもお買い物にも行きたいし、その仕事もまだまだやりたいことがたくさんあるのに、熱のある体はだるくて、もどかしい。

片岡義男版のオン・ザ・ロードは、バイクで日本全国をツーリングする女性の物語。どの章も、高速で走る彼女の視線の先にある海と空に爽やかに吹く風、日本の夏ならではの時折の雨に型どられてとても美しい。海は大好き。今年は夏の最後に逗子に行き、雨模様の空を見ながら飲んだ白ワインがおいしかった。バイクでその日を気ままに走る旅いいなー、読むそばから心が躍る。

私は気管支が弱く咳が始まるとずっとひどいループが続くため、早めに耳鼻科を受診。自宅の最寄り駅近くに初めてかかったお医者さまは、お風呂もコーヒーも運動も治るまで厳禁!と言われた前の耳鼻科と違って、ほどほどなら全部大丈夫ですよ~、と優しい診察。帰りに素敵にカジュアルな割烹のお店も発見し、これで体調が回復すれば言うことなし。


『ガダラの豚(1)~(3)』(著者:中島 らも)

2016-09-01 19:59:40 | 本と雑誌

夜、スタミナが切れてきたころに大量のデータを見る必要があり、糖分を求めてお土産にもらったアメリカのチョコレートを食べてみたら、これがめちゃめちゃおいしかった。濃厚なひとかけらが甘く喉をすべっていった瞬間、急激に疲れがとれて集中力が復活。すごい。「ダーク・タワー」で最後のガンスリンガー、ローランドが現代にトリップして銃撃戦のあとで瓶詰のコカ・コーラを飲んだときみたい。私、普段ほとんど甘いものを食べないので、よけいに効くのだろう。おかげで無事にひとつ入稿が終わって、ほっと一息。

15年くらい前に「人体模型の夜」を読んだとき、こんなにおもしろいショートストーリーを12話も詰め込んで完璧な構成にする鬼才っぷりに瞠目したが、こちらも鮮烈なイマジネーションが大きな花火みたいに炸裂する。蒼い空と悠久のサヴァンナがどこまでも続くアフリカ。日本から、8年前にアフリカの気球事故で小さい娘を失った大学教授の一家と、テレビ局のクルーが呪術師の村を撮影に訪れる。呪術という人知を超える力は存在するのか、それとも仕掛けのあるトリックか。どっち、どっちと読者を否定と肯定の間に歩かせる絶妙なバランスにハマッて、読みやめることができない。

後半、ジワジワと迫る強大な呪術師の呪いに、バタバタと死んでいく登場人物たち。テレビという巨大な拡散器の怖さ。一気に3冊疾走して、予想外のラストにがくっと脱力。中島らも、やっぱりすごい。