WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『サヨナライツカ』 (著者:辻 仁成)

2010-06-27 21:01:51 | 本と雑誌
サヨナライツカ (幻冬舎文庫) サヨナライツカ (幻冬舎文庫)
価格:¥ 520(税込)
発売日:2002-07

そういえば恋愛小説を読むのは久しぶりだ。この本はプレゼントで頂いた。タイを舞台にした、25年間いちども会わなくても続く愛。根がロマンチストなのでフィクションとわかっていてもいい話だなぁと思ってしまう。


『走ることについて語るときに僕の語ること』(著者:村上 春樹)

2010-06-26 19:36:03 | 本と雑誌
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫) 走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
価格:¥ 540(税込)
発売日:2010-06-10

ここ数年、週末ジョギングという習慣を身につけている。きっかけは、地下鉄の階段をのぼっているときにひどい息切れがして、「これはまずいな」と運動不足を痛感したこと。体を動かす時間が少ないワークスタイルだし、昔から食べても太らない体質なので、気づいて良かったと思う。


日曜の朝、好きな音楽を聴きながら、5キロから7キロ、体調にあわせて速いペースで走る。天気のいいときは外で風をきって、雨の日や夏の盛りは室内のマシンで。走っていると体の中に規則正しいエネルギーが生まれてきて、とても気持ちがいい。それに、この本にあるフル・マラソンやウルトラ・マラソンのような過酷なのは無理だと思うけれど、距離がじょじょに長く、タイムがより速くなるのは、気分を上向きにさせてくれる。


それにしても読みながら、文章を書くという行為のありようについて、いろいろなことを考えた。昨日当社の新30年ビジョンの発表日をむかえて、準備する仕事が山のようにあり、プロジェクトにかかわっているみんなで「30年に一度だから」というキャッチフレーズで激務のヤマ場を乗り切って、この本のラスト「少なくとも最後まで歩かなかった」という言葉がいっそう胸に沁みる。


『レヴィ=ストロース講義』(訳:川田 順造・渡辺 公三)

2010-06-19 20:15:20 | 本と雑誌
レヴィ=ストロース講義 (平凡社ライブラリー) レヴィ=ストロース講義 (平凡社ライブラリー)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2005-07

フランスの偉大な文化人類学者、クロード・レヴィ=ストロース博士が日本で行った3回の講義をまとめたもの。招聘から6年目にやっと実現した講演であり、その講義の準備には博士が前の年の夏をほとんどあてた、とあって、読む前からかなり緊張(笑)


ユマニスムについての優雅な定義をはじめとして、民族の違いと文化のあらゆる面を対象にした論点がぎっしり。構造言語学の手法を分析に取り入れた親族構造についてのお話も少しだけだがあって、とても興味深く読んだ。文化のシンメトリーというところでふと、前に読んだ短いテキストを思い出し、本棚から出してみたら、やっぱり氏の文章。テキストはポルトガル人の宣教師ルイス・フロイスが記した日本文化論の仏訳に寄せた序文、特に? La symétrie qu'on reconnaît entre deux cultures les nuit en les opposant. ?が記憶に残っていた。表現が豊かでまるで詩のよう。この本もとても気に入った、早く次の著作が読みたい。


『燃える天使』(編訳:柴田 元幸)

2010-06-13 19:51:48 | 本と雑誌
燃える天使 (角川文庫) 燃える天使 (角川文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2009-10-24

この週末は身体のバイオリズムのせいか、眠くてたまらない。疲れているというより、なんだかひたすらベッドに丸くなって、深い眠りのなかに沈みこみたい欲求。前に何かの本で、現代の人間が一日に受け取る情報量はあまりにも多すぎて、眠ることで重要じゃない半分を忘れる、それで都合よく頭の中がちゃんと整理される、とあった(たしか外山滋比古氏)のを思い出す。


「翻訳夜話」を読んでこの人の翻訳を好きになった。この短編集もとってもクール。表題になっている「燃える天使」はモアシル・スクリアルのとても短い、ガツンとパンチの効いた作品。日本語で読むにはこういうのがいい。


『人間の建設』(著者:小林 秀雄/岡 潔)

2010-06-06 19:45:24 | 本と雑誌
人間の建設 (新潮文庫) 人間の建設 (新潮文庫)
価格:¥ 380(税込)
発売日:2010-02-26

梅雨に入る前のこの時期は、風と太陽がほんとうに気持ちいい。夕暮れに冷たいビールをグラスに注いで、美しい空を見ながら読書しているとしみじみ、幸せな気分だ。


昨日はこの文庫本を持って、近所のトラットリアへ。南イタリアで料理修業してきたというマスターと雑談しながら、ハイネケン片手に小一時間、読む。昭和40年に「新潮」に掲載された、数学者の岡潔と小林秀雄、二人の天才の対話集。日常的な話題をもとに、両氏が雑談している内容を書き起こしているのだが、これがとても味わい深い。


ハルトークスの逆問題をたった一人で解決して、西洋の数学界に衝撃を与えた岡潔の、文学や美術への造詣の深さ。「論理的には矛盾せず成立しうる命題でも、数学者の感情が納得しないと成立しない。それがわかったので、数学にも大きな意味があった」なんて、とんでもなくカッコいい言葉ではないか。