WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『電子書籍の衝撃』(著者:佐々木 俊尚)

2010-08-28 20:57:51 | 本と雑誌
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書) 電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
価格:¥ 1,155(税込)
発売日:2010-04-15

男の子の常套句ナンバーワン、「クルマで送っていくよ」と言われて、「本が読みたいので電車で帰ります」と大真面目に答えていた大学時代、体よく断ったんじゃなく本当に読書したかっただけなのだが(笑)、今思うと、素敵な恋愛がはじまっていたかもしれないきっかけを何度となくスルーしてしまった気がしないでもない。


私は紙に印字された文字の味わいをこよなく愛しているので、iPhoneやiPadで本を読む習慣はない。液晶画面と、デバイスの重さが変わらない限り、電車やカフェで電子書籍を熟読・・・ということもないな。この本も、先週末海に行ったので、ビーチパラソルの下で潮風とビールを楽しみながらページをめくった。


1980年~90年代の記号消費の時代は過ぎた、ベストセラーランキングよりもTwitterで流れてきた知人のオススメ本を買って読んでみる、という細分化された読書傾向が主流の今、電子書籍が出版文化をどう変えるかという点がおもしろい。まだキャズムを超えていないからね、ここ5年でどう変わっていくかが楽しみである。


『海辺のカフカ(上)』(著者:村上 春樹)

2010-08-21 16:57:06 | 本と雑誌
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
価格:¥ 740(税込)
発売日:2005-02-28

新刊の時に読んで、またあらためて文庫で買って読んだ。この本の登場人物の中でも、ナカタさんという、読み書きのできない老人にとても心をひかれる。太平洋戦争で田舎に疎開した少年時代、森の中で倒れて昏睡、3週間たって目覚めたら「頭の中がすっかり白紙になっていた」ナカタさん。でも清潔好きで、心がきれいで、まわりの人の親切に感謝しながらのんびりと楽しく生きている。


村上春樹の文章は1行1行、ゆっくり読むのがいい。頭ではなく心で理解できる表現が多いから。たとえば、人の痛みを想像することができない、狭量、非寛容な、ある種の人間について。それに、シューベルトのニ長調のソナタ、曲そのものと演奏の、不完全さと完全さへの考察について。ああ本当だなと思う。7年ぶりに読んでもまた感動することに感謝。


『〔超訳〕論語』(編訳:岬 龍一郎)

2010-08-09 22:39:00 | 本と雑誌
[超訳]論語 自分を磨く200の言葉 (PHP文庫) [超訳]論語 自分を磨く200の言葉 (PHP文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2009-06-01

7月28日、ソフトバンクアカデミアの開校式は、「孫子の兵法」とかけた社長の戦略特別講義をUstreamで生中継。大きな志、考え抜いたビジョン、スキルとして交渉・プレゼン力、IT技術への洞察力、ファイナンスの専門知識、など将来のグループを率いる経営者の資質について。

身震いのするような、心になにか大きな翼を与えられたような講義だった。後継者だけでなく、いずれもこれからのビジネスパーソンに必要不可欠な内容。今の仕事を全力でやるのはもちろんだが、もっと大きな目で挑戦・精進しなくては・・と思う。


孫子を著した孫武と同時代、紀元前500年ごろの孔子「論語」。書物としての体系用途は異なるが、古代思想史に大きな影響を与えた歴史的な古典。これは一部を抜粋して平易な現代語にしてあり、ふと思いついて移動の合間に読んだ。「度量の大きさ」「矜持とは」などの「衛霊公篇」がよし。


『アルゼンチンまでもぐりたい』(著者:中村 紘子)

2010-08-07 16:26:51 | 本と雑誌
アルゼンチンまでもぐりたい (中公文庫) アルゼンチンまでもぐりたい (中公文庫)
価格:¥ 760(税込)
発売日:2010-06

今週、会社の部署の歓迎会で初めてジンギスカン専門店に行った。

前菜?の羊の焼肉で白いご飯をおかわりして、その後にメインのジンギスカン鍋、最後にマトンを使ったカレー(さすがにこれは半分くらい残した)。お肉と野菜を独特のかたちをした鉄鍋で焼く美味しさに、周囲に「木戸さんがそんなに食べるなんて・・・」と言われるくらい食が進み、おかげさまで夏の疲れが一気に回復。当たり前のことだけど、日々3回とる食事は大事とあらためて思う。


日本を代表するピアニスト、中村紘子さんといえば、お料理もプロ級の腕前で有名。このエッセイでご自宅に600冊もの料理本があるとあってびっくり。カレーを作るときには前日に各種スパイスを挽くところからご自分で用意し、深夜までかかって煮込むのだとか。また朝に飲むコーヒーにこだわって、海外演奏旅行の際も、自宅でひいたコーヒーとフィルターをちゃんと持参するそう。忙しい人ほど、生活の基本にこだわってきちんとするという贅沢を知っている。


『西欧芸術論集成(下)』(著者:澁澤 龍彦)

2010-08-04 20:44:45 | 本と雑誌
澁澤龍彦 西欧芸術論集成 下 (河出文庫) 澁澤龍彦 西欧芸術論集成 下 (河出文庫)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2010-04-02

この本、タイトルから、一般的な美術史のおさらいと思ってはいけない。澁澤龍彦が個人的に偏愛する画家とその作品を、それこそなめるようにしかも芸術的なタッチで激賞している、とても優雅にかたよった評論なのである(笑)。わたくしは大好き。サルトルもバタイユも同じくらい好きだもの、これを堪能する喜びったらない。


この前、ようやくオルセー展に行けて、1点だけ来ていたモローの絵の前で釘付けになっていた(だって精密なディテールのせいか、見ていると引き込まれそうな美しい幽い世界なのである)。何度も見たくて、出口近くのアンリ・ルソーの2作品との間を、人の流れにさからって行ったり来たりしてしまった。(この人の絵も好きだ。想像の豊かな色彩と構図の世界、これでプリミティブな画家というのはどうなのかなと思う)


ところで文章だけでは十分に理解できないので、取り上げられた作品をiPhoneで検索して見つつ読んだ。こんなところにもモバイルインターネットの素晴らしさを発見(笑)