WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『青年』(著者:森 鴎外)

2012-06-24 19:42:55 | 本と雑誌
青年 (新潮文庫) 青年 (新潮文庫)
価格:¥ 460(税込)
発売日:1948-12

頼まれる仕事を断らないどころか、これは成功させなきゃ、という重要な案件はむしろ何をおいても引き受けてしまう損な?性格ゆえ、急いで〇分後までに〇〇をやらなければならない、失敗できない、人が失敗したらリカバリしなくてはいけない、という日々が続いて半年、さすがにすっかりエネルギーを消耗してしまったよう。


小さい子供のころは体が弱くて、風邪をひくと、なかなか熱が下がらずに1週間、学校を休むのが常だった。熱が高く関節の痛みや頭痛を我慢して和室の布団に寝ていると、天井の木目が虹色になって踊り出し、大きくなったり小さくなったり、万華鏡みたいできれいだなあとぼんやり見ていたことを思い出す。


熱が引くのはだいたい5~6日目、やわらかめに炊いてもらったご飯を食べられるようになって、布団の上での時間を限った読書を許されると、いつも森鴎外の「青年」と「雁」の入った一冊を読みたくなった。「雁」なんて明治時代の高利貸の外妾さんの話だけれど、冬の乾いてピーンと冴えた空気のような、でもころあいのよい知的な雰囲気が、やっと回復しつつある爽快な気持ちとぴったり合っていたのだと思う。


そのころは難しかったが、「青年」は今読んでみるととても素敵。高橋義孝氏の昭和43年に評した解説「現代作家とは決して比較できないほどの学殖の持ち主が、豊富で正確な語彙と綿密な計算を積み重ねて綴った文章」がほんとにそう。


『大地(1)(2)』(著者:パール・バック 訳:新居 格)

2012-06-16 18:16:44 | 本と雑誌
大地 (1) (新潮文庫) 大地 (1) (新潮文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:1953-12
大地 (2) (新潮文庫) 大地 (2) (新潮文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:1954-03

私が小学校のころ、父がそう難しくない文学シリーズ2種類を月に二冊ずつ買ってくれるのが楽しみだった。5歳年の離れた兄には、原作そのものかしっかりした訳書。どちらも3~4センチくらいの厚みで読みごたえがあり、私は自分のぶんを読んでしまうと、兄のほうを借りて読む。兄は本が嫌いだったから、私は好きなだけ独占して読むことができる。その中にパール・バックの「大地」があった。


それは「1」のみで、後書きに、「大地」には続編があり読者はそちらも機会があれば読んで欲しいと書いてあって、近代中国の農村で土に生きる王龍の一生にすっかり魅了されて繰り返し読んだ私には、是非読んでみたかったもの。それから年は流れ、念願の続編を読むことができた。文庫で4冊。「1」の王龍の物語に、小さいころの私、人間死ぬ気で一生懸命やれば何でもできるものだと大きな感銘を受けたが、「2」以降の王龍の子供だちの話も、人というものの不思議さ哀しさが諸所に感じられて素晴らしい。