WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『Never let me go』(著者:カズオ・イシグロ)

2014-01-01 12:26:18 | 本と雑誌
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2008-08-22


ああー、やっと厄年が終わった!昨年はいろんなことがありすぎて、精神的にも体力的にもなんとか乗り切った感。後厄の最後を飾ったのはいつまでも止まらない激しい咳で、週末で回復してはウィークデイにまたひどくなるという反復を繰り返し、年末の最終週、しぶしぶ耳鼻科に行った。白血球の数値が正常値の1/10以下、肺炎になりかかっているということで、採血結果を見た先生からこってりお説教。



体調はよかったから自分では分からなかった。嫌いな薬をたくさん出されて、ジョギング、辛いもの、お風呂、お酒は厳禁。それどころか外出も禁止。でも、大人になると、常識の範囲内で怒られたり行動を制限される機会がなかなかないから、意外に新鮮だったりする。文字通り引きこもって久しぶりにゆっくりした休暇。



日本生まれの英国作家、カズオ・イシグロを読むのは「Nocturnes」「浮世の画家」に続いて3冊目。解説で柴田元幸氏が絶賛している通り、最高傑作だと思う。冒頭、子どもたちがいるのは裕福な孤児院?と思わせる舞台設定で、徐々に残酷な真実が明かされていく。遺伝子工学と倫理学とのせめぎあい、クローン人間に魂はあるのかという問いに、提示されているのはとても美しく切ない答え。愛、嫉妬、羨望、思い出、未来への意思、後悔。自らの感情と、他者とのかかわりの中で、考えて選んだ行動をとること。そこに悼みや追憶のあることが、人を動物やロボットと分ける一線なのだろう。素晴らしい作品。