WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『忙しい日でも、おなかは空く。』(著者:平松 洋子)

2016-04-24 16:34:01 | 本と雑誌

水曜の夜、二日酔いになるとわかっていたので、先週末にあらかじめ酔い覚ましのスープを作り置き。鶏肉のささみをさっとゆでるだけで、美味しいだしになるなんて、この本で初めて知った。ゆでたあとのささみは、身をさいて、きゅうりと生姜の千切りと合わせて、マヨネーズ+おしょうゆ+黒胡椒で味をつけ、ちょっと変わったバンバンジーに。ささみを出したあとのゆで汁が、ほんとにちゃんとした味の出しになってて、びっくり。

「サンドウィッチは銀座で」「ステーキを下町で」の2冊ですっかりファンになってしまい、3冊目。前2冊は、出てくるお店があまりに素敵で、都内は何軒かにわざわざ行ってしまった。次に狙っているのは、北海道は十勝の「ぱんちょう」と、京都のうどん。葛のかかったあったかいうどん、冬場キンキンに寒いときに食べに行ったら最高だろうな。

アルコールが残ってつらくても、飲んだらきっと元気になりそう・・と思って作っておいたスープだが、あまり食べずにワインとハイボールをちゃんぽんにしたから良くなかったのか、翌日はここ近年にないひどい後遺症。朝は水すら受け付けず、頭痛と吐き気に這うようにして出社し、夜は仕事が終わって家にたどり着いたのが11時過ぎ。結局せっかくの美味しいささみ出しスープはまだ冷蔵庫に眠っている。


『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(著者:塩野 七生)

2016-04-23 17:33:52 | 本と雑誌

チェーザレ・ボルジアといえば、政敵を次々に毒殺し、実の妹を弟と奪い合い、さらにその弟を殺してしまい、ほかにも数々の悪業と放蕩の限りを尽くしたイタリアの貴族。という印象だったが、これを読んで180度変わった。塩野七生さんの描く彼は、めっちゃめちゃカッコいい。

まず美貌ですらりとした長身。ある夜のパーティ、室内競技でいちばん速く走った女性とベッドを共にすると宣言した途端、50人もの女性が彼をめがけて全力疾走し たという。さらにイタリア半島で最強の武将。終身高給が保証された枢機卿のポジションを捨てて、多くの都市国家が乱立するイタリアをまとめるという野望をもっ て、父ローマ法王のもと教会軍総司令官の地位につく。隣の強国フランスやスペインとも対等に渡り合う高度な政治力をもった智将であり、国内の豪族たちとの闘いでは、連戦連勝。

15世紀のイタリアには薬学上まだ人を殺せるような効果的な毒は存在せず、塩野七生さんは、ボルジアの毒とはチェーザレと、父の法王アレッサンドロ6世の2人の鋭い頭脳ではなかったかと論じる。まるで映画みたいな、ドラマティックで華麗な人生を駆け抜け、そして最後の悲劇的な死。惨殺されたときこの卓越したビジョンをもった政治家はまだ31歳。感情移入しすぎて、読み終わったときにちょっと泣いてしまった。文句なしの傑作である。


『サービスの達人たち』(著者:野地 秩嘉)

2016-04-10 15:28:30 | 本と雑誌

20代で初めてパリに行ったとき、決して安くないホテルで、部屋のトイレの電球が切れていて、フロントに電話した。「わかりました。取り替えます」との返事があってから、1時間たち2時間たっても、交換するスタッフはあらわれない。夕食に出かけるついでにカウンターに立ち寄って再度お願いし、結局、交換されたのは翌日のルームクリーニングのあと。電車の時間やタクシーの運転といい、レストランの対応といい、何かにつけ日本のサービスのクオリティの高さを思い知った。

しかし、この本に登場する人々は、日本の標準をはるがに凌駕する。ボンゴレとペンネ・アラビアータをそれぞれ注文した2人の客に、料理を運んでいって「ボンゴレはどちらのお客様ですか」と聞いたらそれはもうミスという神ウェイター。自分の勤務するビジネスホテルで清掃後の客室に髪の毛1本でも落ちていたら、、契約した清掃業者のオフィスまで行って徹底的に理由を詰めるホテルマン。本になるからには一般のレベルではないと思ったが、凄すぎる。

幸運なことに、職場でクオリティの高さを求める人と一緒に仕事をする環境に恵まれ、徐々に良い仕事とは何かの引き出しを増やすことができてきたが、精度の高さは、想像力をいかに持つかということ。目の前にその仕事がないときでも、考えている時間の長さと濃さが、最終的に質を決める。最初からうまくいく場合はない。人のやり方もみて、自分の経験を考えなおして、全力でやって、ピントがずれたら、すばやく軌道修正する。この本のサービスマン達は、寝ている時間以外、自分の受け持つ領域を徹底して考え抜いている。とても素晴らしく、思わずこのシリーズ大人買いしてしまった。


『and I Love Her』(著者:片岡 義男)

2016-04-09 16:36:11 | 本と雑誌

片岡義男の作品と初めて出会ったのは、たしか大学生のとき。待ち合わせに時間をつぶすために入った大学の図書館で、ずらりと角川文庫のバックナンバーが並んでいて、表紙がきれいだったので一冊を選び、ソファに座ってパラパラとページをめくり、そして、完全にノックアウトされてしまった。独特のちょっと冷たい静謐さと、出てくる人やらインテリアやら風景やらの、完璧なスタイリッシュさ。

特にこの本が大好きで、ライフスタイルの理想だった。著者の創作だと思うけれど(女性がベランダで長時間、月光浴してたら絶対に風邪ひくし、真夏にオープンカーで灼熱の道路をはしってたら肌が荒れるし、平均年収の9倍ってどんな職業だ・・・)、とにかくクールで美しく、完全に自立していて、素敵なのである。

それから長い時間がたち、また読みたくなって買おうとしたら、印刷された本はすでに中古しかなくなっていた。私は紙の本の読みざわりというか、目をあてたときの文字と行間の雰囲気をこよなく愛しているので、電子書籍は一生、縁がないものと思っていたが、これを機にKindleを購入。意外に読みやすく、軽く、便利。


『土佐堀川』(著者:古川 智映子)

2016-04-03 16:16:43 | 本と雑誌

春だ。日差しがくっきり強くなって、樹も花もはっとするくらいみずみずしく、何もないのに歌いだしたくなるくらい嬉しい。良いことが続きそうな気がする。自分の誕生日を過ぎるあたりから5月までは、一年中でいちばんいい季節。

早生まれはたいてい負けず嫌いなそうで、私は3月それも月末に近いので、小さい時は4月生まれの同級生に比べてほぼ1年ぶんの経験が足りないのが、何か損しているような気がしていた。だから勉強も何でも意地で頑張っているうちに、だんだん年を重ねて、同級生より1歳若いことが得な年齢になってきたけれども。意地と執念のレベルが違いすぎてとても比べられるものではないが、明治では一つ行動をおこすたびに周囲の偏見もやっかみも男性以上だったことを思うと、この人の、他人にも自分にも負けたくない半端なさはすさまじい。NHK朝ドラの原作、大阪の女性実業家・広岡浅子。

当時は死病だった肺結核を病みながら、嫁ぎ先の商売を一手に担い、売れるものは全部売って権利を得た炭鉱を事故を起こしつつもなんとか軌道にのせ、寄付集めに駆けずり回って日本初の女子大学を設立し、逆恨みで襲われて危篤寸前になったことがきっかけに生命保険会社を起業。禍福はあざなえる縄の如し、人間、本気でやろうと思えば何でもできるお手本な人生である。