WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『切りとれ、あの祈る手を』(著者:佐々木 中)

2012-05-12 17:47:36 | 本と雑誌
切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話 切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2010-10-21

土曜の朝、目が覚めたらサイドテーブルの時計は11時近く。珍しく寝過ごし、びっくりして起きた。


連休明け月曜日、打ち合わせも少なく穏やかに資料作成に没頭していたが、火曜日から立て込み始めて、あっという間に元の日常に戻ってしまった。説明する、説得する、人の相談を受ける、分析する、方向性をひとつにまとめて資料を作る、日中は会議やミーティングの合間にメールの返事をしてあっという間に夜が来るので、資料作成はそれから、しかし、夜はエネルギーが切れてきて、夕方からいくら糖分補給しても効率が悪い。早朝型に切り替えようかしらと思うけれど、結局夜も遅いので、労働時間が長くなるだけな気もする(笑)仕事もプライベートも充実しているからいいんだけれど。


特に現代の人の書いた評論は興味がなく、自分のチョイスでは絶対に手にとらなさそうな一冊、文学=革命というテーマで、おもしろくて日曜の夜に一気読み。読めば全ての人の、ものを考えて書くという行為に、きっといつも素晴らしい元気が出る。語り口も論旨と表現のうまさのバランスがとれていて、非常に気に入った。


『葬送(第二部上)』(著者:平野 啓一郎)

2012-05-07 21:42:15 | 本と雑誌
葬送〈第2部(上)〉 (新潮文庫) 葬送〈第2部(上)〉 (新潮文庫)
価格:¥ 660(税込)
発売日:2005-07-29

全11巻ある「失われた時を求めて」を終えてからにすれば良いのに、アンナ・カレーニナ、ボーヴォワールの自伝、そしてこの「葬送」と、長編に手を出してはてしなく地道に読んでいる。それに荷風、漱石を全作、終わったら三島由紀夫をじっくり再読したいなぁ。夢ふくらむ。


今日は8小節分を初見で弾けて、先生に褒められた。嬉しい。何かの本に、運動でも絵画でも音楽でも何でも、1回できれば永遠にできる、1回できるまで繰り返し繰り返しやるのが練習とあった。英語でもこれを riding a bicycle という(忘れたと思っても意外に乗れるのが自転車)。でも1回できたら終わりではなく、運指もタッチも音の強弱も完璧というものはなく、次さらに良くなるように積み重ねるのが醍醐味なのだ。


この本は、ショパンの音楽よりもむしろ、ドラクロワの絵画論の構成が緻密でリアリティ高く、「ダンテとウェルギリウス」「キオス島の虐殺」「オフィーリアの死」「民衆を率いる自由の女神」・・・主要作品とその分析も別に読んでみたくなる。こう寄り道するからなかなか終わらないのだけれども。


『トゥルー・ストーリーズ』(著者:ポール・オースター 訳:柴田 元幸)

2012-05-06 14:12:53 | 本と雑誌
トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫) トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2007-12

読書、音楽を聴くこと、絵を見ることを、普通にしたいなと思う気持ちが戻ってきて、やっと正常になってきた感じ。連休最後の朝はよく晴れて爽快。大型レコード店に出かけてCDを買う。いくら忙しくても、仕事をしてたまに知人と食事してまた仕事をして、という味気ない生活はもうやめよう(笑)


またまたオースターを読んでしまった。この何ともいえず乾いた感じが好きなのよね。トルストイ、村上春樹と同じで、定期的にむしょうに読みたくなる。


曽祖父が亡くなったときに、200キロ離れた家屋敷の鴨居にかかっていた額縁がバタリと外れて下に落ちたとか、大事にしていたスワロフスキーの小さな白鳥をなくして、あらゆるところを探したのに見つからず、何年もたってから全く予想外の場所から出てきたとか。身の回りの不思議な出来事、偶然のすごい一致、通常ではありえない邂逅、などもポール・オースターの人生の場合はダイナミックすぎて、そのあたりの小説なんかよりもずっと巧み。


『精神分析学入門』(著者:フロイト 訳:懸田 克躬)

2012-05-05 18:59:08 | 本と雑誌
精神分析学入門 (中公文庫) 精神分析学入門 (中公文庫)
価格:¥ 1,200(税込)
発売日:1973-11

1年分の寝だめをしているくらい、このゴールデンウィークに入ってずっと連日ぐっすり10時間以上眠ってまだなお眠く、今しがたもソファで本を読みながらウトウト。ずいぶん疲れていたんだなぁ。ストレスは感じないたちなのだけれども、体はだいぶ参っていたのか、季節の変わり目に唇が皮膚炎で炎症をおこし、左脚に蕁麻疹があらわれ、首の皮膚にかぶれが出た。


フロイトいわく、日中に心身ともに受けたダメージは、人間が夜眠るのに障害となるくらい重く、それが夢を見ることで緒神経を麻痺させて健やかな睡眠を守っているのだそう。昼のなごりが、無意識の領域にしまいこまれた幼年期の記憶と結びついて色々な視覚を結び、重要でないものをふるい落として忘れさせ、ストレスを発散させている。確かに私もここ数年、毎日夢を見るおかげで、日中ポジティブに集中でき神経を病むこともないもの。偉大だ。


読みやすいが一つひとつのことばのあらわすものが抽象的で難しく、前意識、リビドー、自我、ノイローゼ、感情転移、と相互関係を図に描きながら読んだ。それまで精神病棟の檻の中に閉じ込めることで社会が抹殺してきた大きな現代病の一つを、患者との対話を繰り返すことで原因を突き止めそれを一対一の関係で乗り越えさせるという、実に手間のかかるそして誠実この上ない分析という療法が編み出されてまだ100年たらずなんだ。当時は不遇のフロイトに対し相当な批判がたくさんあったことが文中からもうかがえる。おもしろかった、他の著作も読んでみよう。