WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『異邦人』(著者:アルベール・カミュ 訳:窪田 啓作)

2011-08-27 15:26:17 | 本と雑誌
異邦人 (新潮文庫) 異邦人 (新潮文庫)
価格:¥ 420(税込)
発売日:1954-09

節電でドレスコードが緩和されたおかげで、ジーンズとTシャツで通勤できるのが嬉しい。ずっとカジュアルな格好をしていたので、昨日久しぶりにワンピースを着たら、今日はデートですかと声をかけられた。いえいえ、残業で終わったら家に直行します(笑)今週は病院で1週間ぶんの喘息の薬を渡されてしまい、気管支炎が治るまでお酒も量を控えなきゃ。


書店でぶらぶら本を選んでいたときに見つけてなつかしくなって手にとった。論理性のない行動をし普通の感情をもたない主人公を題して「異邦人」、1942年にガリマールから出版されたこの作品は、29歳のカミュをフランス文学界の寵児に押し上げた。


これを読むとパトリシア・ ハイスミスの「太陽がいっぱい」(アラン・ドロン主演の映画のほう)を思い出してしまう。激しい太陽の光と海と死をテーマにした作品は数あれど、あの映画もニーノ・ロータの音楽がとどろきわたるクライマックスが強烈。「異邦人」の絶頂は「誰もママンの死を泣く権利はない」の一文。パズルみたいにばらばらにされた風景や想像や生活や行動の美しいピースが、この一文でぴたりと全部はまって大きな絵になる。人間らしい感情があったという単純な説明になっていないところがすごい。


『楊家将(上)(下)』(著者:北方 謙三)

2011-08-21 19:20:52 | 本と雑誌
楊家将〈下〉 (PHP文庫) 楊家将〈下〉 (PHP文庫)
価格:¥ 650(税込)
発売日:2006-07-04
楊家将〈上〉 (PHP文庫) 楊家将〈上〉 (PHP文庫)
価格:¥ 680(税込)
発売日:2006-07-04

夕食後、キッチンの後片付けを終えてふと外を見たら、幻想的な空のいろ。雨がふる日は、一面にじんだような美しい青色の夕暮れになって、すっかり暗くなるまで見ていて飽きない。また涼しくなって、今日は10月の気温だそうだ。昨年の猛暑に比べるととても過ごしやすいのだけれど、今年の夏はずっと咳をしているうちに終わりそう。


週末には良くなるのに、ウィークデイにはまたぶり返す。声を出すし睡眠時間も短くなるから体力が落ちてくるのかな。この繰り返しでもう5週間も続くこの咳、のどの奥に、灰色の紗みたいなものがはりついているようで、風邪じゃなくて変な病気なんじゃないだろうか。と思うくらいしつこい。もうほんとに早く治って。


吉川英治文学賞のこの小説は中国で「三国志」「水滸伝」と同じくらい有名な物語。朝起きると今日は死ぬ、と覚悟を決めて一日を過ごす。壮烈な気迫みなぎる古代中国の武士道と、縦横無尽な軍略にいきいきと魅力的に描かれる楊一族。引き込まれて最後のクライマックスにはじーんとくる。


『アソシエイト(上)(下)』(著者:ジョン・グリシャム 訳:白石 朗)

2011-08-14 17:32:40 | 本と雑誌
アソシエイト〈下〉 (新潮文庫) アソシエイト〈下〉 (新潮文庫)
価格:¥ 700(税込)
発売日:2010-06-29
アソシエイト〈上〉 (新潮文庫) アソシエイト〈上〉 (新潮文庫)
価格:¥ 700(税込)
発売日:2010-06-29

20代前半のころ、お給料のほとんどを服やバッグ、アクセサリーにつかって、いつもクロゼットは満杯、旅行の帰りはかならず空港でお財布をからにしてメイク用品を買う、という消費王道を送っていた時期がある。飽きるまで2年ほど続いたけれど、その間はありとあらゆる雑誌を読んだ。きれいな色や素材の組み合わせを見たり考えたりするのが楽しくて、海外のエルやVOGUEなども取り寄せて読んだ。なにせ大学の卒論は、会計学科なのにファッションがテーマ。


たぶんその間に一生分の物欲が昇華しちゃったのか、飽きてみると今度はまったく関心がなくなり、服は季節ごとに必要なだけあれば足りるし、いいものを買えば何年もまったく型崩れしないし、人込みは疲れるから買い物を敬遠するようになり、マスカラや口紅のもちを友人に言ったら「ほんとに女子か」と怒られる始末。でも興味ないものは仕方ない(笑)


今や美容院など、時間のかかるところには文庫本を一冊もっていって、静かにページをめくる。手の届くところに積み上げてある雑誌にはもう興味がなくなってしまった。この本は、ネイルサロンで足の爪を塗ってもらっている間に気楽に読んだ。見えるところよりも、ランジェリーや足のお手入れ、読書、知的興味で、心が充実している今のほうが幸せ。歳とったのかな(笑)


『老妓抄』(著者:岡本 かの子)

2011-08-13 15:25:32 | 本と雑誌
老妓抄 (新潮文庫) 老妓抄 (新潮文庫)
価格:¥ 460(税込)
発売日:1950-04

岡本太郎氏のお母さんの作品は、一読すると生のままのウイスキーのような、男性的な力で一気に書き上げた雄渾な感じを受けるけれど、実は、すごく緻密に計算され尽している。こういうのはきっと、男性の作家にはできない(笑)体調が悪いときに読み始めたら、強烈な作風にあてられて酔ったようになり、これはまずいとすこし時間をおいて読んだ。


この本には9つの短編がおさめられていて、どれも名作。私はとくに「蔦の門」「鮨」「東海道五十三次」が好き。人間の煩悩(としかいいようがないもの)を妖しく美しい筆さばきで描きだし、ふわりと、渋く枯れたいろの風呂敷で包む。この味わいがたまらないのだ。


文章の達人はモチーフの選び方もうまくて、使い方が徹底して計算されている。子どもの生命力と老女との縁の象徴になる蔦、名家の母親の情愛のなりをそのままうつしとった透き通った白身魚の鮨、男女間のなんともいえない愛憎を連想させるどじょう汁・・・これがたとえば薔薇とか、野菜とか、親子丼とかでは決してこんな味はでないもの。読み終わるのが惜しい一冊だった。


『テンペスト(3)(4)』(著者:池上 永一)

2011-08-07 20:19:05 | 本と雑誌
テンペスト 第四巻 冬虹 (角川文庫) テンペスト 第四巻 冬虹 (角川文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2010-11-25
テンペスト 第三巻 秋雨 (角川文庫) テンペスト 第三巻 秋雨 (角川文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2010-10-23

首に小さな丸い瘤がふたつできて、触るとグリグリしていたのが、風邪が良くなってきたら消えた。リンパ管に大量のウイルスがたまっていたのだろうか。健康だと気づかないけれど、こんなとき体って精密な作りをしていると不思議に思う。


昨年は猛暑だったせいか、毎日ビールを飲んでいたせいか、夏の終わりにひどく肌が荒れた。化粧品会社に勤める友人に聞いたところ、肌の大敵は日光より乾きなんだそう。「陽射しは、日焼け止めを普通に使ってたらまったく問題なし。それより水分不足が諸悪の根源」ということで、指導されたのはローションの二度使い。朝も夜も、二回ずつたっぷりバシャバシャ使う。

さらに、通勤で汗をかくので毎朝ポカリスエットで水分を補給し、ビタミンCのサプリを欠かさず飲む。これで今のところ絶好調のぴかぴか肌が保たれていて、やっぱり体って不思議だ。もっと気を遣わないと。


4巻の最後に沖縄って歴史をもっているよなあ、と感慨しきり。琉球王朝という響きからしてもう、どことなく哀切な美しさを感じないだろうか。ジュリ(遊女)、グスクンチュ(城人)、ニンブチャー(念仏屋)、異国情緒漂う言葉もアクセントになっている。続きが気になって目が痛くなるくらいのスピードで読みました。おもしろかった。