WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『空海(1)~(4)』(著者:夢枕 獏)

2018-04-01 21:20:43 | 本と雑誌

若いころは会社で残業したあとにお酒を飲みに行ったり映画を観たりしていっこうに平気だったが、さすがにそんな体力のない今、プライベートで出かけるのは必ず週末になった。土曜日の朝、早起きして掃除にお洗濯に買い出しと家事をすませ、午後から出かけることが多い。あたたかくなった春の空気はなんだか特別で、そよ風吹く外を歩いているだけで気分が上がる。先週は鎌倉散歩から江の島のキャンティで海を見ながら誕生日ごはん、昨日は満開の桜をのんびり見たあとに浅草橋のフレンチへ。翌日曜日もジムから帰ったあと、自宅で料理をつくりながらついビールに手がのびてしまい、最近だいぶ飲みすぎである。

チェン・カイコー監督の作品は映像が美しくて大好き。全作ほとんど観ている。「空海」も公開を待ちかねるようにして土曜日に観に行った。2時間以上の長さで絵がすべて非の打ちどころのない美しさというのは全く天才というほかない。ストーリーは空海というより楊貴妃の話だねと、帰りのビストロでワインを飲みながらお互いの感想を話していたら、原作を読みたくなり、帰宅してけっこう遅い時間にもかかわらずダウンロード。これがまたおもしろく、4巻とかなり長いのをあいている時間をみつけながら夢中で読むことになってしまった。

原作は、入唐してたったの1年で宗教界の頂点に立つことになる空海の物語。密教を中心にした700年代の唐の絢爛たる宮廷、人の寿命をはるかに超えて生きる妖術師、女盛りで生きることを人為的に止められた楊貴妃、生と死をテーマに縦横無尽なエピソードをつむぐ言葉がとうとうとあふれ、止まらず、映像美におとらず深くうつくしい。あとがきまで来たら、著者ご自身が「すごいものを書いてしまった」と手放しで絶賛していてキュートだなぁと思わず噴き出した。あの美しい映画はこの原作あってこそ、たしかに素晴らしく傑作でした。