WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『わりなき恋』(著者:岸 恵子)

2013-06-30 16:38:58 | 本と雑誌
わりなき恋わりなき恋
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2013-03-23


今週はとても充実したいい一週間だった。土曜日の夜、帰宅してこのところ夢中になって聴いているCDをかけ、ゆったりと静かに読書。ロラン・バルト「恋愛のディスクール」の、涙がにじむように感動した文章”declaration”をあまりにも繰り返し読み返しすぎて、おぼえてしまいそうだ。ヤバイ、この世に戻ってこなきゃ(笑)



この本は、パリと横浜にそれぞれ自宅を持ち国際舞台で活躍する美女と、トヨタがモデルのグローバル大企業で副社長の地位にあるエグゼクティブとの恋愛を描いた、岸恵子さんの私小説。話題になった理由のひとつは、美女は独身70歳、男性は孫が生まれたばかりの60歳という設定のうえ、その年齢でねっとりと離れられない恋情を激しくはぐくんでいくなまなましさ。



淡泊でよく恋愛相手からなじられてきた私なんか、読んでて「うわわ」と息苦しくなるほどの濃密なラブストーリーだが、50代、60代が健康にまだ感性もおとろえない成熟社会ニッポンのこれから、こんなケースも増えていくのだろう。しかし人生の終わりに最高の恋をするなら、晩年の枯れたデュラスをジャンヌ・モローが演じた<Cet amour-la>を超えるものはないかも。オトナの理想である。





『統計学が最強の学問である』(著者:西内 啓)

2013-06-23 19:14:41 | 本と雑誌
統計学が最強の学問である統計学が最強の学問である
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2013-01-25


「統計学」はうちの会社で全社員必須のスキルに。データを漫然と見るのではなく、利益があがるか、実施が可能か、コスト>プロフィットにならないか、スキルを使ってどんなプロセスでどんな成果を出せるかが重要である。いいこと書いてあるなぁ。忙しさのピークだった1週間、前に買って少しページの残っていた本を読み終わる。



長く同じことを続けていると、過去に身に付けたストックだけで一定の成果が上がるので、やり方がわからない、手探りに新しい視点を探すということがなくなってくる。その割に仕事の全体量は多く、日々たえず時間におわれて、魅力的なものを考えたり最先端の情報を吸収したりする余裕もなくなる。いくら気をつけていても、効率的でない方法を無意識に避けてしまうようになり、それは、よりベターで鮮度の高い結果を生み出す原動力をそいでしまうこともある。



最近それが変わり、なんだか一気に活力がよみがえったようで、珍しくちょっとしたメンタル躁状態に突入。自分の世界が小さかったことに愕然とし、新しいニュースを探すようになり、新しいツールを試すようになり、いかにビジネスの基本スキームを理解できるか考えるようになった。視界があざやかな総天然色になって開けたみたい。嬉しくて、楽しい。





『武蔵野夫人』(著者:大岡 昇平)

2013-06-16 17:24:10 | 本と雑誌
武蔵野夫人 (新潮文庫)武蔵野夫人 (新潮文庫)
価格:¥ 420(税込)
発売日:1953-06-09


ラディゲ「ドルジェル伯爵の舞踏会」から引いた言葉が冠された大岡昇平氏の傑作のひとつ。感情のもつれからみあった人物の心理も、美しく枯れた武蔵野の風景描写も、ひとしく透徹したまなざしで言葉が掴まれ、一つずつ直截に並行に置かれる。時にはっとするほど大胆なものがたりの飛躍と、思わず笑ってしまう渋いユーモアの着地。いいなぁ。



今週もとにかく忙しく、日々遅くに帰宅して、神経をほぐすためにお酒を飲みながら少しずつ読んだ。金曜など会社を出たのが1時近く。12時間以上なにも食べていない空っぽのおなかと、酷使しすぎてキリキリ痛む肩をかかえ、深夜のコンビニでサンドイッチとスープを買ってとぼとぼ家に帰った。こうして書くと我ながらかわいそうだ(笑)



そうして疲れているわりには、休日になると体調を崩すということもなく、今朝は早起きして夏の定番、Wham!のCDをかけながら掃除と洗濯。クロゼットの中を整理して夏服に入れ替え、買い出しに出かけて冷蔵庫の中身を補充する。昨晩はワインとハイボールを自分の適量以上に飲んだのに、なぜか体がすっきりして、幸せな休日気分。暮れなずむ空に、気づいたらもう夏がきている。




『失われた時を求めて〈10〉 第五篇 Ⅱ』(著者:マルセル・プルースト 訳:鈴木 道彦)

2013-06-09 16:15:21 | 本と雑誌
失われた時を求めて 10 第五篇 囚われの女 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 10 第五篇 囚われの女 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
価格:¥ 950(税込)
発売日:2007-01-19



毎年梅雨入りの前に必ず食欲がなくなる、じっとりした季節をむかえて、少しやせた。春先にひたすら眠くなり、お肉ばっかり食べて食欲昂進する一時期は、これに備えて体が体力を落とさないためのベースをつくっているのか、毎日、冷酒または冷やした白ワインに、さっぱりしたお蕎麦やサラダが好もしくなる。体重が落ちたら髪の長いのが重たくなって、かかりつけの女性スタイリストさんに切ってもらったら、過去最高の出来なそう。すっきりしましたね、と言われたが、それはきっと、過労ダイエットも大きく影響してます(笑)。



私の読書は週に1冊のペースだから、こればっかり集中してひたすら読んでいれば3か月で読み終わるが、逆にそれでもたっぷり3か月はかかる、新訳で全13冊の長編。3年以上前から読んでいるのになかなか終わらない。しかし思いついたときに少しずつ読むせいか、それともプルーストの偉大さのせいか、不思議に途中で飽きるということがなく、読むたび、すてきに新鮮な舞台が立ち上がる。



とくにこの巻はプルースト最愛の恋人、アルフレッド・アゴスチネリとの思い出が濃縮された、全作通したクライマックスともいえる部分。土曜の午後、リビングのソファで半ばうとうとしながら最後のページまで読んでいたら、夢に出てきそうな・・・贅沢に美しいものであふれたパリの部屋に住まわせて、ひとりきりの外出もなかなか許さず、嫉妬していないときは退屈そのもの、嫉妬しているときは胸を裂かれるような苦痛そのものと描かれる、息苦しいほど濃い世界観。わたしこの巻がいちばん好きかも。




『絹の家』(著者:アンソニー・ホロヴィッツ 訳:駒月 雅子)

2013-06-02 10:48:04 | 本と雑誌
絹の家  シャーロック・ホームズ絹の家 シャーロック・ホームズ
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2013-04-27


いやー、ものすごくおもしろかった。コナン・ドイル財団が初めて公式認定した80年ぶりのシャーロック・ホームズ最新作。こどものころ小学校の図書館でシリーズ作品に読みふけって、どう考えてもわからない謎を快刀乱麻をたつように解決していくイギリス最高の探偵に、わくわくと心が躍る時間を過ごしたファンとしては、こんな本が出てくれてとてもうれしい。



ホームズの斜にかまえているせいでぜんぜんそうは見えないけれど、実は正義感と愛国心にあふれる性格とか、1800年代末ロンドンのいぶしたような魅力あふれる小道具とか、ホームズとワトソンの信頼関係のベースになっているお互いの価値観とか、ファンでないとわからない微妙なところが、原作とちゃんと同じなのがいい。このあたりも公式認定された大きな点であろう。



週の前半、午後オフにして終了まじかのラファエロ展を楽しんできた。ここまでは好調だったのに、週の後半にかけて風邪がぶりかえしてきたうえに仕事がたてこんで会社からの帰宅が遅くなり、金曜には体調が絶不調ピーク。しかし夕方から部署の幹部キックオフに出かけたら、気持ちがとても上向いて不思議に元気に。昨年の今ごろはアトピー激化で一人つらい季節を過ごしていたことを考えると、今年は自分の体力だけでなく周囲の目覚ましい頑張りにも滋養をもらっている気がする。