WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『赤い指』 (著者:東野 圭吾)

2010-10-24 20:30:27 | 本と雑誌
赤い指 (講談社文庫) 赤い指 (講談社文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2009-08-12

小さい頃「刑事コロンボ」が好きで、テレビの夜9時からの映画枠で放映されると、親に最後まで見てもいい?とねだって眠いのを我慢して見ていた。犯人は冒頭に示される。隠すほうと隠されたものを見つけていくほうの心理戦がドキドキするのだ。「容疑者Xの献身」で初めて東野圭吾を読んで再びそのおもしろさを思い出した。


兄の奥さんと会うたびに本や映画の話をするのだが、この前、東野圭吾は「赤い指」が一番いいと聞いたので、次に会って借りるまで待てずに、別途、人からお借りした。複雑な謎解きではないけれど、どこの家庭でも起こりえるような設定の巧みさと、ラストの切なさが胸をうつ。計算で割り切れない人の心の描写がほんとにうまい。


『失われた時を求めて〈3〉第二篇 花咲く乙女たちのかげに〈1〉』(著者:マルセル・プルースト 訳:鈴

2010-10-23 16:14:48 | 本と雑誌

失われた時を求めて 3 第二篇 花咲く乙女たちのかげに I (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 失われた時を求めて 3  (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
価格:¥ 1,100(税込)
発売日:2006-05-19

今年は、年初にたてた目標があって、ショパンをたくさん聴くこと、水彩画をひさしぶりに描くこと、それからプルーストを年に2冊。早くも2010年があと2ヶ月あまりになってきて、あわてて読み始めた。何冊も同時に並行する私には珍しく、あまりに素敵な3巻、読んでいる間は他の本を手にとる気にならずに一気読み。

語り手の少年時代の、熱に浮かされたような恋がテーマ。彼が憧憬と思慕を一途にささげる対象は、同年代の美しい少女、これがまたワガママで親に甘やかされていて、彼のことを何とも思っていない、絵に描いたようにかわいそうなパターン(笑)語り手は最後に、あまりにもつらくて会いに行くのをやめるのだが、それからも日夜悶々と考えてばかり、その自分の心のいたみをあらゆる角度から分析するところがまたプルーストらしいのである。

つまり考える対象は相手じゃなくて自分の心の動くさまなのだ。「失われた時」のタイトル自体、人との会話や社交生活で、最も貴重なひとりきりの思索や自分との孤独な対話がそれによって妨げられるから、という意味を持つ。この作品の、粘度の高い感性の態様を美しく洗練された表現でくるんでいるところが好き。


『プライド』 (著者:真山 仁)

2010-10-16 20:04:48 | 本と雑誌
プライド プライド
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2010-03

もう10月も半ばというのに暑い。昨日は天気予報で「プラスもう1枚」と言っていたので、革のジャケットを持っていったら、からだの体温調節機能がうまくないのもあって、朝の通勤電車でキャミソールが濡れるくらいの暑さ。今年はいったいどうしちゃったんだろう。


それでも、冷たいビールよりワインがおいしい季節になってきた。ビールの苦さがずっと苦手だったのに、今年の夏はそれがとても好きになって、さらに、ワインは絶対に白しか飲まなかったのが、なんだか赤ワインがおいしい。濃厚で、色が鮮やかで、フルーティ。暑かったせいか、それとも体質が変わったのかしら。


音量をしぼってピアノ曲を聴きながら、ワイン片手に読書していると、ウィークデイの慌しさで疲れた気持ちがいやされる。この本はプレゼントしていただいた。ホークスも勝って、ご機嫌な夜。


『死にいたる病』(著者:セーレン・キルケゴール 訳:桝田 啓三郎)

2010-10-11 21:01:26 | 本と雑誌
死にいたる病 (ちくま学芸文庫) 死にいたる病 (ちくま学芸文庫)
価格:¥ 1,313(税込)
発売日:1996-06

冒頭の、自己の関係性のところでつまづいて、だいぶ長く本棚に眠っていたが、あらためて読み出したら、とまらなくなった。最初の扉「死にいたる病とは絶望のことである」からして目がさめるほど詩的ではないか。奈良ホテルでしんと更けた夜に読み進めたときのなんて甘美だったことか。


1849年当時、デンマークの思想家キルケゴールが、自分でも本名では出版をためらうほどの衝撃作だった名著。タイトルの、死にいたるとは肉体の死ではなく、絶望すなわち信仰による救い、覚醒のない状態が続くこと。すべての人間はあらゆる形態の絶望の中にいる、とキルケゴールは、ヘーゲル哲学、当時の教会組織についての批判などを組み込んで、信仰と自己の精神のありようについて綿密に定義していく。詩人の表現と哲学者の目でもって。


サルトルも小説は好きなのだが実存主義の著作のほうはさっぱりで、こんなにおもしろいとは知らなかった。大学で木田哲学をとったときにこのあたり読んでいなかったのが悔やまれる。


『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』(著者:カーマイン・ガロ)

2010-10-09 16:30:20 | 本と雑誌

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則 スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2010-07-15

スライドに全部書いてしまう、聞いている人の前でスライドを読んでしまう、緊張のあまりうまく伝えられない・・・日本人はプレゼン下手が多いといわれているけれど、この本を読めばきっと、相当変わる。そうそう、たしかに多くのプレゼンターの作るパワーポイントはプレゼンテーションじゃなくて「文書」なのである。


聞いている相手の集中力が続くのは10分。なのに1枚にぎっちり情報を詰め込んだパワポを何十枚も説明してしまう人のなんと多いことか(笑)


うまいプレゼンターは、スライドも説明もメリハリをつける。10分しゃべったら質問を投げかけたり、映像を見せてコメントを求めたり。こちらの回答に「そうですよねー、だからこういう点が必要なんじゃないかと」と提案にリンケージさせてまた説明を続ける。それなりの準備時間は必要だが、天才スティーブ・ジョブズだってものすごい時間と手間をかけて準備しているのだ、要はオーディエンスに対する真剣さがどれだけあるかということ。