WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『ソフトバンク 新30年ビジョン』(著者:ソフトバンク 新30年ビジョン制作委員会)

2010-11-30 21:39:50 | 本と雑誌
ソフトバンク 新30年ビジョン ソフトバンク 新30年ビジョン
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2010-12-02

この出版案件は7月からスタート、ブランディングの面からも重要だし、本好きとしてはお手伝いしなきゃ、と思ったのだが、それからの何ヶ月か、書籍作りは相当ハード・・と身をもって知ることになる。


構成、原稿、カバーデザイン、紙や文字の種類、部数決め、宣伝。一冊の本が世に出るまで多くのプロセスがあり、その一つひとつが大事、それはどんな分野の仕事でももちろん同じなのだが、読んでくださる人の手元に届いたものは決して変えられないというのはまた大きなプレッシャーで、出版社の方は大変だなぁとほんとに思う。


校正のため何度も何度も全文に目を通したけれど、それでも終盤に、おそろしく完成度の高い原稿を読んだとき、文章の持つ力、その大きさというものを改めて思った。発表会で、その後インターネットで、何度も聴いたスピーチが、また違った迫力で胸に迫ってくる。あの言葉にはこういう事実の裏づけがあったのだとわかる。エンディングは、深夜に読んでいたこともあって机でおもわず涙が出てしまった。ソフトバンクに興味のある方にはぜひ手にとっていただきたい一冊。


『Nocturnes』(written by Kazuo Ishiguro)

2010-11-27 19:23:22 | 本と雑誌
Nocturnes Nocturnes
価格:¥ 1,377(税込)
発売日:2009-05-07

I couldn't concentrate on my reading in English this summer. But autumn has come! His books are suitable for late autumn 'cause his heart is full of jazz music. Contrary to this, the scerario changes too quickly and focused on only an unexpected result, you can't feel sympathy to character's personalty. He spoke it's necessary to make a special and closed world in the novel. It makes a wonderful dofference from ordinary world view. His style is fine and easy to understand, I feel sorrow and joy of life. It has a romantic and somehow lonely reverberation after reading.


『悲しき熱帯Ⅱ』(著者:クロード・レヴィ=ストロース 訳:川田 順造)

2010-11-21 15:40:36 | 本と雑誌
悲しき熱帯〈2〉 (中公クラシックス) 悲しき熱帯〈2〉 (中公クラシックス)
価格:¥ 1,628(税込)
発売日:2001-05

「悲しき」とは未開の民族の貧困についてと思っていたのに、これがどうして、幾つもの意味を持ったことと下巻ではじめて気がつく。

まず悲しいのは、物質的な快適さと、親密な家族関係に満ち足りたインディオたちの、急激に滅びゆく運命について。(快適さについて言えば、蜥蜴を食べて土の上で眠るなんて、私たちの目から見れば違うかもしれないが、それはこちら側の生活からの視点であって、彼らの社会では完全に充足したライフスタイルなのである)
それにその原因が、土足で上がりこんできた先進社会のもたらした疫病や風習であること。


そして未開と文明化の両方の側面を深く知りつつ、どちらにも拠りどころを持てない民族学者の悲哀について。レヴィ=ストロースがブラジルでの不毛な旅の途中、ずっと心に繰り返し思っていたのは、自分が捨ててきたはずの西洋文明の1つの精華、ショパンのピアノの旋律だったという、やるせない二律背反。


福岡への出張のフライト中に読もうと持って行って、豊かな語彙、心をとらえるエピソードに夢中になった。訳もすばらしい(が、この翻訳はおそろしく大変だったと思う)。


『Kindleショック』(著者:境 真良)

2010-11-20 18:55:41 | 本と雑誌
Kindleショック インタークラウド時代の夜明け (ソフトバンク新書) Kindleショック インタークラウド時代の夜明け (ソフトバンク新書)
価格:¥ 767(税込)
発売日:2010-05-19

うちはアカデミアが有名になってしまったが、全社員向けの体系的な教育プログラムも別にあって、名称をソフトバンク・ユニバーシティという。


インターネットカンパニーで5000社のグループを目指すということは、5000人のWEBマスターがいるということ。それもWEBのオモテ側ではなく、バックボーンの技術、ビジネスデザイン、効果的なプロモーションに精通している人材が。去年から、そういう人材を輩出するためには何が必要かということを考えていて、それがきっかけでテクノロジー関連の研修をお手伝いしている。


今週はそのユニバーシティで電子書籍の講演。予定していた研修チームとの打ち上げが延期になったのだが、せっかくのボジョレー解禁日だし、講演が終わった後で編集者の織茂さんと一緒に、大人4人で軽く飲みに行く。今年のボジョレーはさっぱりした甘みがあっておいしい。


境さんは頭が良すぎて話の展開が速く、2時間の論題、ちょっと心配していたが、それを言ったらご本人、「話がとぶんですよ」とうなずかれた。なんとご自分でプログラムソースもバリバリ記述する(しかもくわしい・・)という、およそ官僚のイメージとかけ離れた方。デジタルコンテンツと出版ビジネス、両方に精通されていてテーマが深く広く、とてもおもしろい。


『草枕』(著者:夏目 漱石)

2010-11-14 20:04:23 | 本と雑誌
草枕 (新潮文庫) 草枕 (新潮文庫)
価格:¥ 420(税込)
発売日:2005-09

国語や漢字のテストは満点が当たり前、読書感想文を書けば入賞、何時間でも飽きず本を読みふけっているという子どもだったので、歴代の国語の先生にはよく可愛がられた。自宅に招かれたり、放課後の図書室で推薦本を選んでくれたり、運動会や写生大会など学校のイベントでは、お昼の後の休み時間にたいてい呼ばれて色々な話をしたり。うーん、今思い出すとなつかしい。


そして国語の先生というのはたいてい夏目漱石が好きで、その影響か10代の終わりには全集を貸してもらったりしてほとんど読んだ。「草枕」を初めて読んだのはたしか中学校にあがってすぐの頃。「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」の冒頭が有名だが、最後に、温泉場の令嬢・那美さんが思いがけぬ見送りに逢って、とっさに浮かぶ表情を描く、締めくくりのシーンが完璧。いや、十三ある章立ても人物も、言葉のひとつひとつも完璧だ。


夏目漱石が100年たった今でも古くならないのは、極度のノイローゼで英国留学を中断し、生涯を重い胃潰瘍で苦しんだ、という神経質で有名な文豪の姿と、それに比して作品の澄明で簡素に美しくて余韻の残る筆致との乖離が、ひどく魅力的だからだろうか。通勤の電車で読みながら心が洗われた。くせになりそう。