WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『ガダラの豚(1)~(3)』(著者:中島 らも)

2016-09-01 19:59:40 | 本と雑誌

夜、スタミナが切れてきたころに大量のデータを見る必要があり、糖分を求めてお土産にもらったアメリカのチョコレートを食べてみたら、これがめちゃめちゃおいしかった。濃厚なひとかけらが甘く喉をすべっていった瞬間、急激に疲れがとれて集中力が復活。すごい。「ダーク・タワー」で最後のガンスリンガー、ローランドが現代にトリップして銃撃戦のあとで瓶詰のコカ・コーラを飲んだときみたい。私、普段ほとんど甘いものを食べないので、よけいに効くのだろう。おかげで無事にひとつ入稿が終わって、ほっと一息。

15年くらい前に「人体模型の夜」を読んだとき、こんなにおもしろいショートストーリーを12話も詰め込んで完璧な構成にする鬼才っぷりに瞠目したが、こちらも鮮烈なイマジネーションが大きな花火みたいに炸裂する。蒼い空と悠久のサヴァンナがどこまでも続くアフリカ。日本から、8年前にアフリカの気球事故で小さい娘を失った大学教授の一家と、テレビ局のクルーが呪術師の村を撮影に訪れる。呪術という人知を超える力は存在するのか、それとも仕掛けのあるトリックか。どっち、どっちと読者を否定と肯定の間に歩かせる絶妙なバランスにハマッて、読みやめることができない。

後半、ジワジワと迫る強大な呪術師の呪いに、バタバタと死んでいく登場人物たち。テレビという巨大な拡散器の怖さ。一気に3冊疾走して、予想外のラストにがくっと脱力。中島らも、やっぱりすごい。