歴史の使い方 (日経ビジネス人文庫 グリーン さ 3-6) 価格:¥ 750(税込) 発売日:2010-01-06 |
人の生きた時間が長く積み重なると、「歴史」として学ぶに足る貴重な価値を持つ、というのはすごいこと。
小学校にあがる前、兄が図書館で借りてきた子ども向けの歴史の本に心を奪われた。シュリーマンのトロイ発掘についての本。古代都市が何千年もたってから精巧な姿をあらわすなんて、誰もが創作と思っていたトロイア戦争が実際にあった話なんて、なんて壮大なんだろう。何度も繰り返して読み、その後も頼んで借りてきてもらった。小学校に入ってから、これであの本が好きなときに読めると思って嬉しかったことをおぼえている。
古い遺跡を見て、何十世代もの前の人が、その足で踏みその指で触れていたと思うと、なんだか身震いするような感じがしないだろうか。地球上で私たちの呼吸する大気の質ですら、その当時とはすでに違うというのに。その時代の人たちが何を思っていたのか知りたいと思う。
ピラミッドが建造されたのは、プラトンの時代から2200年も前で、エジプト古王朝には奴隷という身分階級はなく、大勢の市民がボランティアとして自発的に参加した。ピラミッド作りは奴隷の血と涙のしみこんだ陰惨な苦役の成果ではなくて、れっきとしたシステマチックな社会公共事業だったのだ。こんなことがわかるのもおもしろい。