六本指のゴルトベルク (中公文庫) 価格:¥ 740(税込) 発売日:2012-08-23 |
鍵盤に触れる指の力を強くするために、ピアノの先生から教わったエクササイズ。机でもなんでも、硬いものの上で指先をたて、関節を曲げて、その支点だけで1分間、腕全体を支える。他の指や肩の力はいれてはいけない。これを指ぜんぶで繰り返す。青柳いづみこさんが書いている中で見つけたそう。
簡単そうだが実際には意外にハードで、最初のころは上腕が筋肉痛になるほど。私はバスタイムに、浴槽に大理石をはってあるので、そのふちを使って練習しているけれど、先生は空いた時間さえあれば場所を選ばず何回も何回も繰り返している。「だって少しでもいい音を出したいじゃない?」凄いです、先生。たしかにこの効果たるや絶大で、音の一つひとつが力強く、はっきり際立ってくる。
それで1冊読んでみた。音楽に造詣の深いミステリーや評伝が30話、すごい読書家である。中でも好きなのは、演奏家が、聴衆との対話で自分の中にあるいちばんいいものを解き放つ場というコンサートの定義。いいなぁ、私もショパンやベートーヴェンやグールドが人前で弾いていた時代に生まれたかった。いや、この人や辻井くんやアルゲリッチの演奏を聴けるのだから幸運なのか。中で紹介される本を次々に手にとってみたくなる、いいエッセイ。