WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『吹いていく風のバラッド』(著者:片岡 義男)

2016-11-26 16:23:39 | 本と雑誌

23日の祝日は再びの撮影でスタジオへ。今回は午後だけだったので、終わってから井の頭線で渋谷に出て、約束していた友人と食事をする。嬉しいことに、ちょっと早めのクリスマスプレゼントを頂いた。ジョー・マローンのコロンで、ポメグラネート・ノアールという香り。ここ10年以上、自分の肌に合っているものから変えたことがなかったが、つけてみるとこれが素晴らしい。甘いのにしつこくなく、少しエキゾチックで、とても気に入った。体を動かすと、ふわっと淡く余韻が残る。このブランドがブレイクしているのも頷ける。

香水を変えてみると、刺激でいつもより嗅覚が鋭くなったみたい。風邪をひいている間は、東京が嫌で、きれいな緑や海に囲まれた北海道か沖縄に早く逃げ出したいとばかり考えていたが、健康が戻ってみると、都会の空気も悪くない。雪が降る前の冷たくて凛とした香りや、混雑したお店から漂ってくるお醤油だしの混じった湯気、冬を迎える街路樹から伐り出されて道路に積もる葉の匂い。

空に吹き渡る風とコーヒーをテーマにしたこの本も、片岡義男氏らしい独特の雰囲気を存分に楽しめる。晴れの日、土砂降り、曇り空、バイク、ハワイの朝、学校をサボる繊細な少年など、さまざまな景色に気持ちのいい風が通り抜けていく瞬間を切り取った短編がぎっしり。この人の小説を読むと、いい大人なんだから時間の過ごし方に余裕を持たなきゃと、普段せわしない日々の自分に反省しきり。


『傷だらけのカミーユ』(著者:ピエール・ルメートル 訳:橘 明美)

2016-11-20 15:08:11 | 本と雑誌

治りかけるとまたぶり返して一か月以上も続いた夏風邪が、ステロイドをやめたら快方に向かってきた。ステロイドは数年前いきなりひどいアトピー性皮膚炎を発症して以来、定期的に使ってきたうえに、この夏沖縄で、ケールをいっぱい食べたら唇の上にやけどのような湿疹ができて、帰ってきて三か月ほど塗っていた。唇の上だから水とかを飲むとそのまま体内に入ることになる。あまりにも風邪が治らないので、耳鼻科の先生が睡眠時間は十分だし食欲もあるし、顔色だっていいのに・・・と不思議がって、「何か他の薬を併用しています?ステロイド剤とか」と聞かれて初めて、気が付いた。

風邪が治ったら、週末に外に出かけるのがおっくうでなくなり、ショッピングや家族との食事や、秋の高尾山でのハイキングを楽しむ。健康って素敵。中でもありがたいのが、夜、ソファに丸まってワインを飲みながら読書ができること。ここ最近のお気に入りは、ギッセル・ブレッシュトゥのピノグリ。だいぶ前だが、お店で飲んで、うっとりするようなその蜂蜜の香りに一目ぼれしてしまった。値段もテーブルワイン並で良心的。

同じ大好きなフランスもので、「その女アレックス」「悲しみのイレーヌ」に続く最終巻。前二作ではむしろ客観的な傍観者だったカミーユ警部は、今回は自分自身がどっぷり事件に浸かることになる。途中でふわりと風向きが変わり、状況が180度違った様相を見せ始める見事さはこの作品でも同じ。でも、最後のキリキリ突き刺さるような痛ましい孤独が、三部作の中でいちばん悲しい。