女のいない男たち 価格:¥ 1,700(税込) 発売日:2014-04-18 |
秋の週末に大好きな音楽を聴くことと、心ゆくまでの読書を楽しんでいる。居心地のいい部屋で静かに本を読むことが好きで、傍らにナッツとビールの入ったグラスがあればもう完全に村上春樹ワールドなのだけれど、この人の作り出す静謐で孤独な世界、志向に合っているのか高校生の頃から欠かさず愛読しているから成長プロセスに織り込まれてしまったのか、読んでいて「そうそう」とぴったりくる感じ。
清潔で秩序だった暮らしのなかに、冥くて恐ろしい口があいていて、自分の心の在りようが何かのひょうしに梃子となって、その深い穴にストンと落ちてしまう。村上作品に必ず共通して存在する、その穴が、いちばん具体的なのがハードボイルド・ワンダーランドで、メタファーなのがねじまき鳥クロニクルで、心理的な価値観の尺度になっているのがノルウェイの森。
私は女性なのでその気持ちが良く分からないが、女性の去っていったあとの「女のいない男たち」を描く9年ぶりの短編集はどの作品もその「穴感」が色濃く、中でも「木野」というバーで日々の糧を得る孤独な男が、得たいのしれないものに憑かれる話がもっとも象徴的である。孤独で、かわいていて、永遠に続きそうならせん状の救いのなさ。こわい、深い。