WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『袋小路の男』(著者:絲山 秋子)

2016-10-09 18:24:03 | 本と雑誌

3連休の初日は、商材ビデオの撮影で朝からつつじヶ丘のスタジオへ。今年は本当に雨が多く、着く頃にはけっこうな勢いの雨足が道を叩く。会社で蔓延している風邪は、高温多湿を好むウイルスらしく、いちど治ったのに天気が悪い日が続いてまた勢いを吹き返している。体調が悪いのは私だけでなく、スタジオ管理の女性も、さらに撮影に入っていただくモデルも2人ゴホゴホ咳き込んでいて、気の毒である。

現場でハプニングが多発して一日では終わらないかと思ったが、スタッフの皆さんの機転が素晴らしく、午後に晴れて射し込んできた日が暮れた頃になんとか収録が終わった。ほっとしてiPhoneで音楽を聴きながら帰途につく。若い頃はどんな音楽でも聴いたけれど、最近は好みがひどく偏り、オーケストラとピアノとヴァイオリン、オペラしか聴かない。あと、子どもの頃に兄が好んで自宅のプレイヤーにかけていたBeeGees。懐かしくて聴き始めたらハマってしまった。曲数が膨大だが2年かけてほぼ全部、聴き込んだのではないだろうか。ロビン・ギブの繊細で甘くて物想いにふけっているような声が好き。1989年の”One”のはにかんだ少年みたいな笑顔も、ライブ”One for Australia”での男前な歌いっぷりも好き。引退したら本でも書こうかと真剣に思っている。

そんなことを思いながら絲山秋子さんの「袋小路の男」を読んだら、なぜか非常に共感できた。作家を目指しながらいつまでも浮上できない男と、その男がとっても好きなのにいつまでも確固たる関係が築けない女。私、こういうズルズルした男が大嫌いで、普段なら「うわ」とページを閉じるのに、ちょっと太宰治の「斜陽」を連想させたりして、最後まで読みきってしまった。ロビン・ギブと全く関係ないけれど。ああ、晴れて空気が澄んできたら、急に元気が回復してきた。今年はこのままもう、澄明な冬になってほしい。


『村上海賊の娘(1)~(4)』(著者:和田 竜)

2016-10-02 18:28:59 | 本と雑誌

すぐ治ると思いきや、ふがいなくも3週間近くかかってしまった夏風邪。薬のせいか、治らないストレスのせいか、先週は夜、眠りに入る瞬間に手足がけいれんして目を覚ますジャーキングという入眠障害を初めて体験。意識がとろっとした途端にビクッとして飛び起きるのが一晩中ひっきりなしに続いて、まさに拷問である。体が眠りに入っているのに、脳が間違って動く指令を出してしまう現象らしい。眠れないのはさすがにこたえて、翌日は普段まったく飲まずに消費期限が切れていたドリエルを1錠放り込んでベッドに入ったが、ぴくりどころか全身が大きく震えて目を覚ます。何なのだ、これは。

「いいかげん眠らせて!」と全身全霊で思ったのが効いたのか、風邪の細菌とのシーソーゲームに体が打ち勝ったらしく、金曜あたりからみるみる体力が回復してきた。風邪薬をストップしたらジャーキングもぴたっと止まった。深い眠りと健康な食欲が復活。朝のジョギングで走ると全身の細胞がみずみずしく生き返って喜んでいるのがわかる。いい気分で、暮れなずむ秋の夕暮れに窓から入ってくるキンモクセイの甘い香りを楽しみながら読書。

大海原、戦、姫というキーワードで前に読んだ「姫神」と同じかと思ったが、ところが全く違った。戦国時代、籠城し餓死寸前の本願寺を海から支援しようとする毛利方と、封鎖を一歩も抜かせまいとする織田方が海戦でぶつかり合う勇壮な戦い。読みだしたら止まらない鮮やかな起承転結に、文章がいちいちおもしろくて、爆笑しつつ最終巻を読了。最高。