WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『論語と算盤』(渋沢栄一 訳:守屋 淳)

2011-11-26 15:44:59 | 本と雑誌
現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書) 現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2010-02-10

日本の資本主義の父、渋沢栄一の晩年の講義をもとにした現代語訳。尊皇攘夷の少年志士から、徳川慶喜に仕え、フランスへの渡航を経て明治政府の大蔵官僚として活躍し、33歳で退官して、92歳で亡くなるまで、産業界はこの人のもとで近代化を遂げた。東京電力、東京ガス、JR、王子製紙、サッポロビール、帝国ホテル、東京証券取引所・・・渋沢栄一が設立にかかわった会社の数、なんと470社。


今や世界のGDPの8.9%を占める国のビジネススキームを作り上げた途方もない巨人にいわゆる偉才の奇矯さはみじんもなく、誠実さを第一とし、良識を分かりやすく説き、その骨太な思考は揺るぎない巨木のよう。「我々は自国蔑視の風潮が強すぎる。いいかげん欧米心酔の夢から覚め、日本を誇る器量を持て」と高らかに言うくだり、講義を聞いていた人たちは満場、拍手喝采だっただろうなぁ(笑)今の日本にはしっかりした説教をしてくれる大人が減ってしまったけれど、こんなスケールの大きい先達が基礎を作ったと思うと、誇らしい気持ちがわいてくる。良書。


『浮世の画家』(著者:カズオ・イシグロ 訳:飛田 茂雄)

2011-11-24 16:49:07 | 本と雑誌
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)
価格:¥ 777(税込)
発売日:2006-11

大掃除のため1日オフにしたが、昨日から我ながら素晴らしいはかどりようで終了。クリーニング業者の人にも来てもらって、家具のすみずみ、建具の隙間、ドアの蝶番、棚は全部なかみを出して、「拭かないところはない」大掛かりな完璧主義(笑) 子どもの頃は、親に言われても掃除なんてしなかったのに、大人になって独立したとたん、変わった。不思議だ。お洗濯も好きだし、食洗機をあけてピカピカになった食器を見るとそれだけで上機嫌になる。


カズオ・イシグロはイギリスで非常に高い権威を持つブッカー賞を授与された、日本生まれの英国作家。読者に伝えたい核心を直截に書かず、せりふの言い回しや状況描写でじわじわ婉曲に綴っていくので、きっと翻訳者泣かせではなかろうか。私は最初に短編集「ノクターンズ」をオリジナルで読んで、その美しさにファンになった。これは飛田茂雄氏が和訳をつけたもの。太平洋戦争中に出征を鼓舞するための絵を多数描いた日本画壇の重鎮が、終戦を迎えて後、知人友人が離れてゆき、弟子もつかなくなり、・・・というあらすじ。画家の内省のタッチがとても素敵である。


さてせっかくの休日、これから書店で本を買って、カフェで読書タイムにしよう。いつもこの時間は仕事に集中しているので、こうしてゆっくりしているのがすごい贅沢だ。たまにはいいか。