WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『総理』(著者:山口 敬之)

2016-09-19 17:30:33 | 本と雑誌

初めての新潟に出張の機会があり、せっかくなので土日ステイして日本酒と海の幸を楽しもうと計画していたのに、風邪は治りかけが大事と諭され、無理しないで帰京することにした。東京は秋雨前線が停滞してねずみ色の空。細かい雨が糸を引きながら落ちてくるのを見ながら、食欲が復活し、眠りが深くなり、秋だなぁと感慨しきり。季節が変わるのって早い。

うちは代々、野球は巨人、自動車はトヨタ、選挙は自民という根っから保守党の家系。選挙のときはよっぽどのことがない限り自民党に入れるが、親戚中、とくに政治好きでなくとも安部さんの人気はとても高い。TPPとか普天間基地とかいう単語を知らないおばさんでも、「消費税の増税をストップして、さすが安部さんがんばってるわねえ」と目を細める。思うに一度、徹底的に惨敗して、もう再起不能で政治家生命は終わりと誰もが思ったところからの大活躍が、判官びいきの日本人の心情をぐっと刺激するのではないか。

2007年の突然の辞任のさい、報道で今にも倒れそうな弱々しい姿をみて、「踏ん張りどころなのにこれだから二世政治家は・・・」と残念に思った日本国民も多かったはず。それからわずか5年で、鮮やかに自民党総裁に返り咲いたまさかの復活劇。トップを奪い返すと、まさに生まれ変わった別人のような積極的な快進撃。今や安部さんに伍する政治家は永田町広しといえども見当たらず、総裁の任期延長という声も出始め、信頼性が高く安定した長期政権を運営した名総理として歴史に残るのは確実だろう。

そんな安部さんと、総理大臣を全力で支える麻生副総裁、菅義偉官房長官のタッグを、官邸に近くそれぞれとも長い親交がある政治ジャーナリスト、山口敬之氏が描く。なまなましい政局の緊迫した舞台裏、政治家の人間くさい素顔、文章がうまくてつい引き込まれる。読後、それまで通り一遍に読み流していた新聞の政治面ががぜんおもしろくなった。