WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『美徳のよろめき』(著者:三島 由紀夫)

2012-03-27 14:06:37 | 本と雑誌
美徳のよろめき (新潮文庫) 美徳のよろめき (新潮文庫)
価格:¥ 420(税込)
発売日:1960-11

大好きな三島作品の中でもとりわけ優雅で好きな小品。この人の凄いところのひとつは、女性的なものと男性的なものとを、さらにその濃淡まで自由自在に書き分ける表現技量。後世に渾身と評されるものまで、どこか渾身に見せている余裕、とにかく精一杯という感じがしないのだ。


やっと昨日から、5年ごとに5日間もらえるリフレッシュ休暇を半分かけて、フローリング工事の立会い。

昨冬、市販のオイルヒーターから突然油が流れ出し、我が家の床が大惨事になった。ちょうど仕事の飲み会があった夜だったので、帰宅してから2時までかかって掃除、それでもオイルが継ぎ目からしみこんだ部分がかなり残って、プロのクリーニング業者さんにも来てもらった結果「これは張り替えるしかないですね」とのこと。


それから、超忙しく睡眠時間をけずっている仕事のさなか、合間を縫って、リフォーム会社とヒーターを買ったところとの撮影の立会い2回(うまく撮れなかったとかでやり直し)、床材のサンプルを確認(これも色があわず3回)、部屋全面張替えしか構造上できないと言いはるリフォーム会社の営業に、そんなわけないでしょ技術の人を出してくださいと延々長時間かけて説得(?)し、部分的に張替えができることがわかってホッとしたのもつかの間、今度は出てきた見積が高額で驚愕するメーカーとの費用負担の交渉・・・


大量のやり取りを経由して、ようやく工事日程が決まったときは、ここまで辛抱強かったのかと思わず自分を見直した(笑) しかしその後、仕事の都合上、休む予定だったスケジュールに何度も変更を入れざるを得ず、4回も工事日程を変更してしまった。リフォーム会社の方、ごめんなさい。それにしてもオイルヒーターだけは二度と購入しないと思う(笑)


『アンナ・カレーニナ(3)』(著者:トルストイ 訳:望月 哲男)

2012-03-20 17:44:53 | 本と雑誌
アンナ・カレーニナ〈3〉 (光文社古典新訳文庫) アンナ・カレーニナ〈3〉 (光文社古典新訳文庫)
価格:¥ 1,000(税込)
発売日:2008-09-09

日曜日、ぶらぶらと散歩に出かけて、本を何冊か買い、ゆっくりランチを摂って、こまごました日用品をそろえる。年があけてすぐ幾つもの仕事がスタートできたおかげで、夜の8時に閉まるお店には当然行けず、久しぶり。直接肌につけるもののうち、オードトワレとルージュはシャネル、これはドラッグストアで買えないので、きらしてほんとに困っていた。常用品を登録しておくと届けてくれるネットサービスがあればいいのに。


忙しいと、幸せの閾値が下がるというか、何気ないことでもしみじみ、あぁ大満足だ・・と感じるのが、きっと、良い人生を送っている証拠(?) 仕事の合間、スタバのラテにたっぷり(2センチはいれる)蜂蜜を入れて飲むブレイクタイム。ランチで完璧なアルデンテのパスタが出てきた瞬間。人と一緒に思いっきり笑うとき、夜ベッドに入ってコトッと深い眠りに落ちるとき。同じことでも受け止め方は人によって違っていて、何をやっても不満に感じる人もいれば、どんなことでもプラスにとらえられる人もいる。一回きりの人生だもの、何でも楽しまないと。


続きの三巻目を読み終わって、いよいよラストへ。この新訳はとても良く、夫と愛する息子を捨てて美貌の将校との恋愛に飛び込んだアンナ・カレーニナの、男女の愛の終盤、嫉妬と焦慮と苦悩に変わりつつある不幸な精神生活がなまなましい。


『葬送(第一部下)』(著者:平野 啓一郎)

2012-03-18 16:10:53 | 本と雑誌
葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫) 葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫)
価格:¥ 540(税込)
発売日:2005-07-29

弾くのも聴くのも大好きなピアノだが、40年という短い生涯にワルツ、マズルカ、ポロネーズ、膨大な曲を遺した神様ショパンは本当に別格。何をいくら聴いても飽きない。


一ヶ月ほど前から、先生が「そろそろ大丈夫だと思いますよ」とおっしゃってくださって、練習曲のかたわら時間のあるときにホソボソと自主練していた大好きな「アンダンテ・スピアナート」にトライすることが許された。辻井伸行くんのショパン・コンクールのCDで聞いて以来、こよなく愛している曲。


少しずつ音階を変えて何度も繰り返すぎっしりした低音の連なりの間から、タイでつながれた甘美な右手のメロディをしっかりしたタッチで弾けると、木々の隙間から蒼い光が静かに舞い落ちてくるようなあの辻井くんの演奏のイメージになる。しかし、8分の6拍子の一小節の中に、16分音符が12個も詰め込まれたヘ音の連打は、左手首を酷使することはなはだしく、練習に埋没するうち、とうとうカルティエの軽い時計すら巻けないくらいに痛めてしまった。形成外科に出してもらった湿布をはって、とにかく、ひたすら早く治るよう念じる(笑)


『王妃の館(上)(下)』(著者:浅田 次郎)

2012-03-04 16:53:37 | 本と雑誌
王妃の館(上) (王妃の館) (集英社文庫) 王妃の館(上) (王妃の館) (集英社文庫)
価格:¥ 700(税込)
発売日:2004-06-18
王妃の館(下) (王妃の館) (集英社文庫) 王妃の館(下) (王妃の館) (集英社文庫)
価格:¥ 650(税込)
発売日:2004-06-18

ふだん本を読まない兄に珍しく「鉄道員(ぽっぽや)」を薦められて以来、浅田次郎氏の書く、温かくておもしろいものが好きになった。
マレ地区にある実在の広場と、格式高い超一流ホテル"Pavillon De La Reine" を元にした「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」を舞台に、17人の一癖もふた癖もある日本人ツアー客の人情コメディ。笑える上に、泣ける。とてもいい小説。


仕事好きな私にして珍しい、今週は良いと納得できないものを作るという非常にストレスフルな仕事にひどく忙しく、あまりにつらく、これはいかんと週の後半、新宿近くで打ち合わせ後のお昼、「響」によった。生産性のない愚痴や人の悪口は言わない、モットーだが、今回ははけ口がないと次に進めなさそうで、まず三度三度の食事をきちんと摂らなくては。とりどりの和食のお惣菜のビュッフェに、おいしい食事、温かい栄養がめぐっておかげで瘴気が抜け、体が生き返るような感じ。日々食べるものが、活力を作る、美と健康のもとになるというこの小説のテーマ、絶対にほんとうである。