WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『お嬢さん』(著者:三島 由紀夫)

2010-05-29 20:34:59 | 本と雑誌
お嬢さん (角川文庫) お嬢さん (角川文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2010-04-24

今日の午後はなんだか風が冷たい。こよなく愛しているヴェルレーヌの詩を読みながら、あたたかいココアを飲んだら眠くなって、ベッドでうとうと。TVをつけっぱなしで眠ってしまった。


上田敏の「秋の日の~」という名訳で知られるヴェルレーヌのChanson d'automneは、たとえ一語でも変えるとその完璧なフレームが崩壊する、ことばの芸術の極致。Rime(韻)、Pied(音節)の語数と性数が、4・4・3、Masculin(男性形)・Masculin・Feminin(女性形)という一定の規則をもって続く。意味の関連性を持つ語句の対比と配置も、つづりがシンメトリーになっている単語の配置も、おそるべき天才としかいいようがない。フランスの詩は、使われていることばの後ろに使われなかった膨大なことばの豊かな世界が垣間見えるところが、たまらなく好き。


なんだか読んだ本と関係ない話になってしまった。三島由紀夫の作品はほとんど全部読んでいる、これも初文庫化とあって読んだ。


『西欧芸術論集成(上)』(著者:澁澤 龍彦)

2010-05-18 21:46:02 | 本と雑誌
澁澤龍彦 西欧芸術論集成 上 (河出文庫) 澁澤龍彦 西欧芸術論集成 上 (河出文庫)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2010-04-02

画面が色とりどりのジュエリーボックスのような、宝ものアプリのたくさんつまった自分のプライベートiPhoneで、26日から始まるオルセー美術館展のアプリを眺めては楽しんでいる。


出展作の画像(ズームすると感動)と、その解説が見れるのだが、これが無料なんて素晴らしい。わたくしの大好きなモローも入っている。PCを立ち上げてサイトを探して、その中でさらに見たいページを探して、さらに展示会に持っていくためにはプリントアウトして・・・といった手間が、新しいデバイスの時代にはなくなってしまう。WEBコミュニケーションの在りようも変わるという、心躍るような興奮をおぼえさせるアプリなのだ。


この本は西欧美術つながりで、澁澤龍彦氏の、ゴヤ、モロー、ピカソ、デュシャン、マックス・エルンスト・・・特にマグリットを哲学的絵画、視覚の弁証法と評した1章はまるごと完璧、すこしの曇りもゆるぎもない美的理論の世界に遊ぶことができる。


『1Q84 BOOK3』(著者:村上 春樹)

2010-05-09 19:32:24 | 本と雑誌
1Q84 BOOK 3 1Q84 BOOK 3
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2010-04-16

予約して買って大事にとっておいて、連休中に読み始めたこの本、3巻目も文句なしにわたくしの村上春樹ザ・ベスト。孤独であるということと、それでも孤独ではないということの、さまざまな角度からの描き方。あらゆる登場人物の間に、どこかしら成立する奇妙な愛情。


続いて、クーリエ・ジャポン今月号で巻末付録の、2005年からの村上春樹インタビューも読んで、この日本が誇るべき偉大なクリエイターの、作品に対するどこか突き放した視線にあらためて敬意を抱く。作風や世界観だけでなく、静かなたたずまい、自分に対する見方、どこをとってもカッコいい。


読んだ本の中に気になるエピソードがあり、さらに関連する本を読みたくなるのが読書好きというもの。BOOK3の中にも、カール・ユングが建てた石の円環の塔の話があって、ユングの分析心理学の著作を読んでみたくなった。


『鈍感力』(著者:渡辺 淳一)

2010-05-03 21:18:42 | 本と雑誌
鈍感力 (集英社文庫) 鈍感力 (集英社文庫)
価格:¥ 420(税込)
発売日:2010-03-19

今年の連休も、混んでいるところに旅行に行くより、ゆっくり読書したり音楽を聴いたりする時間をとって、リズムを取り戻したかった。晴れて風の気持ちいい日が続く。午後は毎日、陽射しを浴びながら冷たいビールを飲む。


日ごろ、自分のことにしか関心がなくなったとき、精神の老化がはじまると思っている。アンテナが鈍くなり、世の中にあふれている美しいものに気づかなくなり、新しい知識を吸収できなくなって、感性が老いていく。いくつになっても感受性をみずみずしく保っていられるようにできればいい。


この本は、気持ちの上での鈍感ということではなく、多少のストレスを受けても意に介さず、おおらかに生きていくための「まわりのネガティブな要素を気にしない力」について。渡辺淳一氏は小さいときから好きな作家で、エッセイも恋愛小説も楽しんで読んできたが、これもさすが大ベストセラーの話題作、いいことを書いている。