![]() | 花の鎖 (文春文庫) 価格:¥ 620(税込) 発売日:2013-09-03 |
9月後半、仕事の山場が4つ重なって帰宅が遅くなった週、「告白」の湊かなえさんが書いたミステリを気分転換に読んだ。頭のなかを切り替えるものがないとうまく寝つけないので、スイッチは少しだけ読書かピアノを聴く。独立した3つのエピソードが実は1つの話なんだと気づく小道具がいくつも、読者の注意深さの程度をはかるように、文中にこっそり隠されているのがうまい。
負けず嫌いで、やると決めたらとことんやる性格のため、勉強がよくできた。うちの親は私が女の子だったせいか、小さいころは成績がよかろうが悪かろうがどこ吹く風で、いい点をとれば点数ではなく努力を誉め、たまに1番でなくても「あっそう」という感じ、私が「塾に行ってみようかな」と言ったところ、「そんな時間があるなら身をいれてちゃんと書道を続けなさい」と叱られたくらいである。
それが高校になると、日曜に電卓片手にいそいそと簿記の試験を受けにいく娘が心配になったのか「行くならこの大学」と指定され、私の行きたかった大学には「絶対に学費を出さない」と大バトルになったのも愛情ゆえか。甘く見ていたら本当に出してもらえなくて愕然としたが(笑)、好きな勉強をしながらちゃんと卒業できたのも、今思えばすこし強情なほどしっかり自立した性格に育ててくれた親のおかげである。女性ミステリ作家ならではの丁寧な味付けで、3エピソードに一貫するのは親の愛情と子どもに対する思いの深さ。いい読後感。