WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『白檀の刑(上)』(著者:莫 言 訳:吉田 富夫)

2012-12-31 19:15:18 | 本と雑誌
白檀の刑〈上〉 (中公文庫) 白檀の刑〈上〉 (中公文庫)
価格:¥ 1,150(税込)
発売日:2010-09-22

土曜日、自宅にピアノをいれたので、これを機に部屋の家具を入れ替えようと新宿に。引越してからだいぶ経ち、遠くなったが、いまだに新宿が好き。道をゆっくり歩くと、体にエネルギーが満ちてくる気がする。初めてどころか、同じ店に二、三回行ってもまだ間違えるという超のつくド方向音痴な私、なぜか新宿だけは土地勘がある。相変わらずの喧騒で、唾をとばしながら大声でわめく中国人観光客が多くなった気がするが、このきれいなんだか汚いのかわからない、新旧東西ごたまぜの消費都市。落ち着く。


狭い横丁にある混んでいない素敵なカフェバー、家具や雑貨のお店、伊勢丹に紀伊国屋。午後いっぱい、大塚家具でベッドや机、カーテンを見てまわって、ポップコーンをかじりながら映画を見て、ビルが改装中の中村屋(高野ビル、シャネルの上で営業している)でなつかしのハヤシライスを頂き、大満足して帰ってきた。いい休暇だなぁ。いよいよ今年も終わり。


ノーベル文学賞を受賞したモオ・イエン氏の、絢爛たる紙芝居を思わせる、波乱万丈の大活劇。桃の花と碧玉の柳、冷たい風に砂塵の吹きつける乾いた土壁の家、妖艶な美女に老いた枯れ木のような凄腕の処刑人。これぞザ・中華、近代中国のティピカルな歴史絵図を満喫させてくれる。あまりの表現力に入り込み、読みおわってからしばらく、鍋ものを食べると中のいい具合に煮えている具が、犬肉に思えて大変な思いをした(笑)


『銃、病原菌、鉄(上)』(著者:ジャレド・ダイアモンド 訳:倉骨 彰)

2012-12-24 20:51:16 | 本と雑誌
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
価格:¥ 945(税込)
発売日:2012-02-02

3連休の最終日、今日は仕事が終わらずに朝から出社。クリスマスイブなのに会社に行くのも厄年っぽいが、せめて気分を上向こうと颯爽とエントランスを出た瞬間、休日だからと15分かけてふんわり巻いた髪に、なんとカラスが激突してきた。冗談みたい(笑)驚いたが、ばたばたと髪にからまった向こうも驚いたろう。怪我がなくてよかった。


大好きな物理学者リチャード・ファインマンの言葉に、「私たちは何も知っていないのだ」という至言がある。答えをすっかりわかってしまったなどということは、進歩をとめてしまうとんでもないことなのだと。だからこそ新しい考え方を育て、間違えていれば捨ててまた考え直し、それからその自由を次の世代にも求めていくことが大事なのだと。


それが人の歩み。現代世界の東西南北に広がる所得格差の理由を、農耕や家畜の生態系、1万年以上の人類史の壮大なダイナミズムから説き起こすピュリッツアー賞受賞作。久しぶりに、からからのスポンジが水を吸い込むような勢いで読んでいる。厄年だったが、1年の終わりにこんなに贅沢な時間が持てるのは嬉しいことかも。


『午後の恋人(下)』(著者:平岩 弓枝)

2012-12-23 16:49:06 | 本と雑誌
午後の恋人 (下) (文春文庫 (168‐25)) 午後の恋人 (下) (文春文庫 (168‐25))
価格:¥ 660(税込)
発売日:1983-05

この夏、自分のメイクポーチの中に、ふと薬しか入っていないことに気がついて、愕然としたことがある。アトピー用のステロイドにビタミン剤、口内炎用のチューブ、絆創膏、保湿剤。我ながらそのときの寒々しさったらなく、固く心に誓ったのは、ここまで体にでてしまう前に、ほんとストレスをためない生活をしようということ(笑) 野菜やフルーツをたくさん摂る、よく笑って、夜はほどよく読書してリラックスしながら寝る、疲れたときは無理しない。


とはいえ、仕事はあいかわらずみっちり山積みで、プライベートでも疲れを癒すほどの時間はとれずに季節が変わったが、じょじょに心身の健康とともにアイシャドウもルージュもマスカラ、シャネルのトワレも無事に復活し、やっと元通りの女性らしい(?)日常が戻ってきた。


これを20代前半で読んで感銘を受けたのは、人生を渾身こめて生きるというテーマで、私のなかではスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学スピーチと並ぶ。イチ小説を、わが社の大社長がダ・ヴィンチと同様に不世出の天才と称えたジョブズ氏のもっとも有名なメッセージと比べてしまうのはいきすぎかもしれないが、その日に死んでも悔いのないように、ためらわず、過去を想わず、考え抜き、やるべきと思ったことを全力でするという生き方は、こう在りたいとおもう理想形。


『オルガニスト』(著者:山之口 洋)

2012-12-16 16:05:06 | 本と雑誌
オルガニスト (新潮文庫) オルガニスト (新潮文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2001-08

初めてサントリーホールの壮大なパイプオルガンを聴いたとき、鳥肌がたったのを覚えている。これは秋に読んだ青柳いづみこさんの「六本指のゴルトベルク」に紹介されていて、読みたかったミステリ。残念ながら新品がなく、中古書は一切買わない主義にもかかわらず、どうしても読んでみたかったのでアマゾンで検索して購入。ピアノとオルガン、さらに古典時代のクラヴィーアもオルガンとは違うのだけれど、それでもエレーヌ・グリモーのバッハをかけて、それっぽい雰囲気を出しながら読む。


書いてある楽器の機能や構造がおもしろい。へええ、オルガンには鍵盤やペダルの他にすごい種類のストップという機能があるんだ。たしかにピアノよりぜんぜん難しいなぁ。それにしても、ピアノは鍵盤を叩く、しかしオルガンはピアノなんぞと違い「そっと撫でる」と書いてあって、笑ってしまった。


暗譜し、何度もプロの演奏を聴き込むと、その曲を練習しているときに弾きながら自分の音が耳で追いかけられるようになる。練習はじめの、譜面を目でたどっている段階では、目と指のあいだに集中力の大半がいってしまって音なんて聴く余裕はない。耳で聴き音のずれを何度もプログラムに修正し、神経から四肢に伝える<マンドラゴラ>から、最後の血の通う箱とオルガンの連結を読むころには、ポーのような怖さに肌が冷たく粟立った。下手でもなんでもいい、明日もただ健やかに自分の指と脚で、愛するピアノが弾けますように(笑)


『三国志(7)』(著者:宮城谷 昌光)

2012-12-15 17:11:49 | 本と雑誌
三国志〈第7巻〉 (文春文庫) 三国志〈第7巻〉 (文春文庫)
価格:¥ 630(税込)
発売日:2011-10-07

昨年からずっとハードワークが続きストレスがたまっていたところに、春からのアトピー皮膚炎、輪をかけて夏の狂騒的な激務、少し落ち着いたと思ったら風邪からの気管支炎に胃炎と続き、さらにここ2ヶ月はもらい事故のようなひどい出来事がおきて心身ともに休まる時なく、実は今年は厄年だったのではないか・・・ 逆境は人を鍛えるというけれど、来年はいい年になりますように。


やっとここ数日、平穏な気持ちが戻ってきて、今日は朝から自宅の整理と片付け。朝おきたとき真珠色だった空が、ランチに出かけるときには冷たい霧雨がおちてくる低くたれこめた曇天に。12月に入っていよいよ寒くなってきた。部屋を暖めて、今週まったく手をつけられていなかったプレゼンテーション作りを始める。電話もメールもないと進みが速い。合間にあつあつのポトフを煮込み、読みかけの本の続きを読む。


前のめりに拓くような華麗なロマンと男くささのある北方謙三氏のと比べて、なんともゆったりした、文章に不思議な奥深さのある宮城谷版の三国志。私はどちらかというとこちらの方が好き。6巻を読んでからだいぶ時間があいてしまったが、すんなり後漢の世界へ。7巻では、赤壁の戦いのあと、曹操の魏、孫権の呉、劉備の蜀がじょじょに国としての形をとりはじめる。