WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『オルガニスト』(著者:山之口 洋)

2012-12-16 16:05:06 | 本と雑誌
オルガニスト (新潮文庫) オルガニスト (新潮文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2001-08

初めてサントリーホールの壮大なパイプオルガンを聴いたとき、鳥肌がたったのを覚えている。これは秋に読んだ青柳いづみこさんの「六本指のゴルトベルク」に紹介されていて、読みたかったミステリ。残念ながら新品がなく、中古書は一切買わない主義にもかかわらず、どうしても読んでみたかったのでアマゾンで検索して購入。ピアノとオルガン、さらに古典時代のクラヴィーアもオルガンとは違うのだけれど、それでもエレーヌ・グリモーのバッハをかけて、それっぽい雰囲気を出しながら読む。


書いてある楽器の機能や構造がおもしろい。へええ、オルガンには鍵盤やペダルの他にすごい種類のストップという機能があるんだ。たしかにピアノよりぜんぜん難しいなぁ。それにしても、ピアノは鍵盤を叩く、しかしオルガンはピアノなんぞと違い「そっと撫でる」と書いてあって、笑ってしまった。


暗譜し、何度もプロの演奏を聴き込むと、その曲を練習しているときに弾きながら自分の音が耳で追いかけられるようになる。練習はじめの、譜面を目でたどっている段階では、目と指のあいだに集中力の大半がいってしまって音なんて聴く余裕はない。耳で聴き音のずれを何度もプログラムに修正し、神経から四肢に伝える<マンドラゴラ>から、最後の血の通う箱とオルガンの連結を読むころには、ポーのような怖さに肌が冷たく粟立った。下手でもなんでもいい、明日もただ健やかに自分の指と脚で、愛するピアノが弾けますように(笑)