WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『午後の恋人(上)』(著者:平岩 弓枝)

2012-12-09 15:45:02 | 本と雑誌
午後の恋人 (上) (文春文庫 (168‐24)) 午後の恋人 (上) (文春文庫 (168‐24))
価格:¥ 700(税込)
発売日:1983-05

リヒテンシュタイン侯爵家の美術展が23日までだったことに気づいた。最終日までまだ2週間あると思うと、ずるずる時間は飛ぶように過ぎ、絶対に見逃すので、あわてて見に行く。


広い展示室に、絢爛たるバロックの名画、美術品、宝飾工芸品がずらり。中でもヴァン・ダイク、ルーベンス、レンブラントの素晴らしさ! 明るく色彩鮮やかで、ため息が出るように美しく、楕円を中心にしたいきいきと流れるような構図は、時代背景や画壇の特徴など知らなくても鑑賞を楽しめる。


エリザベート・ヴィジェ=ルブランの、「虹の女神に扮したリヒテンシュタイン侯爵夫人」が気に入ってしまい、繰り返し見ていたくてカタログを購入。興奮しながら心ゆくまで絵から絵の間を歩き回った後、いい天気で大きなガラスの壁からさんさんと日が射し込むティールームでひと休みする。これは平岩弓枝氏の作品の中で一番、ダントツに好きな本。大人の女性のかくあるべきという行動と精神は見事に優雅、久しぶりに読み返したけれど、やっぱりとてもいい。


『富士日記(下)』(著者:武田 百合子)

2012-12-02 19:59:34 | 本と雑誌
富士日記〈下〉 (中公文庫) 富士日記〈下〉 (中公文庫)
価格:¥ 980(税込)
発売日:1997-06-18

あっという間に12月だ。昨日はとても寒いと思ったら、栃木で初雪だったと天気予報で知る。10月からずっと体調が悪く、そのあとは咳が続いて、日曜のジョギングを一ヶ月以上お休みしていたのが、朝、久しぶりに音楽を聴きながら走った。空気は冷たいけれど爽快。食欲も回復し、ごはんがおいしい。ずっと本も読んでいなかったけれど、先週しばらくぶりにアマゾンでまとめ買いをして、食事のあとは読書三昧。


富士の山麓での生活描写が清々しくて気に入り、愛しむように大事に読んでいたこの本、下巻は、武田泰淳氏の亡くなる二週間前まで。後半はとても切ない。体がだんだん弱って、ふだんの、ほんとうにいかにもふだんの暮らしのひとこまの中で、ふっとお互いの気遣いが細やかに感じられるところなど、読んでいて思わず目頭が熱くなる。なんていい家族だったんだろう。


この山荘はずっと大事に保存されていたが、進んだ老朽化のため平成に入ってから取り壊されたそう。老後はこんな風に木や空の近くで、日本の美しい四季を感じながら暮らしたいなと思わせる名作。