WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『失われた時を求めて〈3〉第二篇 花咲く乙女たちのかげに〈1〉』(著者:マルセル・プルースト 訳:鈴

2010-10-23 16:14:48 | 本と雑誌

失われた時を求めて 3 第二篇 花咲く乙女たちのかげに I (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 失われた時を求めて 3  (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
価格:¥ 1,100(税込)
発売日:2006-05-19

今年は、年初にたてた目標があって、ショパンをたくさん聴くこと、水彩画をひさしぶりに描くこと、それからプルーストを年に2冊。早くも2010年があと2ヶ月あまりになってきて、あわてて読み始めた。何冊も同時に並行する私には珍しく、あまりに素敵な3巻、読んでいる間は他の本を手にとる気にならずに一気読み。

語り手の少年時代の、熱に浮かされたような恋がテーマ。彼が憧憬と思慕を一途にささげる対象は、同年代の美しい少女、これがまたワガママで親に甘やかされていて、彼のことを何とも思っていない、絵に描いたようにかわいそうなパターン(笑)語り手は最後に、あまりにもつらくて会いに行くのをやめるのだが、それからも日夜悶々と考えてばかり、その自分の心のいたみをあらゆる角度から分析するところがまたプルーストらしいのである。

つまり考える対象は相手じゃなくて自分の心の動くさまなのだ。「失われた時」のタイトル自体、人との会話や社交生活で、最も貴重なひとりきりの思索や自分との孤独な対話がそれによって妨げられるから、という意味を持つ。この作品の、粘度の高い感性の態様を美しく洗練された表現でくるんでいるところが好き。

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