WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『死にいたる病』(著者:セーレン・キルケゴール 訳:桝田 啓三郎)

2010-10-11 21:01:26 | 本と雑誌
死にいたる病 (ちくま学芸文庫) 死にいたる病 (ちくま学芸文庫)
価格:¥ 1,313(税込)
発売日:1996-06

冒頭の、自己の関係性のところでつまづいて、だいぶ長く本棚に眠っていたが、あらためて読み出したら、とまらなくなった。最初の扉「死にいたる病とは絶望のことである」からして目がさめるほど詩的ではないか。奈良ホテルでしんと更けた夜に読み進めたときのなんて甘美だったことか。


1849年当時、デンマークの思想家キルケゴールが、自分でも本名では出版をためらうほどの衝撃作だった名著。タイトルの、死にいたるとは肉体の死ではなく、絶望すなわち信仰による救い、覚醒のない状態が続くこと。すべての人間はあらゆる形態の絶望の中にいる、とキルケゴールは、ヘーゲル哲学、当時の教会組織についての批判などを組み込んで、信仰と自己の精神のありようについて綿密に定義していく。詩人の表現と哲学者の目でもって。


サルトルも小説は好きなのだが実存主義の著作のほうはさっぱりで、こんなにおもしろいとは知らなかった。大学で木田哲学をとったときにこのあたり読んでいなかったのが悔やまれる。

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