WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『ラヴェル』(著者:ジャン・エシュノーズ 訳:関口 涼子)

2013-03-03 15:35:29 | 本と雑誌
ラヴェル ラヴェル
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2007-10-20

昨晩二日酔いが残っていたのかリビングのソファで野球を見ながら眠ってしまい、それでも夜もぐっすり眠れて、目覚めるとまぶしい光が窓辺にふり落ちる朝。ナイキのエアシューズをはき、iphoneをポケットに入れて、いつものように走りに行く。外は、紅茶のにおい、何かを焼く香ばしいにおい、樹木の香り、東京だからもちろん排気ガスもまじっているけれど、それでも日を浴びながら走るのは気持ちいい。


最初にジョギングをはじめたとき、1キロも走れなくて、これは運動不足解消どころかハァハァしながら死ぬんじゃないかと思った(笑) 二回目、ボレロを聴きながら走った。同じフレーズが何度も何度も反復するこの曲に、私の心臓はあわせて規則正しく拍をきざみ、筋肉は酸素をリズミカルに供給されて動き、手足は灯がともったように軽くなって、2キロ、3キロとぐんぐん距離が伸びた。以来、走るときには必ずラヴェルの音楽を聴く。ソナチネ、夜のガスパール、鏡、マ・メール・ロワ。なぜか、この人の曲は長距離ランにあっている。


なんて美しい小説なんだろう。モーリアック賞受賞。ラヴェルの音楽のような言葉。おしゃれで偏執的で慢性不眠症で神経質な、世界を手にしたあとにその指から流砂のように言葉も記憶も音符もこぼれていって、萎縮した脳をひらかれて亡くなった大好きな音楽家。訳も素晴らしいがフランス語で読むといっそう美しいに違いない。

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