みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

ベランダのカマキリ

2012-06-22 | kid
こうたろうの昆虫好きは、保育園のころから皆に知られるところである。
中でも、好きで好きでたまらないのがカマキリ。
獰猛な強さも、メカっぽいフォルムも、心を捉えて離さないらしい。
図書館に行ってもカマキリとつくタイトルの本ばかり探している。

カマキリに限ったことではないけれど、こうたろうはよく虫をつかまえてきてしまう。
私もいろいろ学んだ結果、「ひと夏にバッタ5匹まで」という制限をつけた。
トンボや蝶、蝉など、羽のあるものはダメ。籠の中で飛べないなんてむごすぎる。
そもそも、自然界の生物を捕らえて狭い箱に閉じ込めておくというのが私には盛大に不本意なことで、バッタも本音を言えば歓迎しないところなのだが、男児の昆虫に対する好奇心をふさいでしまうのは親のエゴかもしれない。
なので、申し訳ないけれどバッタには来ていただくこともある。
バッタは飼育が比較的簡単で、意外に強い。エサもそのへんに生えている葉っぱでいい。

話を本題に戻して、カマキリである。
カマキリはとても飼育が難しい。
なんといっても肉食で、生きている虫しか食べないのだ。
こうたろうが立派なカマキリを「明日の朝逃がすから、今日だけお願い」と持ってきたことがあって、何を与えたらいいのか考えあぐねた。
ネットで飼育方法を調べてみると、「ペットショップにタランチュラ用のショウジョウバエが売っています」とか、「外にバナナやリンゴを置いておけば自然に虫がわきますので、それを与えましょう」とか、読んでいるだけで「ひー」と青くなってしまうような記述ばかり。
「ハムやするめを糸で吊り下げてブラブラ揺らすと、生きた虫と間違えて、飛びついて食べます」というのもよく載っており、こうたろうとふたりでやってみたのだが、我々の演技力が足りなかったのかダメだった。

よって、そのときこうたろうは、飼っていたバッタを与えたのである。
かわいがっていたはずのバッタは瞬時にエサと変わり、カマキリはまるで猿がバナナを食べるように、バッタを縦にして頭からもりもり食べた。
こうたろうはそれをすごく興味深そうに見ていて、私も実は、バッタがかわいそうとか、カマキリがひどいとか、気味が悪いとはぜんぜん思わなかった。
これが自然界で、私たち人間もやっぱり自然界の一員で、このようにして生きながらえている。

ただ、あまりにも素敵すぎるせいでこうたろうがいじりすぎてしまったため、カマキリは翌朝にはぐったりとしてしまっていた。
外に放したものの、学校から帰って見たら同じ場所で死んでいたらしい。
以来、カマキリも、うちは持ち帰り禁止である。

……だったのだが、おととしの冬、こうたろうはカマキリの卵を見つけて持ち帰ってきてしまった。
ひとつの卵から何百匹も生まれるのだ。生まれたら逃がすんだよ、とは言ったものの、実際そうなったらこうたろうが素直に外に放すとは思えなかった。
ベランダの植木の、土のところに卵のついた枝をさし、どうしたもんかなあ、と初夏を迎えたが、果たしてカマキリは生まれなかった。
不発に終わることもあるんだね、もう出てきた後の卵なのかもね、と、植木に枝ごとさしたまま、時が過ぎた。

そして数日前のこと。
ベランダのシンクに、1センチくらいの茶色っぽい小さなカマキリを見つけた。
まさか卵が孵ったのかと確認したが何もついていない。
どこかからやってきたんだな、こうたろうに見つかるなよ、と思いながら放置した。
翌日、リビングの壁にそのカマキリが止まっているのを発見してびっくりした。
たまたま私だけだったので、「こらこら、入ってきちゃダメだよ、つかまえられちゃうよ」と、そっとティッシュにとってベランダに出た。
どこに放せばいいのかなあときょろきょろしていたら、なんと、手すりに2匹いるのである。
あれっ、昨日と同じカマキリじゃなかったんだ!他にもいたんだ!と驚愕し、もう一度卵を見てみたがよくわからない。とりあえず、また放置。

そしてさらに次の日、卵からたくさん赤ちゃんが出てきているのを見た。やっぱり、この卵が生きていたのだ。
黄緑色で、目だけ黒い。大きさは50ミリくらいで、意に反するところだがかわいい。
100匹くらいいるだろうか。しかしその大半は土に埋もれかけて死んでいる。
運が良くて身体が強いヤツが何匹か、顔をこちらに向けた。
カマキリって、その年に孵るとは限らないだなとか、何回かに分けて出てくるんだなとか、この中でちゃんと生き残るのって選ばれたヤツだけなんだなとか、私はしみじみと観察して感嘆した。

私はゴミの袋から前日に食べたプリンのカップを取り出し、中をゆすぎ、ティッシュをしいた。そこに赤ちゃんごと卵を入れて、またティッシュでそっとふたをする。
そして近くの公園の、なるべく草が多くて人目につかないところに放した。
あとは、自力でがんばって生きていってください。

家に戻り、ベランダをくまなく見ると、4匹のカマキリがいた。
一見、大きめの蚊か蜘蛛みたいな感じ。よっぽど目をこらさないとカマキリとは思えない風貌なのに、いっちょまえにカマをふりかざしている。
よくよく見れば、微妙に大きさも腹の長さも違う。
私は、一郎、次郎、三郎、四郎と名づけ、彼らの行く末を見守っている。
うちのベランダなんて、エサあるのかなあとも思うが、ここまで育ったということはてきとうに小虫が飛んでいるんだろうし、エサがなければ共食いもするらしい。
共食いされても、こうたろうにいじられてプラスティックのケースの中で生涯を終えるよりはそのほうが数倍いいだろう。
もしこのまま大きくなって、こうたろうに見つかってしまったら、そこはまあ、運のつきだ。そのときは、なるべく早急に外に逃がすよう言い聞かせますので、少しの間よろしくたのみます。


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2 コメント

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すごい!! (みーママ)
2012-06-25 23:51:04
ウチも少し前に3cmくらいのカマキリがベランダに止まってたので、子ども達に見せたら「かごに入れる!」って。

ウチの3兄弟達は虫が苦手なんですが、小さなカマキリくんは大丈夫だったみたい(笑)
で、私も調べました。餌について。
これは、飼えないとなって、しばらく代わる代わる手に乗せて眺めて逃がしてあげました。

赤ちゃんのカマキリちゃん♪ちょっと見てみたいです(笑)
小さなカマキリってちょっと可愛いですよね♪
なんとか生きていってほしいですね。

こうたろうくんと一緒に遊んでたらウチの子達も虫嫌いにならなかったかな(笑)
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みーママさんへ (michiko)
2012-06-29 13:02:00
コメントありがとうございます。
カマキリって、不思議な昆虫ですよね。
自分の体より小さい虫しか食べないそうなのですが、
生まれたてのときなんてホントにちーっちゃくて、
これ以上小さい生き物なんているのかなと思いました。

これから夏がきて、秋口になるまで
しばらく息子のカマキリ探しの日々が始まりそうです…
(家に持ち込めないので外で観察しまくる)
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