みちくさ茶屋

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西の魔女が死んだ(映画の感想)

2008-08-12 | movie

 映画を観て来ました。梨木香歩さんのロングセラーであるこの小説、2年前に読んでものすごく感動したおはなし。あえて再読せずに視聴に臨みました。
(ネタバレは極力なし……のつもりです)

 美しい風景、すてきなおばあちゃん、主人公まいのナイーブさ、どれをとってもイメージぴったりで、根強い原作ファンもこれなら納得だろう、という感じでした。おばあちゃんの住む家の中にあるデティールひとつひとつのセンスが良かったし、洗濯したシーツをラベンダーの上に広げて干したり、ワイルドストロベリーのジャムを作ったりするシーンは、ここが日本であること、現代であることを忘れてしまうような、憧憬を覚えさせる映像でした。
 ……なのですが、どういうわけか、原作で得られたのとはまったく違う感情がわきあがる仕上がりになっていたように思います。私だけかな?
 原作では、ほとんど「まい」の目線なので、おばあちゃんの存在があまりにも圧倒的であり、力強くて「安心」でしたが、映像となるとどうしても俯瞰で映ってしまうせいか、ちょっとしたときに見えてしまうおばあちゃんの弱さ、寂しさが伝わってきて、なんだかとても悲しい気持ちになってしまいました。
 学校という場になじめない、デリケートな中学生のまいが、山で大好きなおばあちゃんにいろんなことを教えてもらいながら成長していく……というのが物語の主旨ですが、映画では、「山でひとり暮らすおばあちゃんが、孫娘に会えてとてもうれしくて、いつまでも一緒にいてほしくて、でもそれがかなわなくて……」というおばあちゃんサイドの心情を強く受け取れてしまった気がします。(私がトシを取ったということなのかもしれませんが。)
 映画を観終わってからもう一度原作を読んでみたのですが、セリフ回しなどがびっくりするくらい忠実なのに、終盤でまいがおばあちゃんとちょっと仲違いするシーンが、少し違うものになっていました。うーん、ココが肝心なところだと思うんだけどな。
 まいは、少女ゆえの純粋な残酷さで、おばあちゃんにキツイことを言ってしまうのですが、原作でおばあちゃんがそれをおおらかに受け止めているのに対し、映画ではものすごく気まずいことになっていて胸が痛かったです。また、ラストでおばあちゃんがまいに残したサプライズも、原作では素直に「おばあちゃん、スゴイ!」と感動したのですが、映画では「もしかしてこれは、おばあちゃんがゲンジさんに頼んだのかも」というウラ読みをしたくなってしまいました。
 ここまで書いておいてナンですが、原作と映画のどちらが良い、悪いということではなく、メッセージの相違なのだと思います。どちらも、大事なことが描かれていて、観る人それぞれにそれぞれのことを感じさせる傑作でした。
 余談ですが、観終わったあとにトーストが食べたくなる映画でした~!! 

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