堅曹さんを追いかけて

2002年(平成14年)9月から先祖調べをはじめた速水家の嫁は、高祖父速水堅曹(はやみけんそう)に恋をしてしまったのです

雨の天神山

2008-04-10 22:47:43 | 原三溪市民研究会

今日は群馬で月一度行われる歴史ワーキンググループの勉強会の日でした。

行く途中雨でしたが、埼玉県児玉郡神川町(旧渡瀬村)の原善三郎邸の庭園である「天神山」へ寄りました。

横浜で勉強している原三溪の義祖父が善三郎です。その生家が神川町にいまでもあります。


      Cimg2926 原家

彼は横浜の野毛(現在の野毛山公園の場所)にあった別荘に大庭園をつくり、その次の本牧の別荘にもすばらしい庭園をつくりました。

それが現在の横浜三溪園です。

その彼が生家に造った庭園が「天神山」です。



ここは普段は公開しておらず、毎年4月のひと月だけ無料で公開されます。

ちょうど桜、つつじの季節であり、それはそれは一番美しい時期の公開だと聞きました。

雨でどうしようかともおもいましたが、せっかくですので行ってみました。

雨に濡れた庭も、またとても良かったです。

    Cimg2923_2 入り口から

    Cimg2918_2 少し登って



今年は桜が早かったので散り始めていましたが、満開のつつじ、新緑の瑞々しさ、レンギョウの黄色、そして水芭蕉の立派さ等々。

これらが渾然一体となった庭園の美しさ。

    Cimg2897_2 つつじ

    Cimg2909_2 水芭蕉



花や木々の良さだけでない、庭の造りというのか、高低の取り方や池や川の配置の絶妙さ。

ぐるっと回りながらどの位置から眺めても良さがある。

そして脇を流れる神流川の雄大な景観。

    Cimg2912 池

    Cimg2891 神流川



ぐるぐる歩き回っても全然見飽きない。

手入れされているのを感じさせない自然でやさしい、いい感じの庭です。

長い年月を経ての良さが満ち溢れている。

本当に美しいなあ、と思いました。



私はあちこちに配されている苔むした石灯籠に心ひかれてしまいました。

 Cimg2922  Cimg2904

   Cimg2893     Cimg2914

どれも味わいがあるでしょう。



この庭を造った原善三郎のセンスに脱帽です。


原三溪市民研究会の新聞記事

2008-04-08 12:47:06 | 原三溪市民研究会

新聞ネタが続きます。

今回は私が昨年より参加している横浜の「原三溪市民研究会」(カテゴリ「原三溪市民研究会」で参照)のことが朝日新聞神奈川版4月3日に載りました。


  File0002_3 

     クリックしてまたは印刷すると読めます


「開港と生糸貿易」の著者藤本実也氏によって書かれた原三溪の評伝は1945年に完成 しましたが戦後の混乱で60年以上出版されなかったのです。

これをなんとか出版したいと東京外大の内海孝先生らが昨年市民研究会を立ち上げて実現にむけて動き出しました。

関係者はまだ資金のめどもたっていないのですが、来年の横浜開港150年にむけて完成させたいとがんばっています。



毎回微力ながら先生がたの指導のもと作業に取り組んでいる私ですが、大変だけれどやりがいがあり、形としてのこることに参加できている喜びがあります。

内容も本当に素晴らしい評伝です。

こんなりっぱな原稿がいままで出版されずにきたなんて、驚きです。

みなさんボランティアで集まり、何とか出版したいという熱意と情熱でつきうごかされています。



記事がでたことで各方面から励ましや問い合わせもきているそうです。

このことが皆さんに知られ、協力してくださる方がふえるとうれしいです。


150年前の在日スイス人の日記

2008-04-08 11:01:10 | 堅曹と横浜

神奈川在住のEさんから情報がはいりました。

日経新聞神奈川版 4月5日の記事です。

  File0001 クリックすると大きくなります


日本の開港当時横浜に「シイベル・ブレンワルド商会」というスイスの商社がありました。

慶応元年(1865)スイス人のヘルマン・シイベルとカスパー・ブレンワルドが横浜で創業しました。

当時「横浜甲90番館」と呼ばれていたその商館は日本の生糸取引の中心となり、「生糸王国日本」を築き上げる上で大きな役割をはたしています。

その創業者のブレンワルドさんが日本にスイス政府の通商使節団の一員として来日した1862年から16年間の日記が翻訳されることになったのです。



この「シイベル・ブレンワルド商会」というのは堅曹さんとたいそう関わりのある商社です。

明治3年(1870)に前橋で最初の器械製糸所をつくりましたが、その時堅曹さんが相談したのが、シイベルさんだったのです。( 2007.10.29ブログ記)      

シイベルさんは自分の商会をもちながら、なおかつスイスの領事でもありました。

そして器械製糸の技術を持つものとしてミウラーを紹介しました。そのミウラーを前橋につれてきて日本最初の器械製糸所を開設したのです。

4ヶ月後ミウラーを解雇してあとは自分たちだけで操業を続けていきますが、その間もその後もシーベルやミウラーらスイス人と行き来をしています。



今は堅曹さんの日記から当時の出来事を辿っているだけですが、それがシイベルと一緒に商会をしていたブレンワルドさんの日記が翻訳されれば、スイス人側からの日本の生糸貿易、器械製糸の嚆矢に関することがらが明らかになる可能性があります。

そしてスイス人からみた堅曹像なんていうのもでてくるといいのですが。

日記は全5冊で翻訳には3年ほどかかる予定です。

すごく楽しみです。


展覧会めぐり

2008-04-05 23:55:44 | 写真

今日は展覧会に行ってきました。

まずは上野です。

桜は満開過ぎてすこし散り始めているけれど、朝からすごい人でした。

  Cimg2853 上野公園



向かったのは東京国立博物館で行なわれている

  平城遷都1300年記念「国宝 薬師寺展」(3月25日~6月8日)です。

  Cimg2858 東京国立博物館 平成館

チケットをいただいたので行ってきたのですが、とてもよかったです。

最初に講堂で薬師寺のお坊さんによる20分程のガイダンスを聞きました。

薬師寺の概要や見所の要点などをわかりやすく話してくださり、これから見るのにバッチリでした。

そして入り口で音声ガイド(市原悦子さんのナレーター)を借りて聞きながら見学をしました。

あまり知識のない私にはありがたいです。


奈良の薬師寺にある日光、月光菩薩が2体そろってお寺から出たのははじめてだそうです。光背がないので背中までぐるっとみることができます。

      Yakushiji1 日光(右)・月光(左)菩薩立像

大きくてたおやかで、銅製ですが、お坊さんが言ってましたが、おなかの辺りなど触るとプクッとへこむのではないかとおもうほど柔らかい曲線です。

そのほか印象にのこったのは玄奘三蔵の経を訳しているお像でした。今日はたまたま三蔵法師の月命日ということです。



次に同じ国立博物館のなかの東洋館で展示されている

  「蘭亭序」(3月4日~5月6日)をみました。 

       File0001_3

  たまたまやっているのがわかって、いってみました。

最近古文書を少し読んでみようかと辞書をみれば、基本は王羲之にたどり着くようで、とても気になっていました。

その「書聖」といわれた彼の最高傑作の「蘭亭序」についての展示です。

7月には江戸東京博物館で「北京故宮 書の名宝展」というのもおこなわれるのですが、ここでみれるならと寄ってみました。

小規模でしたが基本的なことは理解でき、比べてみることがおもしろく、実物は重厚でした。



次は恵比寿に行きました。

恵比寿ガーデンプレイスの中にある、東京都写真美術館です。

  「紫禁城写真展」(3月29日~5月18日)です。

  Cimg2879       File0003_3

      東京都写真美術館

これは堅曹さんの明治初期のポートレート写真をとった(2007.8.30ブログ記)小川一眞が明治34年(1901)大プロジェクトのもと何ヶ月もかけて清朝末期の「紫禁城」を撮ったものです。

帰国後プラチナのプリントにされて豪華な写真帳となって国立博物館に保存されていました。いつか見てみたいなとおもっていたので、100年後にはじめて一般公開されたのでいってきました。

草ぼうぼうの荒れ果てた紫禁城がうつっています。壮大なパノラマです。

ところどころに中国の人が入っていて建物の大きさがわかります。

超細密な彫刻や模様があざやかに切り取られています。

100年前これだけの写真を撮った小川一眞の実力を感じました。



春の一日展覧会の掛け持ち。

国立博物館の中にステキな桜が満開でした。

  Cimg2867  吉野枝垂


軽井沢・富岡 家族で佳き日②

2008-04-03 10:54:13 | 旅行

さて翌30日、朝から富岡へ向かいます。

1時間ほどで着き、お天気も上々。



まず製糸場から北へすぐの「龍光寺」へ行きました。

    Cimg2826_2 龍光寺



ここは官営富岡製糸場で亡くなった工女さん達のお墓と、堅曹さんが所長になるとき自分の腹心として連れてきた長野親蔵さんのお墓があります。

    Cimg2825_2    Cimg2824

      長野親蔵の墓                 工女の墓


長野親蔵さんは熊本出身で早くから堅曹さんに就いて器械製糸のことを習い、地元でも製糸所を経営して官僚でもありました。

大変優秀で堅曹さんに抜擢され富岡にきましたが、明治12年(1879)何者かに製糸場内で刺されて亡くなったのです。

お墓には堅曹さん撰文の哀惜に満ちた追悼が彫られています。

また工女さんの墓は堅曹さんが明治26年(1893)製糸場を民営に払い下げるときに建立したものもあります。

皆でお参りをしました。



次に向かったのは一ノ宮の「貫前(ぬきさき)神社」。

富岡製糸場から3キロぐらいのところにある千年もの由緒と格式のある神社です。

全国でも珍しい登って下る参道があります。

  Cimg2829  Cimg2827

     登って                          下って

総門の前には慶応2年(1866)に当時の地元の養蚕農家や商人さらに横浜、東京の生糸商人らも献金して納めた青銅製の大きな一対の燈籠があります。

  Cimg2828 総門 両脇にあるのが青銅の燈籠


ここは製糸場の工女たちが日曜日にはよく参詣し、花見にきたり、外国人教師は境内が汚れるからといって中にはいれなかったという話などものこっています。

ちょうどお祭りの日で桜もきれいな参道をお囃子をききながら登っていきました。



いよいよ「富岡製糸場」です。

私以外は皆はじめてなので、緊張して正門に向かって歩いていきました。

  Img_0132 ドキドキ

何十回となく写真等で目にしている建物ですが、きっと実物をみるのはまた想像を超えていたのだとおもいます。



今回はいつもお世話になっている先生に解説をたのみ、堅曹さんゆかりの場所なども特別にみせていただきました。

2号館や3号館、ブリューナ館、繰糸場、東繭倉庫、鉄水槽、中庭等々、丁寧に解説をしていただきながらたっぷりと見学しました。

   Cimg2836 東繭倉庫

   Cimg2837 貴賓室



なんといっても圧巻は地下室でした。

狭い空間に6人が入りこみ、先生の検証を重ねた説明とこの部屋の不思議な点のご指摘。

聞くほどに皆で130年前にタイムスリップして想像をめぐらせた楽しく濃密な時間でした。

   Cimg2832 地下室入り口

   Cimg2834 中の天井 どうして穴が開いているのか?


外に出れば庭には桜が7分咲きぐらいでしょうか、きれいに色づいていました。

   Cimg2845 中庭


子孫が堅曹さんの働いていたこの製糸場に集い皆で当時のことを思いめぐらせている。

この穏やかな春の日に家族でこの地に来れたこと、なんとも不思議で、でも喜んでいるんじゃないかと密かにおもう。

子供達に堅曹さんのことを伝えたいという私の願いがこうやってひとつ実現できた! 

本当にうれしかったです。


軽井沢と富岡の家族旅行、佳き日でした。