時々ネットで古書を購入します。
先日届いたのは大正14年発行の『増訂 明治事物起源』。
「増訂」とついているのは、明治40年に同じ著者の『明治事物起源』がでているからで、
最初に出版したものに本人は納得がいかず、
それから20年間かけて、さらに調べ尽くして出版したものである。
この本には「機械製糸の始」として速水堅曹と大渡(前橋)製糸所のことが詳しく書かれています。
数年前に図書館でコピーをとりました。
最近になって、筑摩書房から新書版8巻(!)になって、旧字や句読点も改められて出版されていることを知りました。
それでも図書館で古い本をめくると、いろいろな事物のはじめて物語に興味がそそられるばかりで、
ついに大正14年版を買ってしまいました。
届いた本をみると、さすがに経年劣化していて、
パラフィン紙でしっかりカバーされています。
よく見ると、その表紙になにかの絵が書いてあるようだ。
意を決して、そお~と糊をはがし、パラフィン紙をとってみた。
金箔押しがされている。
何の絵柄だろう。
蒸気機関車のように人々が燃料をくべている。
煙突からは煙がでて、機関の中はゴウゴウと火が燃え盛っている。
機械にくわしいNさんに絵をみてもらったら、これは蒸気機関車でしょう、という。
しかし、下が変だ。
車輪が蒸気機関とつながっていない。
台の上に機関が乗っかっているかんじ。
よく見ると車輪は菊の御紋のようにすら見える。
そこで、早速本文の「明治以前の汽車」のところを見たらありました。
これは嘉永7年にペリーが来航したときに、献上品としてもってきた蒸汽車(蒸気機関車)の模型だそうです。
客車のところに人がまたがって乗れるくらいの大きさで、レールを敷いて、その上を走らせ、大いに人々を驚かせたという。
今でいう、イベントのときに子供を乗せるミニSL機関車のような感じでしょうか。
その当時の『読売』に掲載された図がこの表紙の絵でした。
これは「最も不思議なる想像を以て之を図したる」と書いてある。
見たこともない蒸汽車を、話しだけ聞いて想像して描かれた絵だという。
なるほど、どうも変なのも納得。
しかし、こんなトンチンカンな想像をしてしまうほど、
全く未知のものが一気に日本にはいってきたという、
象徴的な最初のもの、ということで表紙にもってきたのかもしれない。
この装幀と挿画は、小村雪岱(せったい)だと書いてある。
ここ数年、関東近辺でいくつか展覧会がおこなわれ、再評価されているので、名前を聞いたことがあります。
小村雪岱は下村観山に師事した日本画家であり、挿画家でものあり、装幀も手がけている。
この本が出されたのは資生堂に勤めていた頃のようです。
そういえば、本の見開きがすごく変わっている。
初期の英語の読本の一部がのっている。
ここもこの本が欲しいと思った一因です。
いつか、時間があるときにじっくりと最初から読んでいったらおもしろいだろうな、とおもう。