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高野秀行『極楽タイ暮らし 「微笑みの国」のとんでもないヒミツ』

2008-07-20 15:16:02 | ノンジャンル
 宮田珠己さんの本と間違えて買った高野秀行さんの「極楽タイ暮らし 『微笑みの国』のとんでもないヒミツ」を読みました。どうして間違えたかというと、アマゾンで「宮田珠己」で検索した中に、高野さんの本が紛れ込んでいたからであり、いかにも題名が宮田珠己さんの本っぽかったからです。
 この本は実際に著者がタイに暮らし、タイと日本を行き来する中で、日本と違うタイの特徴を微に入り細に入り書いた本です。
 まず、まえがきで、タイの人たちの暮らしを表す3つの言葉「サバーイ」(元気だ、気軽だ、快適だ)「サヌック」(楽しい)「サドゥアック」(便利だ、都合がいい)、そしてよく使われる言葉「マイペンライ」(大丈夫、たいしたことない)を紹介し、タイの人たちのノー天気さを示唆します。
 そして、いろんなタイの人独特の特徴を述べていくのですが、たとえば、普通の顔が笑顔で、その笑顔が何とも魅力的なこと、移り気ですぐ職を変え、どっかにいなくなってしまうこと、なよなよした男が多いこと、食事を外食で済ませる家が多く、食へのこだわりが強いこと、はっきり「ノー」と言えないこと、暑い国のくせに暑さを嫌うこと、したがって「熱い心」というのは気が短いことを言い「冷たい心」というのは冷静であるという意味であること、若者が日本の若者文化に熱中していること、ハンサムとはお金持ちっぽいことを言うこと、目的もなくその日暮しが基本であること、オカマが多いこと、現在の王様は圧倒的に人気があるが、息子は人気がないこと、女性の脚がきれいなこと、あだなや陰口が露骨なこと、死体の写真が氾濫していること、死者を少しも敬わないくせに幽霊を異常に怖がること、地元の歌謡曲が幼稚なこと、アウトドアではやってるのはデパート巡りと滝で遊ぶこと、至るところで携帯で話していること、「家」の観念がなく、結婚したら平気で妻の実家に住む男性が多いこと、酒を飲むとケンカになることがよくあること、プロ意識・職人かたぎといったものがないこと、基本的に他人には無関心なこと、政治・経済の中枢は中国系タイ人が占めていること、サッカー賭博を始めとして賭け事が盛んなこと、愛国心がないこと、金持ちは半端でなく金持ちなこと、テレビ番組がつまらないにもかかわらずCMは面白いこと、外人が買う娼婦は自分から娼婦になった女性が多いこと、などです。
 上に挙げた事柄についてそれぞれ5ページ以上を割いて説明してくれているので、タイの事情を知るには最適の本です。ただ、この本が書かれたのが2000年前後ですので、それ以降の変化に関しては実際に行くか、他の本で確かめるしかありません。ただ、これだけ実体験に即してタイを語った(それも面白く!)本はこの本以外にはないのではないでしょうか。外国事情に関心のある人、面白いノンフィクションを読みたい人にはオススメです!

上橋菜穂子『流れ行く者 守り人・短編集』

2008-07-19 15:56:19 | ノンジャンル
 17日発行のフリーペーパー「R25」に、寄付に関する記事が載っていました。寄付をする家庭の割合は日米とも75%前後なのですが、金額は日本が年間3000円前後なのに対して、アメリカは約9万円と30倍以上の開きがあるそうです。私はユニセフ・マンスリーサポートで月に2000円寄付しているので、年間2万4千円になり、日本にいるにしては健闘してる方かな、と思いました。

 さて、上橋菜穂子さんの一番新しい作品「流れ行く者 守り人・短編集」を読みました。
 第一話「浮き籾(もみ)」は、幼い頃のタンダとバルサが主人公で、タンダが好きだった、祭りには必ず帰って来る「髭のおいちゃん」オンザが、山犬に憑いて里の人を襲うという事件を2人して解決するという話。
 第二話「ラフラ〈賭事師〉」は、バルサがロタで出会った老女の賭事師アズノと50年来の勝負をしている氏族長の重臣との賭博の話。
 第三話「流れ行く者」は、バルサとジグロがロタからトロガイ師の家まで護衛士を務める話。
 第四話「〈寒のふるまい〉」は、タンダがバルサの帰還を待ち望む話、です。
 この4つはちゃんと時間の順番になっていて、4つの短編というよりも、一つの話の1~4章と考えた方がいいかもしれません。一番読みごたえがあるのは、バルサの養父ジグロが病床に伏せるところから始まり、バルサが初めての殺人を経験する「流れ行く者」でしょう。冒頭のジグロの死闘ぶり、年老いた護衛士スマルの哀れさ、そしてバルサの殺人の場面、読みどころが沢山あります。そして「浮き籾」と「〈寒のふるまい〉」では、幼いタンダの人の良さ、かわいらしさが横溢しています。この本を読んでいると、守り人シリーズはまだまだ話を広げられると思いました。次の守り人シリーズの一冊が読めれば幸せなのですが、上橋さん、どうでしょう?
 ちなみに詳しいあらすじは、「Favorite Novels」の「上橋菜穂子」のコーナーにアップしておきましたので、興味のある方はぜひご覧ください。

宮田珠己『ジェットコースターにもほどがある』

2008-07-18 18:58:18 | ノンジャンル
 「アジア四次元日記」からファンになった宮田珠己さんの'02年作品「ジェットコースターにもほどがある」を読みました。
 日本のジェットコースター乗りまくり日記かと思ったら、冒頭の写真は何とアメリカのジェットコースター、でビックリ! しかも読みはじめるとすぐに、アメリカの遊園地はジェットコースターを4個、5個持つのは当たり前と知って、またビックリ! アメリカは世界で唯一のジェットコースター大国でもあったのでした。そして数々のビックリするコースターを紹介していき、日本では富士急ハイランドのドドンパとナガシマスパーランドのスチールドラゴン2000が日本一のコースターのしのぎを削っているというのも初めて知りました。
 しかしこの本の醍醐味は何といっても著者特有のユーモアにあふれた文体でしょう。まず、宮田さんの妄想コースターです。アメリカにはバットマンとかスーパーマンとかヒーローの名前をつけたコースターが多いので、日本でもウルトラマンや仮面ライダー、子供っぽいというのなら、座頭市はどうか、と書いた後、「『座頭市』は目が見えないので、室内の真っ暗闇を失踪するコースターである。勝新の殺陣のように素早い動きとめまぐるしいカーブが特徴なのだ‥‥、ん、それは東京ディズニーランドにある『スペースマウンテン』と同じではないか。ダメだ。
 では、『健さん・ザ・ライド』はどうだ。腰が低いけどいざというときはめっぽう強いコースターで、大きくうねりながら空間を鋭く切り裂き、ばったばったと敵を倒したり、急旋回したり、お控えなすったりするのである。面白そうではないか、と思ったらテレビコマーシャルで健さんが、『まっすぐでいいんじゃないですか』と言っていた。まっすぐでいいのかもしれん。」という脱線ぶり。
 それからフリーフォールで頂点に達し、止まったままなかなか下りないので、「長いぞ。なぜちっとも落ちないか。下から見ていたときはもっとテキパキ落ちていた。おかしい。壊れたんじゃないか。絶対おかしい。こんなに時間がかかるはずがないのである。ちょっとして本どぅわああああああああああああ。
 ‥‥というわけで、怖かったんだけれども、(後略)」とここまで書かれると、もう名人芸です。
 そして一番笑ったのは、翻訳ソフトで新しいジェットコースターを紹介する英語サイトを訳した結果です。「一挙に、公園での最も大きな資本を持った投資は30年の歴史です」「マジック山が15台のローラーコースター、天地創造説での他のいかなる遊園地よりもいっそう多くにホームになります。それは乱暴、友人たちなくなった世界です」「2対の席が横木システムのいずれかの側面から離れて広がるという状態で、我々は5トンの幅20フィートの車の中に我々自身をひもで結びつけるでしょう」このような訳があと7つ並び、最後に「それは世界中ぼんやりのためにいい知らせです」で終わる、ホントにこんな翻訳ソフトが8000円で売っているのかなあ、という凄さです。
 宮田さんは本当にいろんなものに興味を持ち、本が変わるとがらりと題材が変わるところが奥が深いというか、次に期待してしまうというか、さすがフリーライターだなあ、と思います。今のところ、この本を含めて4册の本を読みましたが、皆すごく楽しませてもらいました。次の本を読むのが楽しみです。

阿曽山大噴火『被告人、前へ』

2008-07-17 16:30:02 | ノンジャンル

 今日発行のフリーペーパー「R25」に、「借金漬けニッポンの借り入れ限度額はどれくらい」と題する記事が載っていました。その記事の中に主要国の政府債務額の名目GDPに対する割合が出ていたのですが、日本は170.3%で断トツ1位。2位がイタリアの116.3%、以下フランス72.3%、アメリカ69.8%と続きます。国債の長期金利も他の国がどこも4.5%前後なのに、日本だけ2.1%で国際競争力はゼロ。こんな財政でいいんでしょうか?

 さて、「裁判大噴火」と同じく阿曽山大噴火さんの書いた「被告人、前へ」を読みました。内容的には「裁判大噴火」と重複したところもありましたが(例えば、ニセ有栖川宮事件)、こちらの方がより詳しい記述になっていました。
 多くのページが割かれていたのは、ニセ有栖川宮事件と監禁王子事件です。監禁王子というのは、'03年から'04年にかけて4人もの女性を立ち代わり入れ替わり自宅に監禁した男の事件で、まだ覚えている方もいらっしゃるかもしれません。なぜ王子なのか、というと学生時代に周囲から王子と呼ばれていたからだそうです。
 この男、自意識過剰で、とにかく落ち着きがなく、この本によると起訴状の朗読中に、
・髪の毛をいじること、5回
・顔を手のひらで覆うポーズ、3回
・にらみつけるように傍聴席を見渡すこと、5回
・手のひらであごを押す小顔マッサージ、6回
他にも、起訴状の内容に納得いかない時は苦笑いをしたり、手に持っていたボールペンをくるくると回したりしていたそうです。この中でも傍聴席を5回もにらんでいるというのが尋常ではないように思います。また事件に関しても、あくまでもSMプレイの一環であるという主張を崩さず、結局懲役15年を求刑されていました。
 ニセ有栖川宮事件の方では、ニセ妃殿下を演じた女性のはちゃめちゃぶりが詳しく書かれていました。男性の被告を宮家という肩書きで惚れるたのか、という質問に「いいえ、私は、男性を職業や学歴で判断するようなことはいたしません。」と言っておきながら、次の質問「と、いうと?」に対して、「私は男性を人となり・血筋・オーラで選びます!」って、血筋は肩書きちゃうんか? それにこの答え自体がちょっと変です。そして、その直後にもはっきりと「私は、目の前にいる男性を愛しているなら、職業や身分なんか関係なかったわけです!!」と言ったりしています。
 これ以外にも裁判長が被告にカウンセリングのような会話をしかけ、「見栄なんて捨てればいいじゃん。」と、公の場所にはふさわしくない語尾で話しかけたり、患者に暴力を働いた医者の被告が、暴力の原因を患者との相性が悪かったと言い訳してみたり、と裁判所では面白い会話がされているな、と思ったりもするのですが、著者はほぼ毎日東京地裁に通ってる訳で、その膨大な傍聴体験の中から抽出されたとても貴重な傍聴記録が本書になってるので、そんなに面白い裁判ばかりではないということが逆に分かったりします。
 来年からは裁判員制度が始まるので、それまでに読んでおきたい一冊かもしれません。

アルフレッド・ベスター『願い星、叶い星』

2008-07-16 16:03:08 | ノンジャンル
 11日の朝日新聞の夕刊の1面に「元受刑者を就農支援」と題する記事が載っていました。法務、厚生労働、農林通産の3省が来年度から行なうもので、対象は更正と就農の意欲があるのに、仮釈放か、満期に釈放されても行き場がない元受刑者。茨城の就業支援センターが12人ぐらいを半年から1年24時間監視して農業させて、退所と着には、農業関連の職に就けるよう目指すというもの。これはいいですね。精神障害者にもこういったシステムを導入してもらいたいものです。

 さて、アルフレッド・ベスターの短編集「願い星、叶い星」を読みました。
 「ごきげん目盛り」は、殺人癖を持つようになったアンドロイドと逃避行を続けるうち、アンドロイドの性格が投影し、殺人癖を持つようになった主人公が、新しいアンドロイドにまた投影し、殺人癖を持たせるようになる話。
 「ジェットコースター」は、未来から女を調達して攻撃させるためにやってきた男の話。
 「願い星、叶い星」は、夢のような機械を作る友人やテレポートする友人の姉のことを書いた少年の作文を読んで、相続詐欺を働く2人組と一緒になってその少年を探す校長が、少年が願うことが全て実現することを知り、自分も異次元に飛ばされてしまう話。
 「イヴのいないアダム」は、自作のロケットのせいで地球を滅亡させてしまった男が、海に辿り着くことによって、自分の体が新たな生命の源になるという話。
 「選り好みなし」は、アメリカ本土に核が落とされ焦土と化す中、人口が増加している中心地に行くと、他の時代から大勢の人間がタイムマシンで送られてきているのを発見し、自分も他の時代に飛ばされてしまう話。
 「昔を今になすよしもがな」は、核爆弾でニューヨークに生き残った一組の男女の物語。
 「時と三番街と」は、未来の年鑑を買ったとしてそれを奪いに来た男が、代わりに未来を教えるとしてホテルのマネージャーに渡した偽札に印刷されている財務省長官の名前が自分の名前だったという男の話。
 「地獄は永遠に」は、6人がこの世の感覚を全うしようと、酒、麻薬に溺れるが飽きてしまい、劇で驚かせてリーダーの夫人を殺し、現れた亡霊によって、自分の望みを一人一人が叶えんとする話、です。

 この本をどうして読むことになったのか、忘れてしまいました。多分、お気に入りの作家の推薦書だったような気がします。で、結果的にどうだったかと言うと、あまり面白くありませんでした。最初の「ごきげん目盛り」で、私とアンドロイドが両方とも「私は」と言い、読者を故意にに混乱させんとする技術を駆使している辺りで嫌な予感はしていましたが、その後はまともな小説だったのにも関わらず、あまり面白くありませんでした。でもどれか一つと言われれば「イヴのいないアダム」でしょうか。ただ、あとがきを読むと、編集・翻訳を手掛けた中村融さんはベスターの「虎よ、虎よ!」がSFナンバーワンだと書いているので、その本だけは読んでみようと思っています。ちょっと変わった短編小説をお好みの方には、オススメかも?