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高野秀行『西南シルクロードは密林に消える』

2008-07-30 16:13:41 | ノンジャンル
 高野秀行さんが'03年に発行した「西南シルクロードは密林に消える」を読みました。
 フリーライターとして息詰まりを感じていた著者は、3000年前にあったという世界最古の街道、西南シルクロードを陸上で辿る旅に出ることによって、今の事態の打開を図ります。
 出発点の中国の成都で見た三星堆文明の出土品の美しさに驚き、山椒をやたらにかけた四川料理で腹をやられ、宣賓では崖から突き出した角材の上に棺が乗っている遺跡を見ます。おとなしいことから極貧生活を強いられる苗族のむらを訪ね、帰りに纏足の老婆に会い、美しく清潔な古都・大理での観光と伝統の見事なミックス具合がバリ島を思わせたりもします。白族の鵜飼いを見物した後、知り合いの紹介で出会った反ミャンマー政府ゲリラのカチン族の腐敗している幹部の家で盗難に会い、70万円の全財産を失います。日本から補充の金を持ってやってきたカメラマンとともにカチン軍の将校たちとミャンマーへ密入国し、ジャングルを避けるため、再度中国に密入国したところを検問で捕まり、警察署へ連行され、取調べで凶悪な顔つきの刑事によって著者たちの嘘がばれたにも関わらず釈放され、自分たちがついていた荒唐無稽な嘘に一同が爆笑したりします。旅を再開し、捕まった検問を迂回し、ミャンマーへ再密入国し、カチン軍のナンバーワン、ナンバーツーの人の良さそうな老人たちに協力を求め、予定より2ヶ月も早く始まった雨期の中、ミャンマー政府の検問所を避けるため、ジャングルを徒歩と牛車と象で踏破し、謎の病気を中国気功整体で治してもらい、途中からはインド・ミャンマー付近の少数民族ナガの協力を得てインドに密入国し、インド側のナガ人のVIPたちに混じってインド軍に護衛されながら終点のカルカッタへ到着します。そして日本の領事館に行きますが、2度も密入国しているのでどうしようもないと言われ、領事に付き添われてインド警察に出頭し、強制送還されて日本に帰ってくる、という話です。
 麻薬売買で潤おうミャンマー軍事政権と、麻薬を禁止することで森林伐採で生計を立てざるを得ない少数民族カチン族の反政府ゲリラとの関係が生々しく語られ、現在のミャンマー政権が少数民族が暮らしてきた地域で採れる翡翠を自分たちの物にするため、少数民族に自治を約束していたアウン・サン将軍(現在自宅軟禁されているアウン・サン・スーチーさんの父)を暗殺し、強引に少数民族の土地を奪ったことなどを教えてくれます。そして、この世のものとは思えないミャンマー北部の農村の景色の美しさや、まっすぐな眼差しのカチン軍の兵士の表情などが写真で見ることができます。
 著者が何度も命の危険に脅かされながらも貫徹した旅の記録が350ページを超える量で書かれている本書は、読みごたえ十分で、おそらく著者の代表作となるのだと思います。ノンフィクションが好きな方には、文句無しにオススメです!