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宮田珠己『わたしの旅に何をする。』

2008-07-15 18:29:53 | ノンジャンル
 10日発行のフリーペーパー「R25」に、日本には創業100年を超える企業が10万社以上もあるという記事が載っていました。200年以上となっても約3000社で世界で断トツ1位。2位のドイツが約800社、3位のオランダが約200社なのだそうです。理由は伝統を重んじる文化と、織田信長の楽市楽座や徳川幕府らに守られ仕事に専念することができたこと、「分をわきまえろ」「分相応」という思想があること、3代目当たりで一族経営から脱皮していることが挙げられるようです。それにしてもちょっとビックリする数字でした。

 さて、宮田珠己さんが'00年に書いた「わたしの旅に何をする。」を文庫本で読みました。著者が会社を辞める前後の旅の話を書いたエッセイ集です。
 この本のどこが面白いかというと、結論。全部面白い。著者が経験した出来事も面白いのですが、何といっても文体が面白い。例えば、「トラベラー来たる」では、「(自分が自己紹介した後)彼のほうは、俺はテクニシャンだ、と言った。な、何を言っておるのか、私は普通の男でありお前がテクニシャンであろうとなかろうと全然知ったことではないぞ、と思わず言いかけたが、テクニシャンというのは技術者のことらしい。驚いた。技術者はエンジニアではないのか、紛らわしい英語の使い方するな、と思ったけど相手は本式のイギリス人なので、帰って辞書と相談してからにしよう。」などという文章のオンパレード。面白さが少しは伝わったと思います。
 そして内容の面白さでは、「ちょっとずそずわしますが」を代表として推します。地下鉄構内で中国語会話の本を買うと、「早上好」は「おほようございますよ」さらに「ありがとうでぞいます」そして「であんをさい」「いれはどうごしょう」「どうぞねかはくだちい」と意味不明になってきて、著者は「一体、どうなっているのか西北大学」と発行している大学を責めます。そして「『ね元気ぞすか』『まあまあごす』なんだか力士っぽい会話である。調べてみると、この他にも力士ふうの会話はたくさんあり、代表的なものを次に記す。『いまは九時二十五分ごす』『てれがあれとり上等ごす』『わつりごす』『ぴつそりごす』九州男児のつもりなのかもしれない」と来て、著者は「お」と「ね」、「ご」と「で」を取り違えてることに気付くのです。そして「『たろたろ失礼します』『スープピにしますか』馬鹿なんじゃないか。『遠いのよ(遠くないのよ)』これはいきなり桃井かおりみたいだ。意味はあってるぞ。そして次の作品。『ミンブしますからどうぞてちらへ』ミンブって何だ。『頭、顔、手、足、アッヤー』アッヤーて何なんだ。それは体の一部か。(中略)『ちょっトずそずわしますが、郵便局は何時から開きますか』ずそずわするらしい。(中略)『どのようにずりしましょうか』ひょっとして、わざとやっているのか西北大学。」という具合になっていきます。これは内容も面白いですが、それを最大限に引き出す文体あってこその好例だと思います。
 ということで、面白いものが好きな人なら誰でも楽しめる本だと思います。オススメです。
 なお、詳しい内容を知りたい方には、「Favorite Books」の「宮田珠己『東南アジア四次元日記』」のコーナーにアップしましたので、是非ご覧ください。

豊島ミホ『東京・地震・たんぽぽ』

2008-07-14 15:31:20 | ノンジャンル
 10日発行のフリーペーパー「R25」に、国別のガソリンの値段が載っていました。今年の5月において、リッター当りの値段の高い国はイタリアの243.9円、ドイツの236.6円、フランスの231.2円、イギリスの227.9円、スペインの191.0円、安い国だと市場に出さずに直売しているベネズエラが約5円、サウジアラビア約13円、UAEが約39円、国家統制している中国が約85円、問題のアメリカは102.7円でした。高い国は消費税のせい、アメリカが安いのはほとんど税金がかけられていないからです。日本はこのところのガソリン価格高騰で高速道路の渋滞が半減したそうです。アメリカも日本も環境税としてガソリンに税金をかけ、ガソリンをなるべく使わせない施策を早くとってほしいものです。

 さて、豊島ミホさんの'07年作品「東京・地震・たんぽぽ」を読みました。東京に震度6の大地震が起こった時のエピソードを14の短編にまとめた本です。
 大地震だけではなく、広い草原が広がる公園も何回も出てきます。また、蓮賀といういじめっ子が出て来る話が「どうでもいい子」と「復讐の時間」と2話あり、そこではいじめっ子に一早くついて幼なじみを裏切る女の子と裏切られた女の子がそれぞれの主役となっています。
 そうした中でも私が一番面白かったのは「出口なし」です。彼らの暮らしに対する考え方に好感が持て、この後どうなるのだろうか、という期待感と、死を覚悟で煙に包まれるビルに飛び込んでいく主人公の悲壮さが胸を打ちました。以下、「出口なし」の簡単なあらすじです。
「地震の後、俺とマヨに三原さんは普段の5倍やるから、歌舞伎町の路地奥2ケ所に火をつけて来いと言い、液体の入ったビンを渡した。俺はこれをするともう後戻りできなくなると思ったが、断る勇気がなかった。
 マヨはただの放火じゃん、と言ったが、俺は中に人がいたら、殺人だぞ、と言った。逃げちゃおうか、と言うマヨに、やらなきゃ俺たちが消されるだけだ、と答えた。
 俺は高校を落ち、田舎でぐだぐだしているのに飽きて、先輩を頼りに東京に出て、いろんな人からいろんな『仕事』を請け負い、中国人なのでなまりが出るとイジメられるため無口で通していたマヨと知り合い、そのうちに2人とも三原さんに気に入られ、アパートに住めるようになり、月に5日ほど仕事をしながら暮らす今に満足していた。
 地獄絵図の中を進んでいき、青空を見ると猛烈な吐き気に襲われたが、時間が迫っていた。
 階段を上がっていき火をつけようとすると、エレベーターの中に人がいるような音がする。俺が火をつけられないでいると、マヨは俺が火をつけるから下で待っててくれ、と言う。しかし、いくら待ってもマヨは降りて来ず、ビルは煙で包まれていく。俺は煙の中へ突進していった。」
 短い話だと3ページしかない短編のオンパレードですが、そこそこ楽しめた気がします。今後、このうちのどれかを膨らませて長編にしてもらえたら、ぜひ読みたいと思わせるレベルでした。オススメです。
 なお、「出口なし」以外の短編のあらすじを「Favorite Novels」の「豊島ミホ」のコーナーにアップしておきました。興味のある方はご覧ください。

山田宏一著『日本侠客伝 マキノ雅弘の世界』

2008-07-13 15:12:17 | ノンジャンル
 10日発行のフリーペーパー「R25」にエネルギー危機、食糧危機の後に来るのは水危機だという記事が載っていました。現在日本が輸入している食品ができるまでにどれだけの水を使っているかが表になっていましたが、1年間で一番たくさん水を使っているのは「とうもろこし」で145億立方メートル、2位が「牛肉」で140億立方メートル、3位が「大豆」で121位立方メートル、4位が「小麦」で94立方メートル、5位が「豚」で36立方メートルとのことです。億立方メートルという単位が何かとんでもなさそうで怖いのですが、実際アラル海は灌漑のために水が使われ干上がってしまいましたし、農業国では既に水不足の状態が生まれているそうです。日本はせっかく水が豊富にあるのですから、できるだけ食糧は自給できるようにしたいものです。

 さて、山田宏一氏が今までに出されたマキノ雅弘監督に関するインタビューや評論から構成した、日本侠客伝シリーズを中心としたマキノ監督の魅力を探る本である「日本侠客伝 マキノ雅弘の世界」を読みました。
 1954年に発行された「映画百科辞典」におけるマキノ雅弘の紹介文「(前略)32年2月以後(中略)完全な商業監督に堕した。(中略)戦後の作品は(中略)凡作に終始している。」に反発して「私がマキノ作品のファンになったのは戦後(中略)マキノ正博から雅弘になって『完全な商業監督に堕しあた』あと、それも『凡作に終始している』時代である!」と書き、心意気を見せて始まるところから、この本自体が「いなせ」で「いき」なマキノ雅弘の映画の雰囲気を醸し出していると言えるでしょう。よくぞこれだけの資料を適格にまとめあげ、一冊の本にできたなあ、と思いました。
 中でも印象的だったのは、真正面から「鴛鴦歌合戦」を論じた部分と、「日本侠客伝」シリーズにおける天津敏の存在の大きさを論じた部分でしょう。とりわけ、「日本侠客伝」シリーズでは、高倉健や藤純子を論じるものはあっても、天津敏を論じたものはほとんど無かったと思います。私も山田宏一氏と同じく天津敏の存在の大きさを身に染みて感じていたので、胸のすく思いでした。
 最後の森繁久弥に対するインタビューも今となっては貴重な証言です。演出中のマキノ監督の姿が見れる写真などと共にこの本の見どころの一つでしょう。また未知のマキノ監督の傑作も多く紹介されています。
 そして多くの引用を使われているワイズ出版の本(ちなみにこの本自体もワイズ出版の本)の多彩さに驚きました。様々な俳優や監督、プリデューサーに関する本を出版しているので、興味のある方は一覧されるといいと思います。
 マキノ雅弘監督のファンならずとも、映画一般のファンにもオススメの本です。

ベルナルド・ベルトルッチ監督『リトル・ブッダ』

2008-07-12 16:49:13 | ノンジャンル
 サミットが終わり、先進国と中国・インドなどの発展途上国との間での温暖化ガス排出規制に関する合意はできなかったのですが、発展途上国が先進国に対し、まず先進国が排出規制をするべきだ、との言い分が正しいのかどうか、一昨日の朝日新聞の朝刊に記事が載っていました。
 一人当たりの年間二酸化炭素排出量1位はアメリカで20.6トン、2位はカナダで20トン、3位はガクンと落ちてロシアの10.6トン、日本は4位で9.9トンでした。それに対し、中国は3.8トン、インドは1.2トンと中国・インドの言い分が正しい結果となりました。中国・インドは貧富の差が激しいということもありますが、まず先進国、特にアメリカが範を示さなければならない、という統計的な結論です。ブッシュ後の米大統領には二酸化炭素排出規制に積極的に取り組んでいただきたい、と思います。

 さて、スカパー260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、ベルナルド・ベルトルッチ原案・監督の'93年作品「リトル・ブッダ」を見ました。
 シアトルに住む9才の少年、ジェシーの前に高位のラマ僧が現れ、ジェシーがブッダの魂を受け継ぐ尊師ラマ・ドルシェの生まれ変わりであると告げられます。母は反対しますが、父と一緒にジェシーはネパールに行き、他の継承者の候補であるネパールの男の子と女の子に会います。高位のラマ僧は様々なテストをしますが、3人ともことごとくパスし、最後にはお告げに頼りますが、お告げは3人ともに後継者だと言います。そして3人は後継者となる儀式を受け、その儀式の後、高位のラマ僧は死にます。一旦シアトルに帰ったジェシーと両親は、高位のラマ僧からもらったラマ・ドルシェの遺灰を大平洋に捲きます。
 実際には上記のストーリーに、ジェシーが読むブッダの一生の物語が平行して語られます。シアトルのシーンは青い光、ブッダとネパールのシーンは赤い光で撮られ、「地獄の黙示録」の虎が出るジャングルのシーンのような微妙な光をヴィットリオ・ストラーロのカメラが見事に写し出しています。好感の持てる映画ではありますが、とにかく長い。2時間30分を超える長さです。しかもどうも私は以前に一回この映画を見ているような気がするのですが、決定的なシーンというのがないのです。それだけ印象が薄いということでしょうか? あと、成人したブッダを演じたキアヌ・リーブスが美しかったことを付け加えておきます。


東京都の温暖化ガス削減策

2008-07-11 18:20:28 | ノンジャンル
 昨日発行のフリーペーパー「R25」に、東京都が2010年から実施する温暖化ガス排出規制に関する記事が載っていました。2020年までに温室効果ガス排出量を2000年比で25%削減する、というものです。削減にはEU並みのキャップ&トレード型の排出権取引制度を導入し、目標以上に削減できた事業所からその余分に削減できた分を売買することができるようにするそうです。二酸化炭素の排出削減を義務づけられる事業所は原油換算で年間1500キロリットル以上のエネルギーを消費する事業所で、対象となるところは約1300。しかもここで言っている事業所というのはビル単位なのだそうです。
 そうなると、東京都内の二酸化炭素排出量ランキングは1位が六本木ヒルズエネルギーセンター(森タワーの地下にある大規模な地域型熱電供給施設)で13万7043トン、2位が東京都下水道局・南部スラッジプラントで13万6736トン、3位が奥多摩工業・石灰化工本部・・氷川工場で12万804トン、4位がブリジストン東京工場で11万7101トン、5位が東京都下水道局・砂町水再生センターで11万6669トン、となっています。
 これは楽しみですね。国が産業別の規制目標を決めることもできずにいるところを、ビル単位で規制をかけるというのですから、すごいことです。なぜ産業界から反対の声が出なかったのか、不思議なほどです。もともと東京は地価が高いので、工場が少ないからでしょうか? というのも東京都はあれだけ人がたくさん住んでいるにもかかわらず、日本全体の二酸化炭素排出量のわずかに1.6%しか占めていないというのです。もし東京都下の施設が規制目標を達成できない時には他の県に施設を移すと考えているのでしょうか? でもこれも費用がかかるのは目に見えてますし、よく分かりません。
 都がどのようにしてこれだけの計画を実行に移すことができたのか、ぜひ石原都知事に聞いてみたいところです。少なくとも実施開始の2010年が近づけば、その辺の事情に関する記事がマスコミにも出て来るかもしれません。注意深く見ていきたいと思います。