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アキ・カウリスマキ監督『希望のかなた』

2018-01-19 05:56:00 | ノンジャンル
 先日、アキ・カウリスマキ監督の’17年作品『希望のかなた』を川崎アートセンターで見てきました。パンフレットの「ものがたり」から、一部改変してあらすじを引用させていただくと……、
 北欧フィンランドの首都ヘルシンキ。港の船に積まれた石炭の山から、煤まみれの男の顔が現れる。それはシリア人の青年カーリド。内戦が激化する故郷アレッポからヨーロッパへ逃れた彼は、差別や暴力にさらされながらいくつもの国境を越え、偶然にもヘルシンキに流れ着いたのだった。駅のシャワー室で身なりを整えて警察に出向いたカーリドは、難民申請を申し入れ、中東やアフリカからの難民や移民であふれる収容施設に入れられる。地中海から遠く離れたこの北欧の町にも、多くの難民が押しよせているのだ。カーリドは一緒に入所した気さくなイラク人マズダックと仲良くなるが、マズダックいわく、難民が異国で受け入れられる秘訣は“楽しそうに装いながら、決して笑いすぎない事”らしい。
 入国管理局での大事な面接で、カーリドは故郷でおきた悲劇を明かす。様々な勢力が対立するアレッポで、誰の仕業かもわからない空爆によって彼の家は派遣され、家族や親類も命を落としていた。そのうえ、家族でただ一人生き残った妹ミリアムとは、ハンガリー国境での混乱で生き別れとなっていたのだ。カーリドは面接官に、今の唯一の望みは妹を探しだし、フィンランドに呼びよせることだと語る。ここには妹の未来があり、自分の未来はどうでもいいのだと。
 ヘルシンキで衣類のセールスをして暮らすヴィクストロムは、さえない仕事と酒びたりの妻に嫌気がさしていた。ヴィクストロムは無言のままに結婚指輪と部屋の鍵を妻に残し、愛車のクラシックカーに乗りこみ家を出る。彼はレストランオーナーとして新しい人生を始める夢を抱いていた。シャツの在庫を処分した金すべてをポーカーにつぎ込んだヴィクストロムは、イチかバチかの賭けに出た心意気が幸運をよびよせたのか、ゲームに大勝し大金を手にする。
 そうしてヴィクストロムはゴールデン・パイントという名のレストランを手に入れる。その店には常連がいて、ベテラン従業員もいるというふれこみだったが、実際には、やる気のない調理人が作る料理はミートボールと缶詰めのサーディンのみ、常連はもっぱらビールを飲むばかりで儲けもわずか。だがひと昔前から時が止まったような店で、風変わりだが気のいい従業員に囲まれて、ヴィクストロムは自分の居場所を築いてゆく。
 ある日、当局はカーリドをトルコ経由でシリアに送還する決定をくだす。カーリドは妹を探すために不法滞在者としてフィンランドに留まることを決意し、収容施設から逃走するが、街中で“フィンランド解放軍”を名乗るスキンヘッドのネオナチに襲われかかる。障害者たちの助けもあり何とか難を逃れたカーリドに、救いの手をのべたのはヴィクストロムだった。店のゴミ捨て場で寝泊まりしていたカーリドと、一度は殴り合いになりながらも、ヴィクストロムはカーリドをレストランに雇い入れる。そのうえ、食事に寝床、偽の身分証まで用意してやる。繁盛を狙った寿司屋への看板替えは見事に失敗に終わるものの、カーリドとヴィクストロム、そしてレストランの従業員の間には、家族のように親密な友情が芽生えはじめるのだった。
 そんな中、マズダックから妹ミリアムがリトアニアの難民センターで見つかったとの一報が届く。ヴィクストロムの機転のおかげでヘルシンキにたどり着いたミリアムと、念願の再会を果たすカーリド。カーリドの未来に光がさしはじめたかに見えたその時、スキンヘッドのネオナチが彼の帰宅するところに再び現れ、飛び出しナイフでカーリドの腹を一刺しする。仰向けに倒れるカーリド。逃げ去るネオナチ。一方、ヴィクストロムの店はダンスミュージックを導入し、盛況だ。店が終わり、車を駐車場に入れたヴィクストロムは、駐車場の倉庫であるカーリドのねぐらが無人のままで、血痕が残っているのに気づく。
 翌朝、ミリアムはレストランの女子従業員に送ってもらい、警察に難民申請に向かう。警察の前の横丁ではカーリドが待ち伏せしていて、ミリアムを励まし、警察へ向かわせる。
 川のほとりの木陰。気持ちよさそうに横たわるカーリド。その顔にはレストランで飼うことになった捨て犬がなついてきて、映画は終わる。

 台詞を最小限にとどませたり、何回も出て来るネオンサインなどのアップという点で、監督が尊敬している小津と共通する面もあると思いましたが、演技がほとんど無表情というか過度の演出を施されていないという点ではブレッソンにも似ていると思いました。カウリスマキ監督特有の人物のフルショットも随所に見られ、作品が主張している社会的問題以外でも、「映画」として楽しめる作品だったと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto