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山田宏一『ヒッチコック映画読本』

2018-01-09 07:40:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんの’16年作品『ヒッチコック映画読本』を読みました。
 「あとがきに代えて」から引用させていただくと、「アルフレッド・ヒッチコック監督の映画について、これまで(1970年代半ばごろからざっと40年間に)いろいろな形で、いろいろな媒体に、私なりの『ヒッチコック映画』体験も重ね合わせつつ書いたり語ったりしてきたものをまとめた一冊です。同じ作品、同じシーン、同じスターなどのことをしつこく何度もくりかえして書いたり語ったりしているのも、私なりの想いがそれだけこもった結果です。いつもながら、映画への同じ想いを共有する、その意味での同志たちに、心をこめて、映画を映画的に映画の言葉で語ることを心がけました。
 以下のように本書を構成してみました。
 第一章は総論としてヒッチコックのキャリアや映画史上の位置づけとともに、『スリラーの神様』『サスペンスの巨匠』とよばれるまでに至る映画作家の原点と言うべきものになった妄想あるいは妄執のようなもの、恐怖の本質やサスペンスの手法などを私なりに追究、考察した『覚え書』です。フランソワ・トリュフォーがヒッチコックに50時間にわたるインタビューをおこなった研究書『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』の翻訳中にトリュフォーに会ってささやかなインタビューをできたことも収穫でした。
 第二章はヒッチコック映画の官能的な中核になる女優とそのヒロイン---犯罪的美女-についての私なりの映画的な断想です。『めまい』の美しく官能的なヒロインを演じたキム・ノヴァクに会えたことも私には至福の出来事でした。
 第三章はイギリスとドイツでサイレント時代に監督としてデビューしたヒッチコックが主としてスパイ・スリラーともよぶべきジャンルを制覇して国際的評価を得ていく1930年代の軌跡をたどってみました。
 第四章はハリウッドの大プロデューサー、デイヴィッド・O・セルズニックに招かれて渡米したヒッチコックが、契約に縛られつつも、第二次世界大戦中のいろいろな条件を乗り越えて試みたアメリカ映画へのいくつかの挑戦にスポットをあててみました。
 第五章はセルズニックとの契約から解放されたヒッチコックが、独立プロダクションを設立、自らの作品の最終編集権を持つプロデューサーとして、試行錯誤をくりかえしながらも、トリュフォーが言うところの『アメリカ映画的様式化』に向ってひたすら邁進していく『ヒッチコック映画』のすばらしさへの私なりの讃歌です。
 第四章の冒頭の蓮實重彦氏との対談(『海外特派員』をめぐって)、第五章をしめくくる秦早穂子さんとの対談(『サスペンスとエロティシズム』について)は、できたら多くの方々に読んでほしいと思い欲張って再録させていただきました」。

 ヒッチコック映画をまだそれほど見ていない人も、すでにその大半を見てしまっている人も楽しめる本になっていると思います。オススメです。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto