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オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』その1

2017-10-05 05:23:00 | ノンジャンル
オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』その1

 朝日新聞で紹介されていた、オマル・ハイヤームの『ルバイヤート』を読みました。
 訳者の陳舜臣さんによる「解説」から引用させていただくと、
・「(前略)彼の生死の年代は明らかではないが、西暦1048年に生まれ、1131年に死んだと考えられている。イランの記録によれば、『知の王者であり、科学においては比肩する者なかりし』オマル・ハイヤームは、ヒジュラ暦517年、すなわち西暦1123年に、ニーシャープールで死亡したことになっている」
・「オマル・ハイヤームはニザームの文化擁護策に保護された学者で、時には官について暦の改定に従事したこともあるが、生涯の大部分を静かに送った人である。彼の内心には鬱々たる不満と、イスラム教に対する不信がくすぶっていたけれども、ハサンのように直接行動に出るにはあまりにも無力なインテリであった。このような階層の文化人は当時少なくなかったであろうと想像されるが、オマルはそれらの人たちを代表する一人物であったのだ」
・「オマル・ハイヤームはルバイヤートの作者として有名である。『ルバイヤート』とは『四行詩』を意味する『ルバーイー』の複数形であるから、『四行詩集』と訳されるべき語であり、イラン本来の言葉ではなくアラビア系の語彙である」
・「ルバーイーはそれ自体一個の独立したものであって、本質的にはエピグラム(警句)である。最終行は『心底に釘を打ち込み』で終結をつけるわけである。その独立性が重要な条件であるため、形式は四行詩であっても、それが連続した叙事詩の一部となっているような場合には、ルバーイーとは言えないことになる。この点、漢詩の絶句を彷彿させるし、惜辞の簡潔を尚(たっと)ぶ点でも漢詩の表現に似ている」
・「オマル・ハイヤームのルバイヤートは、ほとんど世界のあらゆる言語に訳されている。インド・ボンベイのサクラトワッラは、1936年までにじつに42種の言語に訳されたルバイヤートを集めているが、同氏によれば、それもロンドンのポーターの蒐集より少ないとのことである」
・「しかし、われわれがオマル・ハイヤームの詩を読むとき、そこに無神論的な、むしろ反神論的なものを感じるのである。

  死者と生者とをつくりし君は汝(なれ)なり
  この散乱せる天空を支うる者は汝なり
  われ悪人ならん されどこの奴(やっこ)の主は汝なり
  罪は汝に帰せらる 創造者は汝なれば

この四行詩は、ナズムッディーン・ラーズィが、オマル・ハイヤームを『聖ならざる哲学者、異教徒にして物質主義者』として攻撃したときに例証とした。事実、これは明らかに神へ非難を浴びせたものと解釈される」
・「神は万能であるべきはずだから、我らがこの世で悪業をなすことくらいは予想できたであろう。われわれを造ったのは『彼』であるから、彼こそは責任を負うべきものである。それなのに、どうして審判の日にわれわれを焼こうとするのであろうか。『世界の陶工』である神は何という不可解なことをするのであろう。

  神この世の命を形づくれるとき
  何の理ありて瑕瑾(きず)をつけしや
  良ければ何故(なにゆえ)かれらを砕く
  悪(あし)ければその罪誰に帰すべき

  いざ言え 世に罪をなさざる者は誰ぞ
  いざ言え 罪を犯さずして人如何(いか)に生くるや
  われ悪をなし 汝(なれ)懲罰せんとす
  いざ言え われと汝と異る処(所)如何(いかん)

  汝(なれ)逃れ得ざる支配をなし
  しかもわれらに逃れよと言えり
  故(ゆえ)に汝の命令と禁令との間に罪あり
  杯を覆(くつがえ)して酒を洩らすなと言うに等し

  わが行く道に汝(なれ)の陥穽を設け
  言いけらく 足を進めんかわれ汝を捕えんと
  汝の威令天下に遍(あまね)くそむく者なし
  汝すべてを支配し且(かつ)叛逆せよと言う」

・「当時のイランは、正統主義に凝り固まった統治者の下にあり、理性の暗黒時代であったのである。もし、オマル・ハイヤームにして、かの『山の長老』ハサン・サッバーフの半分もの積極性があったなら、イランにおけるルネッサンスの領導者となり得たかも知れない。
 しかし時世がオマルをそうさせなかったし、彼もまた、一生妻帯もしなかったほど孤独で隠遁的な人間でもあったから、彼の思想もそれだけの力をもち得なかった」
・「それなのに、オマルは『嘲笑する哲学者にして、酷薄な現実主義者』と言われ、自分を熱烈な宗教的情緒のなかへもってゆこうとはせず、傍観的な冷笑者であったようだ。

  学びと文字とに心とらわれし人
  粋を集めて友のランプたらんとし
  暗夜に照せど道はあらず
  一場の教話をなして眠りにつきぬ

 これはイスラム教の予言者マホメットを風刺したのだと考えられている詩であるが、動詞語尾が複数形を示している点からみて、マホメット一人ではなく、世の多くの予言者や宗教家の益なき仕草を諷したのではなかろうか」(明日へ続きます……)

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