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西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』その1

2011-08-27 04:32:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、西原理恵子さんの'08年作品『この世でいちばん大事な「カネ」の話』を読みました。「カネ」をキータームとして書かれた西原さん自身の半生記です。
 わたしは、高知県の漁師町で、酒乱の夫から息子を守るために離婚したばかりのお母さんから生まれます。幼少期を過ごしたおじいちゃんおばあちゃんの家は、でっかい大平洋の真ん前で、その頃の暮らしは、今思い出しても胸の奥があったかくなる感じでした。子どもたちは海の幸を遊び道具とし、南極海から「子どものお土産に」と漁師さんが勝手に連れて来てしまった「野良」ペンギンがいたりもするというのどかさ。気候がよくて、食べ物に困らなければ、お金なんかそんなになくたってカリカリしないで暮らしていけるということを、後になってわたしは知るようになります。
 しかしお母さんが新しいお父さんと再婚し、殺伐とした工業団地に住むようになると様子が一変します。お金がない主婦たちは殺気立っていて、太っていて、長持ちさせるため強いパーマをかけた結果、髪型が皆パンチになっています。それまで穏やかだったうちのお母さんも、朝からけたたましい勢いで怒るようになり、その頃のお母さんの笑顔を、わたしは思い出せません。新しいお父さんは、わたしのことを猫っかわいがりしてくれましたが、バクチばかりして家にほとんど帰ってこないため、やがてお金がなくなり、両親のケンカが絶えず、その仲裁に疲れたわたしは、ある日、学校で孤立していたオカマのリョウくんと見に行った映画『イージーライダー』と『真夜中のカウボーイ』に魅了され、疎外感に悩まされていたわたしは「誰にでも、自分の心にちゃんとしっくりくる世界があるんだ。もしないなら、自分でそういうものを作っちゃえばいいんだ!」と思えるようになります。
 わたしが住んでいた町の荒廃ぶりは半端なく、どの家にも窓ガラスがなく、一部屋に9人住んでいるなんて家もざら、子供たちは何日も風呂に入れてもらえずに垢で薄汚れて真っ黒、服もよれよれ、生長すれば「不良」への道をまっしぐら。貧しさから様々なものを奪われた大人は、やり場のない怒りを溜め込んで、それを子供への暴力という形で発散させ、子供たちはそんな家にいられず、かといって学校も面白くないので、先輩のアパートなどの転がり込み、やがて女の子たちは、いい目が見られる若いうちに町から出ていってしまい、そんな選択もできない男の子たちは、意味なく地元で暴れ回る。わたしは、お父さんが事業を起こして一時それが成功したため、中学からお嬢さん学校に入れられましたが、校則が厳しく体罰も日常茶飯事のその学校が大嫌いで、「絵空事」のウソくさい説教ばかりする先生たちも好きになれませんでした。
 飲酒がばれて理不尽に高校を退学させられたわたしは、お父さんの後ろ楯を得て、学校と裁判で戦いましたが、わたしが大検に受かったため、高校が和解金を支払う代わりに退学することを了承します。その後、お母さんの勧めもあり東京の美大を受験しますが、受験日当日にお父さんが首を吊って自殺。お父さんは周囲には見栄を張ってハデな生活を続けていたのですが、実はバクチで全財産を失い、最後にはお母さんが子供たちのためと思ってコツコツと溜めて来た財産にまで手をつけようとして、お母さんに暴力を振るった末の自殺でした。お父さんに殴られて腫れ上がった顔と頭で、葬式にやって来た債権者たちに頭を下げ続けていたお母さんは、残った財産から何とか掻き集めた140万円の現金のうち、美大に受かったわたしに100万円を持たせて、東京への送り出してくれます。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/