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瀬尾まいこ『おしまいのデート』その2

2011-08-08 00:10:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 『ファーストラブ』では、俺は高校2年の学年末テストを終えて、帰りのバスを待っていると、1年から同じクラスだったにもかかわらず、部活もグループも違い、それまで口を聞いたこともなかった「男子」の宝田から声をかけられます。最近の様子や好きな食べ物、嫌いな食べ物を聞いた宝田は、最後に今度の日曜日に俺に特に用事がないことを確認すると、駅前で10時に待ち合わせして一緒に遊ぼうと強引に俺に約束させ、去っていきます。当日遅れて来た宝田と映画を見た俺は、宝田が作って来た弁当を公園でおいしく頂きますが、今後のこともあると思い、付き合うのは無理だと言うと、宝田は笑い出し、先日終礼で宝田が司会をしていた時に助け舟を出してくれたことへのお礼で弁当を作ってきたのだと告白します。誤解が解けた俺たちはバッティングセンターで汗を流した後、スーパー銭湯でもすっかり打ち解け、夕方に別れます。しかし翌日、先生によっていきなり宝田の大阪への転校が発表され、俺は「何で日曜に一言も言ってくれなかったんだ」と宝田に詰め寄り、「お前のことはいつまでも忘れないからな」と熱く語りますが、宝田はそんな俺にさわやかな笑顔を残して、去っていくのでした。
 『ドックシェア』では、27才で結婚し、30代になって開き直り、離婚して自由を手に入れた私は、すっかり頑丈な女になって、怖いものなどほとんどなくなっていました。いつものように夜の公園を横切って帰ろうとして、腹を空かした捨て犬を見つけた私は、以後餌をやるようになりますが、ある日から犬によくない中華料理が置かれるようになります。やがてそれが中華料理店でバイトをしている男子学生の仕業であることが分かり、二人で協力して犬の世話をするようになりますが、老齢だった犬はやがて死に、二人で犬を埋葬します。これからも何かシェアしていきたい気になっていた二人は、ゆっくり知恵を出し合って考えていこうと言い合うのでした。
 『デートまでの道のり』では、保育士の私は、2年担当しているカンちゃんのお父さんの脩平さんがカンちゃんに接している姿に一目惚れし、早くに妻を亡くした脩平さんと、カンちゃんがプール教室に行って家を留守にする日曜日の午後に秘かに会うようになりますが、私を避けるそぶりを見せるカンちゃんに、私は脩平さんとのことをなかなか言い出せません。ある日、直接カンちゃんに「カンちゃんと仲良くするにはどうすればいいかな」と聞くと、カンちゃんは怒ってその場を去り、周囲の子たちからは、既に先生はカンちゃんとすごく仲がいいのに、あんなことをカンちゃんに言うのはおかしいと言われます。そして学習発表の日、私は熱を出してしまいますが、カンちゃんは「今日のお遊戯がうまくいったら、3人でデートしよう」と私を励ましてくれます。そして発表は大成功に終わりますが、私は喜ぶカンちゃんに「だめだったじゃん」と言い、次こそうまくやって3人でデートしようとカンちゃんに約束するのでした。
 
 瀬尾さんの本は、活字が大きく、短編の長さも30ページほどで、すごく風通しのよい本だなと今回も感じました。私たちが生きているこの世界、醜いこともドロドロしていることもたくさんあると思うのですが、中学校の先生を現役でなさっている瀬尾さんが、あえてこうした「フィクション」としての「青春」を書いている姿を想像するだけで、何か感動的というか、胸が熱くなるというか、そんな感じがしました。今回の本で特に私のお気に入りの短編は『ファーストラブ』と『デートまでの道のり』でしたが、皆さんはどの短編がお気に召すでしょうか? 是非手に取ってお読みいただければと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/