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アラン・レネ監督『夜と霧』

2011-08-14 04:18:00 | ノンジャンル
 アラン・レネ監督、撮影;ギスラン・クロケ(『バルタザールどこへ行く』『ロシュホールの恋人たち』などの撮影も担当)、音楽;ハンス・アイスラー(ブレヒトの協力者)、オーケストラの指揮;ジョルジュ・ドリリュー(トリュフォー映画の音楽)、ナレーション;ミッシェル・ブーケという'55年作品『夜と霧』を、スカパーの洋画★シネフィル・イマジカで再見しました。
 草地からパンダウンすると鉄条網が現れ、それを横移動撮影する画面のバックに「もはや鉄条網に電流は流れない」というナレーションが流れます。「1933年 機械の行進。一糸乱れぬ行動」のナレーションにナチス党大会の映像。「建物は住人を待っている」のナレーションに、建設された各地の収容所の映像。ユダヤ人狩り。「貨車に乗せ収容所へ」。貨車へ行列するユダヤ人の人々。「鍵をかけ封印された貨車。飢えと渇き。窒息と狂気」「次は夜と霧の中」では、霧の夜に収容所に到着する貨車の映像。廃墟と化した収容所の現在の映像に「遠くに火葬場の煙。ナチ好みの演出」。「衛生上の名目で裸にされ屈辱に耐える」「丸坊主」「入れ墨」「分類」「不可解な序列」「青い縞の服。時に“夜と霧”へと分類される」。階級の説明とそれに応じた映像。バラックを移動撮影しながら「映像で表現できるのか。この恐怖を」のナレーション。納屋、作業所、馬小屋などの外観を移動撮影。死と隣り合わせの過酷な労働で、次々に弱者が命を落としていったことを映像とナレーションで説明。コンクリート床に並ぶ穴の映像、それが便所であり、それが果たした役割についての説明。鉄条網のすぐ外に、今まで過ごして来た日常が囚人に見えていたことが説明されます。監視員の暇つぶしに殺された人々の映像。絞首台、銃殺刑の庭の映像。選ばれてトラックでいずこともなく連れ去られる“黒い輸送”の説明。抵抗の証として残る木彫りの像や箱、メモ類。“医務室”では死の注射がなされ、“外科ブロック”と呼ばれた場所では四肢切断などの人体実験が行われたという説明と映像。化学工場での毒物の生体実験。入所時に取り上げられた身分証と、死者の名前が赤い線で消された分厚い入所者リスト。“お気に入り”を迎えていたたカポ(ドイツ人の刑事犯で、囚人への直接的な命令役)の自室の映像。所長の官舎。カポ用の売春宿。収容所内の監獄は独房で、絶えまない拷問が行われていたというナレーションと映像。1942年のヒムラーの視察と「生産的に処分しろ」との命令。それ以後行われた、輸送されてきたユダヤ人の選別と毒ガスによる効率的虐殺。“シャワー室”の天井の爪痕。虐殺された遺体と、火葬場以外で燃やされた遺体の映像。焼却炉の移動撮影。物質庫に保管された遺品の山の映像。女性の髪の毛で作られた毛布は売られたという説明。骨は肥料に使われたりしたという説明と、人間の首の詰まった樽と首のない数々の胴体の映像に、それで石鹸を作ろうとしたという説明。「皮膚は‥‥」というナレーションはフェイドアウトしていきます。1945年に収容所は拡張され、人口10万人になりますが、敗戦を迎え、連合軍が到着。処理されず野ざらしにされた死体をブルドーザーで穴に。収容所を出て行くドイツ人たち。死体を担いで歩く人。穴に放り込む人。法廷でカポやドイツ人将校は「命令に背けなかった」「自分たちに責任はない」と言い張り、戦争はまだ終わっていないというナレーションとともに映画は終わります。
 滑らかな斜め前方への移動撮影が『去年マリエンバードへ』を既に予言しているようで、それ以外の映像も圧倒的な迫力でした。音楽も、ナレーションも素晴らしく、内容の悲惨さにもかかわらず、改めてこの映画の素晴らしさを再認識した次第です。まだ見ていない方、必見です。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/