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北尾トロ『駅長さん! これ以上先には行けないんすか』

2011-08-20 06:14:00 | ノンジャンル
 ポール・W・S・アンダーソン監督の'10年作品『バイオハザード? アフターライフ』をWOWOWで見ました。アンブレラ社が開発したT-ウイルスの蔓延によって壊滅した地球。怪物化した人間たちに囲まれて、ロスの刑務所の中に立てこもっていた人々を発見したアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、健康な人々が集結していると思われる、近海に浮かぶタンカーに向かって、彼らとともに進んでいきますが‥‥という話でしたが、怪物化した人間たちの造形が、その動きとともに前作などよりも凡庸になっていて怖くなく、ラストのボスキャラとの対決も『マトリックス』のあからさまなイタダキ(しかもこちらも凡庸)で、かなりガッカリしました。続編をほのめかす終わり方でしたが、次作もあまり期待しない方がいいかもしれません。

 さて、北尾トロさんの'11年作品『駅長さん! これ以上先には行けないんすか』を読みました。終着駅がどこともつながらない鉄道に乗り、そのレールの最終地点の様を確認し、またその終着駅の置かれた立場や状況を考えるという紀行文です。
 トロさんの旅のお伴を務めたのは、今年53才になるトロさんの2回りほど年下のフリー編集者・宮坂さん。彼がカメラ撮影と旅のスケジュール立案を担当して、二人の珍道中(?)が展開されていきます。先ず乗ったのは、関東屈指の人気を誇る観光鉄道・わたらせ渓谷鐵道。足尾銅山の鉱石を運ぶために作られた同線は、現在では360度の大自然パノラマが楽しめ、クルマのドライブでは望めない迫力を得られる一方で、鉱毒で禿げ山となった山肌も見てとることができるそうですが、『足尾銅山観光』という足尾銅山の歴史を説明する施設は期待外れだったことが語られます。その後も、名物のマーボチャーハンがめちゃくちゃおいしいという茂木が終点の真岡鐵道、進むにつれて里山の気配が濃厚になってくる久留里線、終点の常陸太田駅の商店街が町起こしに熱心な水郡線など、全部で21本の「行き止まり」の鉄道が紹介されています。
 気楽に読める読み物としての魅力の他に、旅のマメ知識として、未知の土地で何か食べる時は、蕎麦やうどんに外れが少ないこと、夏の袋田の滝は水量が少なくて避けた方がいいこと、鉄道の駅があるということは地元にとって安心できる一方、バスでしか繋がっていないというのは、いつ廃止になってもおかしくないという不安があり、鉄道ほどの安心感を地元は得られないこと、旅といってもその大半は日常の延長なのだから、旅先という理由だけで羽目を外さなきゃとか、金を使わなきゃとか、好奇心を全開にしなきゃとか、考える必要はないこと、などなど、結構知って得する情報も盛り込まれていました。特に、最近徳島へ2泊3日の旅行をしてきたばかりの私としては、最後の「旅は日常の延長」という「教訓」は胸に響くものがあり、実際、金もないのに無理して地元の高級な食材を食べることはないし(ちなみに私は夕食は2晩とも『餃子の王将』でがっつりおいしく頂きました)、努力して感覚を研ぎすませなくても、旅先の刺激的なものというのは自然に体に響いてくるものだと実感しました。
 気軽に読める紀行文をお探しの方には、特にオススメしたい本です。公共図書館ではあまり入れていないようなので、是非書店で手にしていただきたいと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/